足7
やっと与えられた自由と全身を包み込んでくれる温もりに、心の底からの安堵感を覚えた。
先程までの不安や寂しさが嘘のように取り払われて、その分宗さんの存在が僕の心も体も全部を占有していく。
僕は宗さんのモノ。
その甘美な響きだけが今の僕の全てだった……
舌を引き摺り出されるような強引なキスから、ゆっくり絡ませて宥めるような優しいキスへと何度も深いキスを繰り返し、その合間に時々そっと舌先で涙の痕を拭ってくれる。
体に預けられた僅かな重みと、芯まで温まるような熱を感じながら、もう絶対に宗さんから離れない、と齧り付くように首にしがみ付いた。
「そんなに寂しかった……?」
優しく抱き締め返され、耳元にキスをされながら囁かれた言葉にふるっと体が震え、顔が赤くなるのを感じながらもコクコクと頷く。
「柚月さんが悪いんですよ?
私を置いて、一人で他の方に会いに行こうとするから……」
僕はまたコクコクと頷く。
本当は納得いかない事だらけで、口を開けば反論や抗議や文句の言葉が止め処なく溢れ出してしまいそうだった。
だけどもしそんな事をしたらまた宗さんから離されてしまいそうで、それが堪らなく怖い。
宗さんは首に回していた僕の腕をそっと掴み、静かに外させようとする。
それが嫌で、更に腕に力を込めてふるふると首を横に振った。
すると僅かに苦笑して、『離れないから大丈夫ですよ』 と言いながら腕を外させ、今度は右手を繋いでくれる。
「この手を離さないでいてくださいね?」
「んっ……」
片手を繋いだまま首筋や鎖骨に唇を落としながら徐々に下におりていき、欲望に濡れた瞳で真っ直ぐに視線を合わせながらゆっくりと口を開ける。
唇の合間から宗さんの舌が覗き、闇の中に赤く浮き上がっているように見えたそれにドキンと心臓が跳ね上がった。
次の瞬間、その口の中に胸の飾りが含まれていく。
「あっ……!」
視線を合わせたまま濡れた舌で味わうように刺激され、予想よりも強かった快感に反射的に体が逃げ出そうと、繋いでいた手を振り解きかける。
「いいんですか?私から離れても……」
そう言いながら手を離そうとしたので、その言葉にハッとして、慌てて手を繋ぎ直す。
宗さんはもう一度しっかりと手を繋いでくれ、その事にホッと小さく息を吐いた。
「……私から離れないで……」
「……や、…ん……」
宗さんのもう片方の手が、焦らすように足を這い回り始めた。
****************
「……気持ちいい……?」
僕自身を咥えられながらかけられた言葉に、恥ずかしさのあまり全身が真っ赤になってしまう。
わかってるくせに……
答えるのはどうしても悔しくてそのまま黙っていると、何も言わずに繋いでいる手を離そうとしたので、その途端さっきまで宗さんから離されていた時の不安と孤独感がよみがえってくる。
急いで手を繋ぎ直して懸命にうんうんと何度も頷くと、宗さんは満足そうに、楽しそうに微笑んだ。
「そう…それは良かった……」
散々焦らされながらも、『頑張ったご褒美ですよ』 と囁かれつつ一度目の精を吐き出し、それからは身体中のありとあらゆる所に唇を這わせられながらローションを馴染ませた指で後ろを慣らされている。
自分の汗で何度か繋いでいる手が滑って離れそうになってしまったけれど、それでもその度に必死で宗さんの手にしがみ付いていた。
いつも以上に全身の感覚が敏感になっていて、一度イったぐらいでは全然足りないほどすぐに張り詰めている僕自身からは、早く宗さんと一つになりたい、と透明な液が零れ落ち始めている。
「……こんなにして……
そんなに待ち切れないの……?」
「……や、やめっ……」
恥ずかしくていたたまれず、視線を逸らしながら唇を噛むと、ふいに後ろから指を抜かれ、その感触にビクッと体を竦ませる。
「柚月さん?」
そっと問いかけるように名前を呼ばれ、その優しい声に迂闊にも視線を戻してしまう。
すると自分の両膝で僕の足を割り、お互いの指を1本ずつ絡ませるように両手を繋ぎながら覆い被さってくる宗さんを、朧な月明かりが柔らかく照らし出していた。
それを見た途端、思わず息を呑んでしまう。
月の光を宿して妖しく輝く黒い瞳に見下ろされ、瞬きすら忘れてしまったかのように視線を逸らす事が出来ない。
ドキンドキンと心臓が大きく脈打ち始め、繋いでくれた両手から、自分の全存在が宗さんだけに流れ込んでいく幻想に囚われた。
さっきまではあんなに頼りないと思っていた月なのに、今はさらさらと降りかかってくる長い黒髪を艶やかなまでに照らし出し、その妖しい魔力に今にも足元から呑み込まれそうになっている自分を痛いほど感じる。
宗さんはそんな僕を真っ直ぐ見下ろし、充血して進入を待っている後孔に硬く屹立しているモノを宛がいながら、ゆらりと薄く微笑んだ。
「……ユヅキは誰が欲しい……?」
※次は18禁※苦手な方はご注意を
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