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spring storm(春嵐)
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移ろい易く、壊れ易い人の心に絶対などない。
それを十二分にわかっていてもそこに永久不変を求め、その絶対を求める存在からも同じ分、それ以上に求めて欲しいと渇望せずにはいられない。


リョウと私の同じ思いが一つに重なる……


ふと瞑った目蓋の裏にはあの黒神桜が舞い踊っていた。

……血の色をした花弁が胸の内に降り積もる毎にリョウの狂気が奥底深く浸透し、私自身を根底から狂わせていく。

静かに目を開き、自ら望んだ狂宴に更に身を委ねるため、リョウに向かって腕を伸ばした。

長襦袢の袖がさらりと肌をくすぐりながら落ちて来る。
その感触が更に狂気を煽り、首に両腕を回しながら痛いほど真剣に見詰めて来る瞳を真っ直ぐに見詰め返した。

「……過去も現在も未来も……相模良哉の
 何もかも全てが……欲しい……」

声を潜めてそう伝えると、そのまま唇を重ね、舌先で歯列を割ってその先に待っていたリョウの舌と絡ませる。
自分の中に咥え込んでいる指を時々締め付けながらリョウの張り詰めた雄に揺らめかせた腰を摺り寄せ、角度を変えては何度も何度も深い口付けを味わう。
今はリョウの吐息一つでさえも逃したくはなかった。


私が舌を貪るのに任せたまま、リョウはスルッと指を抜き去ると膝裏にかけた掌で両足を限界まで押し広げ、一気に最奥まで貫いて来た。

「ああっ……ッ!」

目の前に火花が散ったのかと思うほどの衝撃に、思わず唇が離れて声が溢れ出た。
限界まで仰け反った首筋から顎にかけて舐め上げられ、食い千切られそうな強さで喉元を吸い上げられる。

潤滑剤の卑猥な水音を立てながら折り曲げた身体に容赦なく楔を打ち付けられ、耳の中にまで舌を這わされ、身体中を走る電流の様な快感に声にならない喘ぎをあげながらリョウの首にただしがみ付いていた。

「……もっとだ…遼……もっと俺を求めろ……」

耳朶に噛み付かれ、僅かに眉をしかめながらも何度も何度もリョウの名を呼び、引き寄せたリョウの顔中にキスをしていく。
汗ばんだ襦袢はベッタリと身体に張り付き、リョウの額からも汗が滴り落ちて来る。
けれど私達は無我夢中でお互いを奪い合い、唇を貪り合って、ひたすら一つに溶け合おうと足掻き続けた。


既にこの部屋は、リョウの漏らす荒い息と、そのリョウを求める私の喘ぎと、身体がぶつかり合う情欲にまみれた音だけで満たされている。


膝裏を解放した手に自分のモノを扱かれ、ビクリと下半身が跳ねる。
はち切れんばかりに私の中で怒張している雄が、リョウの限界が近い事を知らせていた。
私も敏感な内壁を擦り上げられ、激しく奥を突かれ、逞しい楔に淫らに掻き乱されてもう何が何だかわからない。

「リョウっ…あぁ……リョ…ッウ…!」

手繰り寄せるようにしてリョウの首に縋り付き、強烈な快感の中でドクンドクンと精を吐き出していく。
同時に内壁が大きくうねりながらリョウ自身を締め付け、最奥に熱い迸りを受けた。


愛している、という言葉を一度も交わした事がない私達。
けれどその言葉では到底表し切れないほどにお互いを求め、深く愛し合って来た私達。
そうやって心も体も全てが通い合って来た私達なのだから、たとえこの先どんな事が待ち受けていようとも、必ず二人で乗り越えてみせる。

私は決して倒れない。
リョウを守る為ならどんな困難にも真っ直ぐ立ち向かい、何度躓いてもひるむ事無く立ち上がって、またリョウと共に前を向いて歩き続けて行く……


私の上で荒い息を静めているリョウを出来るだけ優しく抱き寄せ、自分も息を静めながら、左肩口にある縫合痕にそっと口付けた。


狂気の宴は、いまだ始まったばかり……