「……ふ……ん…ん……っ」
両手の指を黒髪に挿し入れてリョウの頭を強く引き寄せ、何度も何度も角度を変えながら全てのキスを余すところなく堪能していく。
何もかも全てを奪いつくそうとしているかのような、いつにも増して激しい口付け。
もう、何も考える余裕などなかった。 心拍は刻一刻と跳ね上がっていき、全身の肌が粟立ち、リョウに支えてもらっていなければ立っていられないほど膝から力が抜け落ちて行く。 「…ぁ…ん…」
一瞬の合間で吐き出す吐息に声が混じり、その私の声をリョウの口が飲み込んでいく。
「あ…っ!」 「覚悟の上で煽ったんだろう?」 仰け反らされた首をねっとりと舐め上げられ、熱く濡れた舌の感触にブルッと身震いしながら、やはりリョウは私の思惑に気付いていたのだと、内心苦笑が漏れた。
「……覚悟は出来ていましたが、さすがにこれは想定外
笑いを噛み殺しながら、日の光に照らされてほのかに温かくなっていた背中のボンネットを、後ろ手にコンコンと軽く叩く。 「ん、ぁっ……」 「遼の想定ではどこだった?」
焦らすような舌の動きに、形をなぞるように何度も擦り上げて来る手の感触に、屋外であるにもかかわらず、その先を強請りたくなる欲深い自分が顔を覗かせ始める。 「どこと言うより……キスまで、の予定でしたけど。」 そう答えると、リョウは一旦動きを止めてクッと笑う。
「……俺で散々遊んでおいて、そんなに都合良くいくとでも リョウの台詞に 『遊んだつもりはなかったんですが』 と答えながら私もクスっと笑った。
「都合良くいくとはあまり期待していませんでしたが、 私達はまた視線を合わせ、それからお互い同時に笑った。 「あぁっ…!」
リョウは間違いなく痕が残る程強く私の首筋を吸い上げる。
私がボンネットの上に座りなおすのと同時にリョウは胸ポケットからシガレットケースを取り出し、また車に寄りかかりながら口に咥えたタバコに火を点ける。
「ねぇ、リョウ。
出来るだけ何気ない風を装いながら尋ねてみるけれど、実はこれは私がずっと抱いていた疑問。 『黒神の昇龍』 というアザナを背負う、ヤクザのオンナである人生を自分で選んだ以上、リョウの生き様を示すその名にせめて恥じぬよう、私自身が妥協する事無く生き抜いていきたいから。
「……遼と出会わなければ良かった、か……
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