6
部屋では二人ベットに座っていた。
何も喋らずにいた。
喋らないのではない、何をどう話したらいいのか解らないだけなのだ。
よく考えたらこうして二人で一緒にいるなんて事はない。
サイクは自分の胸に寄りかかっている小さなウルの頭をそっと撫でている。
ウルはその行為を瞳を閉じて受けていた。
何か考えているにも見える。何を思案しているのだろう?
サイクは撫でる手を止めずウルに聞いてみた。
「何を考えてるんだ?また出て行こうなんて思ってんじゃないよね」
心にある不安も一緒に口から出てくる。
その言葉にゆっくりと瞳を開けウルはサイクをチラッと見た。
「心配しすぎだな、リーダーさんはよ」
ふふと笑うウルだったがすぐに笑顔が消えた。
真剣な表情の中には何か影が見える。サイクの不安は心に広がっていく。
「心配なのは君の方じゃないのか?」
「ああ、そうかもな」
ウルは自分の腕をさする。
「いつまでこんな体のままなのか、それても治らないのか・・」
そう言葉を呑み込んだ。
「治るさ。元にもどる。ピンチの時はいつだって君はそうだったじゃないか。
明日、良い方法はないか考えてみよう」
サイクはそう優しくウルに言う。
「俺はこのままの方がいいのかもな」
思いも寄らなかった言葉にサイクは驚く。
「どうしてそう思うんだ?」
「普通の体になって子供からやり直せっていう神様からのメッセージなのかもな」
ウルは寂しげに瞳を床に落とす。
「こっちの方が幸せなのかもな、俺にとって」
「本当にそう思うのか?」
サイクの問いにウルは答えない。
「答えろよ、ローガン」
サイクの口調が強くなっていく。だがウルは下を向いたまま答えない。
サイクはウルの細い両肩を掴むと揺さぶった。
「このままで良い訳ないだろう!今の姿は本当の君じゃない!
本当の自分を取り戻したくないのか、ローガン!?」
ウルは自分にこんな熱く激しいサイクは知らない。
「俺は本当の姿の君が・・・好きだ」
いきなりの告白にウルは驚き目を見開きサイクを見る。
「だから元に戻って欲しい。そして一緒にチームとして闘って欲しい」
告白じゃなかったのか・・ウルは自分の思い違いかと思った。
バカだな俺は・・・と。
「サイクは俺のこの姿は嫌いか?」
「え?」
「俺はけっこう気にいってるぞ。可愛いし」
「か、可愛い?」
「可愛くないか?」
そう言うと、肩をすぼめて頭を傾け、にこりとサイクに笑ってみせた。
本人が言うように確かに可愛い。
「か、可愛いよ」
いきなりの事にサイクは動揺する。
「だろ?ジーンも可愛いって言ってくれるからな。しかもぎゅっと抱きしめてくれるし」
そう言うと嬉しそうにふふふと笑い出した。
「可愛い子ぶってジーンに近づいてんじゃない!このクソガキ・・
いや、クソローガン!」
サイクは怒りにまかせ肩を掴んだままウルにベットに押し倒した。
ウルは真上にいるサイクを小馬鹿にするかのように笑う。
「なんだ焼いているのかよ、サマーズ」
ルビーのサングラス越しのサイクの瞳が怒っている。
「安心しろよ、この肉体じゃなんにも出来やしない」
数回瞬きをするとサイクに自分の瞳を合わせた。
「お前以外はな・・」
「ローガン」
「俺もお前がジーンに焼いた時<ちょっとジーンにジェラシーを感じたよ。何故だろうな?」
不思議な事は無い。たぶん自分はサイクに惹かれているのだろう。
「でも焼く相手がいるってのは悪くないな」
サイクはウルの肩から掴んでいた手を離した。
サイクは自分の中にウルを愛しいという気持ちが芽生え
だんだんと大きく膨らんでいくのが解った。
「そうだな・・」
サイクはウルの髪をそっと撫でる。
うっとりとしてウルは瞳を細め潤ます。
可愛い、愛しいこのまま自分の手にしてしまいたい・・
そうサイクに新たな欲望が生まれ巨大になっていく。
このまま欲望に流されてはいけない・・そうサイクは自分に言い聞かせた。
「明日、いい方法を見つけよう」
「サイクはこの姿が嫌いか?」
「そうじゃない、君が元に戻れるようにだな」
「この姿だって俺だぜ」
「・・・・・」
「この姿じゃ俺は愛してもらえないのか?お前に受けいれてもらえないのか?」
「大事なのは姿じゃない。心だろ」
「いつものローガンらしくないな」
「お前はいつでも冷静だな。さすがリーダーさんだぜ。
俺は不安になったら冷静になれないぜ。こんな姿じゃ余計だ」
そうか不安なんだ。不安定な肉体で精神も不安定に・・・
ローガンのその不安を俺がなんとか出来ないだろうか・・
サイクは自分に問いかけるとローガンを見る。
彼が求めているもの・・・それは自分だ
サイクの答は決まった。
サイクはいきなりウルに覆い被さるとそのまま抱きしめた。
「ス、スコット?」
いきなり抱きしめられてウルは驚いた。
「愛している。どんな姿でも君だ」
「また、冷やかしか?どうせさっきみたいに仲間としてとか言うんだろ?」
「君を一人の友として仲間として」
「やはりな」
「人間として一人の男として・・俺は愛している」
自分の唇をウルの唇に重ねると激しく深いキスをした。
そのキスは少し息苦しかったがウルの心と体に火をつけた。
腕をサイクの首に絡ませさらに自分に近づけ自分もキスの応戦をした。
これ以上の事を望みそして欲する事を示すように。
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