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Xマンションではちょっとした騒ぎになっていた。
あのウルヴァリンが可愛い少年になったのだから仕方ない。
マンションにいる女性たちがみんな集まってきてウルを囲み
可愛いー!と黄色い声をあげていた。
黄色い声をあげられる度に不機嫌そうな顔をウルはしてみせた。
だが女性達は気にしない。
いやそれさえも彼女達には可愛いーのだろう。
「本当に少年になっちゃったの?」
「可愛いー。お肌もツルツルだし毛も髭も生えてないーっ」
きゃあきゃあとそう言いながら勝手に触ったり抱きしめたりしてくる。
「いい加減にしてくれ」
こんな事をされるのは初めてだ。
なんだかこそばゆい気はするがこんなのも悪くもないなと内心ウルは思う。
しかしこんな事をされにここに来た訳ではない。
この事態を解決しにここに来のだ。
ウルは女達を払いのけるとサイクの隣にいるプロフェッサーに近づくと
今、一番知りたい事を聞いた。
「で・・プロフェッサー、今までのいきさつを話したわけだが聞いていて何か解ったか?」
「ああ。君の思う通り感電の際に高圧の電流のショックにより
なんらか身体に変化がとしか考えられないな」
「やはりな。でどうしたら治るんだ」
プロフェッサーはうーむと唸ると腕を組んだ。
「それは解らない。だがもう一度、同じショックを受けるか・・あるいは・・・」
「同じ・・ショック?」
身を乗り出して聞くウルにプロフェッサーはさっきの言葉を打ち消した。
「いや、今の事は忘れてくれ。
いいか、間違っても同じショックを受けようなんて考えてはダメだ。
君に今の肉体は少年の上、ヒーリング能力が無くなっているんだ。
高圧電力なんて受けたら死んでしまうかもしれん」
サイクに寄り添うようにいたジーンがウルに近づいてきた。
いつもよりさらに小さいウルに優しく心配そうに声をかける。
「そうよ教授の言う通りよ。だから無茶をしようとしないで。
絶対に解決策は見つけるから」
そしてウルの頭を優しく優しく撫でて励ます。
ウルは嬉しそうに目を細めるとその行為に甘んじていた。
突然、割り込むように不機嫌な声がする。
サイクだ。
「ジーン、彼を子供扱いしちゃダメだよ。
見た目は子供でも中身は大人のローガンなんだから」
ジーンはフフフと笑いながら手を離す。
「あら、スコットあなた焼いてるの?」
「馬鹿な。そんな事があるか」
強気な発言をするサイク。
だがいくら強気に言っても相手はテレパス。心の中はバレバレだ。
いや今のサイクだったらテレパスでなくても解るだろう。
それほどまでにサイクの顔に表れていたのだ。
「もう馬鹿ね。サイクは」
ジーンはそう言うとサイクの頬にキスをする。
その二人を見てウルは胸がぎゅっと締め付けられる。
胸の締め付けられる原因はジーン・・のはずなのだが
なんだか今はキスをされるサイクを見ていると辛い思いがする。
何故こんな気持ちになるか解らない。
「見ちゃいられないぜ」
くるりと皆に背を向けるとウルは歩き出す。
まるでこの光景から逃れるように。二人の視界から去るように。
そんなウルにサイクはすかさず声をかける。
「どこへ行くんだ?」
サイクの質問にウルは振り向かず止まらず答える。
「いい答が見つかるまでその辺りを散歩でもするさ」
ウルの遠ざかる背にサイクの胸に不安がよぎった。
5へつづく
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