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俺はどちらかと言えば体温が低いほうなんだと思う。
直接肌が触れ合うたびヒロの熱さに驚き、そして自分の冷たさに驚く。
だけどこうやってヒロに包まれていくうちに、次第にヒロと同じぐらいの熱さになる。
そしてヒロの熱を吸い取って受け入れて、体中、指先までも、最後には熱を放出するほどに熱くなる。
だけどそれだけ俺が熱を吸い取っても、ヒロの体は熱いまま。
最後はいつもその事にホッとした。


「……ぁ……ヒ…ロ……」

オレンジ色のライトがぼんやりと室内を照らし出す中、一糸纏わぬ姿でベッドの上に横たわりながら大きく脚を広げられ、その間にいるヒロに自分のモノを咥えられている。
俺と同じ様に服を全て脱ぎ捨て、既に眼鏡を外しているヒロは、眼鏡をしている時よりも少し大きく見える目で俺を上目遣いで見上げ、そして少し悪戯っぽく微笑んだ。

「そろそろ前だけじゃ…足りないか……?」

事実とはいえ言葉に出されるとあまりにも恥ずかしくて、唇を噛みながら両腕で顔を覆っていると、ヒロが脇に置いてあったジェルを俺の後ろに塗り込め始める。
既に数え切れないほどヒロには抱かれて来て、次に与えられる快感を心待ちにしているのにもかかわらず、それでも俺はいまだにどうしたらいいのかわからなくてうろたえてしまう。

逃げ腰になる俺を押し留めるかのようにゆっくりと一本の指が差し入れられ、それと同時に硬く勃ち上がりきっているモノに舌を這わせられて、内股の筋肉が勝手にビクリと反応する。
指が2本3本と次々と増えていき、窄めた唇で前を上下に扱かれてしまうと、身悶えしながらその先を望んでしまう。
けれど俺はそんな自分に鞭打ち、必死に腰を引いて逃げようとした。
このままだと目も当てられない状況になってしまう。

「……いいからこのままイけって」

「や……ぁ…っ」

モノを咥えたままのヒロにそう言葉をかけられて曲げた指を激しく動かされると、勝手に背中が仰け反ってしまって、あっけなく陥落してしまいそうになる。
だけど……

焦ったように右手を伸ばして、今にも弾けてしまいそうに膨れ上がっている自分のモノの根元を痛いほど力を込めて握った。
そして動きを止めて驚きながら俺を見上げてくるヒロに、必死で声をかける。

「い、一緒が…いい……ヒロと…一緒に……」

今日はどうしてもどうしても一緒が良かった。
顔は火が出そうなほど熱いから真っ赤になっているだろうし、ヒロを見ている視界がぼやけているからきっと目にはいつの間にか湧いて来た涙が溜まっているんだろう。
そんな自分が恥ずかしくて堪らない。
だけど、それでも、どうしても……

するとヒロが後から指を抜き、その感触にビクッと反応する俺に覆い被さりながらギュッと抱き締めて小さく溜息を吐いた。

「お前なぁ〜……
 可愛い過ぎてヤバイんだけど。
 ……今日は絶対早い自信があるぞ……」

苦笑しながらボソボソと呟く声は途切れ途切れにしか聞こえなかったので、ヒロが何を言っているのかはあまりわからなかった。
軽いキスをされた後ヒロのモノが宛がわれ、『力抜けよ?』 という声に続いて、熱い塊がジワジワと俺の中に入って来た。

イってしまわないよう右手で自分のモノの根元をしっかり握ったまま、ゆっくりと息をしながらヒロの動きに合わせて力を抜く。
そして最後まで入ったところで大きく息を吐き出した。
ヒロは俺が慣れるまで、優しく抱き締めてくれながら首や肩などを次々と強い力で吸い上げていく。

「ちょ、痕、明後日水族館……」

どう考えても隠し通せる場所じゃない耳の下とかも吸い上げられ、慌ててヒロに声をかける。

「いいからいいから。
 今更佐倉達相手に気にする必要ないだろう?
 それに森君だって同じだと思うぞ?」

……確かに。
智紀さんって普段すごく冷静に見えるのに、いつ花屋に行っても森はキスマークをつけている。

「まぁ今は佐倉達はどうでもいい。
 ……動くぞ……」

言うと同時に上半身を起こしたヒロが、ゆっくりと腰を引いてから腰を推し進めてくる。
そしてまた焦らす様にゆっくり腰を引いていく。

「……ん……」

俺は入れられる感覚よりも抜かれる感覚の方が弱い。
それを知っているヒロは入れる時よりも腰を引く時の方に時間をかけるので、その度毎にどうしても声が漏れてしまう。

「ぁ……」

少しずつ少しずつ、どんどん早くなっていく律動。
先程イく寸前まで溜まっていたものが一気によみがえって来て、背筋が甘く痺れ、鳥肌が立つのを止められない。
イかないように自分のモノを抑えていたはずの右手がそれ所ではなくなり、そこから手を離そうとすると、突然その手の上からヒロの手に握り込まれた。

「……ゃっ……!」

首を横に振りながら懸命に手を離そうとするのに、ヒロは手を離してくれず、そのまま俺の手毎上下に扱き出した。
ヒロはそこに視線を落としてジッと見ながら腰を動かし続ける。
まるで自慰を見られているような感覚に襲われて恥ずかしくて堪らないのに、それを打ち消してしまうほどの圧倒的な快感に襲われた。

「ぁ、……ヒ…ロっ」

時々意識が飛びそうになってしまうのが怖くて、無意識に左手をヒロに向かって伸ばす。
するとヒロがその手を掴んでしっかりと握ってくれたので、かろうじて動く親指と人差し指で必死に握り返した。
そしてようやく解放してくれた右手も伸ばすと、ヒロは両手で俺を繋ぎ止めてくれる。

「……っん……、は…あっ……」

体同士がぶつかる音と繋がっている場所から聞こえる水音、そして時々漏れる俺の喘ぎ声とヒロの荒い息遣いが部屋の中をいっぱいに満たす。
目尻から勝手に零れ落ちて行く涙の理由は、俺自身にもわからなかった。

「ぁ…あ……ヒ…ロ……ヒロっ……!!」

「……仁志……っ…」

余裕を失ったヒロの声にダメ押しをされるように、どうにもならないほどの快感が一気に競りあがってくる。
繋いでいる手に縋り付きながら背中を仰け反らせ、体中の熱を放出するようにもう一度ヒロの名を呼んだ。
その直後びくびくと腹の筋肉が震えて体の奥がヒロを締め付け、ヒロが突き上げてくる動きに合わせて俺のモノから精液が溢れ出していく。
そしてヒロも最奥まで俺を貫いて中ではじけた後、くず折れる様に覆い被さってきた。


後でイかされると、しばらくの間体の痙攣が止まらない。
こういう時、ヒロは荒い息を静めながらそっと耳元で俺の名前を呼び続け、ビクッビクッと小さく痙攣を繰り返す体を宥めるように優しく頭を撫でて抱き締めてくれる。
その度に俺は切なくなるほどの幸福感に包まれた。

ようやく痙攣が治まったところでしっとりと汗ばんだヒロの背中をそっと抱き締め返し、ヒロの体が熱い事にホッとする。
そして心地よい虚脱感に襲われながら、ふいに訪れた睡魔にそのまま身を任せた。