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spring storm(春嵐)
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リョウの腕が緩み、全ての涙を吸い取ってくれたYシャツの肩から顔を上げると、唇が触れるか触れないかの位置でリョウの目を見詰める。
けれどリョウはただ黙っていつまでも私を見詰め返しているだけ。
何か言いたいのに言葉が出て来ないという感じだった。

……言わなくてもわかっている。
何故なら私も今、同じ思いだから……

それを伝える為に、今度は私がリョウの頬を両手で包み、そっと自分からキスをした。
長く合わせるだけのキスに、言葉にならない思いを託して。


ゆっくり顔を離そうとすると、リョウが顔を斜めに傾けて隙間が無いほどに自分の唇で私の唇を覆い尽くし、深くまで舌を挿し入れて来た。
それに応える様に顔を逆側に傾け、その舌を受け入れる。
始めはゆっくりと、それから少しずつ激しく絡ませ、淫靡な音を立てながら吸い合い、唾液を飲み込んでいく。

蕩けるように甘く激しく繰り返される口付けが、私の欲望の炎に油を注いでいった。


お互い着ている物を脱がせやすいよう自然と膝立ちになると、軽く緩められていたネクタイの結び目を解き、ズボンからYシャツの裾を引き抜いて、Yシャツのボタンはこんなに小さくて外し辛かっただろうか、と少し苛立ちながら下まで外した。
リョウの手も帯締めや帯揚げを手荒に外し、今は帯にかかっている。

その間も繰り返される口付けに、どちらのものともわからない唾液が喉元にまで流れ落ちていく。

それにも構わず、肌蹴たYシャツから覗く引き締まった腹筋やしなやかで逞しい胸にそっと両手を這わせた。
今ではすっかり手に馴染んでいるはずの肌触りなのに、今日はいつになく自分の心臓の鼓動が大きく響き渡り、キスを交わす唇の隙間から時々感嘆の溜息を吐く。


そこでリョウは唇を合わせたままクッと笑いを漏らした。

「……こんなしち面倒臭くて訳がわからん物、二度とごめんだ」

その言葉でいつもの私達らしい空気が戻って来るのを感じ、それを嬉しく思いながら私もクスクスと笑って帯を外す手助けを始めた。

「……そうですか?
 でも大変な手間をかけてこれを着た甲斐があって、
 私はこういう焦らし方も楽しいと思ってますけどね?」

クックと肩を揺らして笑ったリョウは、二人で悪戦苦闘をしながら巻き取った帯やら小物やらを次々と横に放り投げながら下唇にきつく噛み付いて来る。

「その減らず口は一向に治らんな」

歯を立てた痕に優しく舌を這わされ、またたっぷりと甘噛みをされ、そのキスに酔い痴れながら帯の締め付けが無くなった開放感にホッと息を吐く。
そして一旦顔を引き、唾液で濡れているリョウの唇に指を這わせながら意味有り気に微笑んだ。

「リョウには遮る方法があるんですから、この先も
 治す必要はないでしょう?」

するとリョウはニヤリと笑い、不敵な視線で私の目を覗き込みながら手首を押さえるように掴むと、今度は這わせていた指に噛み付いた。
思わず手を引こうとしても強く掴まれているせいで全く動かす事が出来ず、そのまま指先に舌を絡めながら時々吸い上げ、緩やかに抜き挿しを繰り返す。
リョウの巧みな口淫をほうふつとさせる卑猥な動きから目が放せず、ざらついた舌の感触にゾクゾクと甘い疼きが湧き上がり、思わず漏れそうになる喘ぎを唇を噛んで耐えた。

私の反応を一つ一つ確かめている鋭い瞳の奥には、二人を焼き尽くしてしまいそうなほどの灼熱の炎と、それに相反して、それでも溶かす事が出来ない確固たる意志の光が見えている。

「……永久に塞いでやる……」

手首を掴んでいないほうの手が後ろ頭にまわされ、グイッと引き寄せられながらすぐさま唇を塞がれた。
理性が跡形も無く壊れてしまいそうなほどに激しいキス。
脳が甘く痺れ、何かを考える隙など与えてもらえない位に、立て続けに落とされるキス。

「……ん…っ……ふ……」

リョウは掴んでいた手首を離して腰をしっかり抱き寄せ、クラクラと眩暈がして崩れ落ちそうになる体を支えてくれる。
そんなリョウの頬を両手で挟んで、夢中でキスを返していた。


噛み付くような口付けにリョウの激しい情熱を知る。
返すキスに私の情熱全てを託す。
蕩けるような口付けにリョウの深い優しさを知る。
また返すキスに心の底からの思いを託す。

そこには駆け引きや計算などは全く無い。
ただ純粋に相手を求め、互いに自分の存在を刻み込もうと、数え切れない口付けを交わしていった。


※次は18禁※苦手な方はご注意を