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※このお話はあくまでもファンタジーです。 様々な設定や言葉が出てきますが、全て管理人KAZUKIが勝手に作ったモノです。 一般的に使われる言葉を、意味を変えて使ったりしてます。現実と混同しないよう くれぐれもご注意下さい。




「疲れた……」

すっかり帰りが遅くなってしまった。
時計を見るともうすぐ夜の8時半。あたりもすっかり暗くなっている。

生徒会で書記をしている僕は、 2週間後に控えた文化祭の最終打ち合わせを終えて帰宅中。
他の役員達と途中までは一緒だったのだけど、 みんな電車なので必然的に徒歩の僕は一人だ。
最近は連日この位の時間になるので、親もいい加減慣れてしまい、 今では携帯に電話もかかってこない。
いつも通りの帰り道をいつも通り歩く。
家の近くは完全に奥まった住宅街で、 この時間になると外を歩いている人は誰もいない。
どこかで犬が吠えている声だけが響いていた。


その時、一瞬ぐらっと目の前が揺れる。

……何だ、今の?

……お腹も空いてるし疲れもあるし、ちょっと眩暈でもしたのかな?

なんて、元来楽天的な僕が思おうとして次の一歩を踏み出した瞬間、 今度はグルンと目の前の景色がまわり、 瞬きもせずに目を見開いている僕の周りが、全然違う光景になった。

……ここ、どこ?


僕は広大な和風の庭にある、渡り廊下のような所に立っていた。
月もない真っ暗な闇の中、 ポーンポーンと鼓のような音だけが響いていて、 人の気配は全く感じない。

その真っ暗な中、 どうして僕が広大な庭にいる事がわかるのかと言うと……

僕がいる所や、あちこちに見える渡り廊下みたいな所の両側には、 まるで道標の様にいくつもの青い鬼火が燃えているのだ。

……鬼火?……そんなバカな……

僕は何度も目を擦ったり頬をつねったりしてみる。
でも何度見ても同じ光景しか見えない。
ポケットの携帯を取り出してみたものの、 何故か、というかやはり、というか、無情にも『圏外』の文字。

…………どうしよう。

でも、こんな所で誰かに見付かって泥棒に間違えられたら困る。
取り合えずはこの建物みたいな所を出なきゃ。

やっと我を取り戻した僕は取り合えず辺りを見渡す。
すると足元に見た事のない文字が掘り込まれた、 直径30p位の青銅のような円盤が埋め込まれていた。
何だか判らないまま取り合えず足の爪先で突付いたり 蹴ったりしてみるが、全く何の反応もない。
これはダメだと再度周りを見回すと、 100m位右手の、周りを囲んでいる壁の一部に小さな扉を見つけた。

よし、まずはあそこに行ってみよう。
鬼火を踏まないよう慎重に跨ぎ、足音をさせないよう気をつけながら、 僕は静かにその扉に向かった。


やっと扉に辿り着いたものの、 先程見た円盤が真ん中に埋め込まれているだけで、 取っ手がなかった。
取り合えず必死で押してはみたが、全くもってビクともしない。

……ちょっと〜、これどうなってるの〜?

それでも周りにボタンの様な物がないかと探してみたり、 その円盤のようなものに爪を引っ掛けて引っ張ってみようとする。
全然ダメだ、と諦めかけた時、ふと足元に大き目の石を見つけた。

……こうなったら多少の音は仕方がない。
いまだに鼓のような音が響いているし、 その音にあわせてこの石で叩いてみよう。

僕がそう思って、石を持った手を振りあげた時

「それは賢いやり方だと思えんが。」

と、先程まで誰もいないと思っていた僕の背後から、 腹の底に響くような低い声がした。