5
サイクは追いかける。ウルを追いかける。
何故にこんなに胸が締め付けられるのだろうか?
何故にこんなにも不安になるのだろうか?
たかが散歩というのに。
だがサイクには散歩に行くとは思えなかったのだ。
「その格好でどこへ行こうとするんだ?」
学園のドアを開けようとするウルにサイクは声をかけた。
冷静に言ったつもりが同様で声が少し震える。
ウルはゆっくりと振り返る。
「散歩に・・」
「ウソだ」
サイクはドアノブにかけた補足小さなウルの手を掴む。
「出て行くんだろ、また」
ウルは答えない。
あどけない少年の瞳が揺れている。
『やはり出て行くつもりだったのか・・・』
そうサイクは確信すると握った手に力が入った。
「手を離せよ」
振りほどこうとするウルにサイクはNOと言う。
「俺がどこに行こうと勝手だ!お前に関係ない!」
暴れるウルにサイクは反射的に身体を包み込むように抱きしめた。
抱きしめられるとは想定できなかったウルは驚きで身体が固まる。
サイクは強く抱きしめながら言う。
「関係ある!お前は俺の大事な仲間だ。
それにこんな不安定な身体のまま出て行ってどうなるんだ」
ウルは大きく開いた瞳をサイクに向けた。
「この姿でセイバーに襲われたらどうするんだ」
声が微かに震えている。
そんなサイクにウルの固まった身体がほぐれた。
ウルの唇に笑みが浮かぶ。
「襲われたら、お前が助けに来てくれるんだろ、俺のリーダーが」
その言葉にサイクは驚き、慌ててウルの顔を見た。
「なあそうだろ、サイクロップス」
にっこりと微笑むウル。
少年の姿で微笑む彼はいつもより可憐で真っ直ぐに見える。
その瞳には曇りも偽りも無い。
ほんのりと赤く柔らかな唇からでてくる言葉はいつものウルだが
今日はなんだか愛しく思える。
何故だろう。少年の姿だからだろうか?
いや、それだけじゃない。
少しとまどっていたサイクの胸に暖かいものが溢れてくる。
「ああ」
そう答えるとウルはサイクにしがみついてきた。
「良かった・・安心したぜ」
「ロ、ローガン」
「少しこうしていたい。なんだか落ちつくんだ」
ウルはと恥ずかしそうに言うと照れ隠しのようにそっとサイクの胸に顔を埋めた。
なんて可愛いんだ。
「いいよ」
サイクは優しく言いウルの頭をそっと撫でる。
「君の部屋に行こう。その方がもっと落ちつくしね」
ウルは顔を埋めたまま、こくりと小さく頷いた。
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