Backdated Cigarette

 確かに心の疲弊しきっている俺だ、ヴィンセントはまた俺の精神がぐらぐらになるのを恐れてか、今まで以上に柔和になった。あまり面白いものでもないが、心底から俺への真心だと思うから、腹は立てない。

 俺が判っているのだから、ヴィンセントも判っているのだろうと思う、……こんなのは間違っている、ヴィンセントのしていることはやっぱりユフィが言ったとおり「あまやかし」であって、俺はそれにどっぷりと甘えている。居心地がいい場所が用意されていて、それは狭くとも塒になり何とか温かいソファである。出たくない。しかし、倫理的に、或いは社会的に言えば、出なければならないのだろう。どうしても一元的な「倫理」だったり「社会」だったりすると思うから反論をするのだけれど、俺の心の問題なので、ヴィンセント以外誰も賛同はしてくれまい。寂しい安定ではある。

 駅の側の古本屋で、ヴィンセントが本を買って来る。古い雑誌や、文庫本。小説やエッセイ、のみならず、学問、サブカル、ジャンルは多岐に渡る。三日に一遍くらいの割で出かけては、十冊近くを買ってくる。それをあっという間に、彼は読破しているようだった。観察していると、文庫本の小説ならば、一時間もあれば軽く読み終えてしまう。これは俺にとっては驚異的なことだ。彼は集中して読んでいる。普段は俺の寝ているソファに身体を寄せて、眼鏡をかけて、灰皿と煙草とコーヒーを側に置いて本を開いたら、一言も発さずわき目もふらず、じっとただ、ものすごいペースで頁を捲っていくのだ。極端に瞬きの回数が減って、息もしていないんじゃないか、そんな風に思えるくらい。ただ、頁を捲る指だけが規則的にすらりすらりと音を立てている。それでも時々、煙草を吸うためだけに、あるいはコーヒーを飲むためだけに、空白が生まれるが、それも微々たるもので、殆ど一気に読み通してしまっている。

 とても真似は出来ない。読み終わった本は全部彼の本棚を埋めていく、その中から勝手に一冊引っ張り出して開いてみる。彼が一時間かからずに読んだ本を、二日経ってもまだ読み終わらない。

「ゆっくり読めばいい」

 とヴィンセントは言う。

「別に速く読む必要は無い、楽しみながら読めばいいんだ」

 まず第一にそこが違うのだろうな。俺は多分、本を楽しんで読んだことは今まで一度も無かった。本とは「読むもの」ではなくて、「読まされるもの」若しくは「読まなければならないもの」だったから。

 口には出さなかったが、苦笑いをしてやると、

「読書は快楽の伴うものだ」

 到底判りそうも無いようなことを言った。言って、判らないだろうなと思ったんだろうか、少し微笑んで、

「……少なくとも、気散じにはなるだろう」

 と言い換えた。

 それは確かだった。本を読む、俺は先述の通り読むのが遅いし、難しい言葉を悲しいくらい知らないから、辞書を引っ張り出したりする。作中人物の名前を忘れて何度か戻ったりする。時折読みながら寝てしまったりもする。そんなことをしているうちに、時間は呆気ないほど速く過ぎた。これはいいのかもしれないと思った。快楽という、目的があるわけではない、そうではなくて、時間潰しの手段には一番いいのかもしれないと。

 ヴィンセントが「読め」と言った訳ではないのに、俺はヴィンセントの読み終わった本に、順に手を伸ばしていくようになった。少しずつではあるが、俺の読書技術も向上しつつあるようで、さすがに一冊一時間とは行かないが、一冊一日くらいの、常識的な速度には近づいてきたようだ。

 そして俺は会話の術を身につけた。ヴィンセントと共通の話題を見つけたのだ。彼の読み終わった本を俺が順に読む、そうすれば自然、その物語の世界を俺とヴィンセントは共有する。同じ小説を読んだのに俺と彼の抱く感想の違いに驚く。そして、ヴィンセントがやはり頭の切れる人間だということを知って、何だか気分が良くなる。俺は、笑いながらヴィンセントと会話する。読書自体が齎すものとは違う、けれど、それは快楽だった。

「つまり、どんな風に読んでもいいんだ」

 いつだって違う感想を抱くことを不思議に思った俺にヴィンセントは教えた。

「小説は、書いた人間のものではない、お前の物だからだ」

「……俺の物?」

「作者が考えた通りの読み方をする必要は無い。お前が思ったとおりに読めばいいのだ。私はなまじ量を読んできてしまったから、ある定型から外れた読み方が出来ない、しかしお前はまだ柔軟に本と向き合える。作者が考えるよりも面白い話を、その小説から吸収し、再構築出来たならそれこそ読書の理想だと私は思うのだ」

 その言葉ですらちゃんと理解できないような俺だが、気は楽になる。

 寝ようと思って目を閉じたら、ティファやユフィやバレットの顔が浮かんで、苛立ちを覚える。ザックスやセフィロスやルーファウスの顔が浮かんで、涙ぐみそうになる。一々怒ったり泣いたり、また隣りの扉を蹴っ飛ばしたりしていては、厄介とも思う。台所の明かりをつけて、しゃがんで本を開いている、そういう癖が俺にはついた。悪い癖ではないと思う。例えば「躁鬱病」などという漢字をそらで書けるようになったのだから、多少のプラスはあるわけだ。

 そういう効果を狙ってヴィンセントが本を買ってきたのか、知る必要は無い。ただ、穏やかな笑顔で俺と話をしてくれるヴィンセントを見ていると、俺は和む。俺も笑顔で話しながら、時々目が潤んできて困ることがある、そういうとき、鼻が赤くなっていないか気にする。

 好きだな。

 そういう感情が否定しづらい。俺は、うん、……ヴィンセントが、好きだ。俺みたいな人間が抱いてはいけないのかもしれない種類の感情だということには感づいている。しかしヴィンセントの笑顔に俺の奥底で喚起された感情だ、その笑顔がそこにある限り、そしてその笑顔に俺のためという理由が付与される限り、俺はその笑顔に快楽を見出すのだ。

 「自分」になるんだと思う。俺自身の意思に基づいて、俺はこう思った、こうだった、こうなりたい、こうしたい、全部、俺の言葉で、表現し、伝え、それをヴィンセントが聞いて、頷くなり何なりのリアクションを取った時、俺はソルジャーを自称していた男ではなく、もちろんティファと知らぬうちに結婚していたような男でも、ユフィを強姦していたような男でもなく、……自暴自棄のどこかに快感を見いだそうとするような男でもなく、傘を畳んだ一人の人間になり、それこそリアルなクラウド=ストライフだということを、証明するに至るのだと。

 ヴィンセントと、穏やかに話をしている。今日読み終わった本の話をしている。

 こんな時間が勿体無い位幸せに思えてしまうような俺がいる。

 生臭い理想を言えば、ヴィンセントもきっと俺のことが好きだろうと思うのだ。俺が同性愛者であることを知っていて、俺を側に置く事を択び、上辺だけではない―と信じたい―優しい笑顔で俺と会話している、俺の為に飯を作り、俺の生き易い場を設ける。疲れた同性愛者である俺にそうすることがどういう意味を持つか、ヴィンセントが理解していないとは思えない。俺が二十五歳ならヴィンセントは肉体的には二十代後半を保っている。片方が同性愛者だったならばお互いに、そういう年齢がどういう年齢かを承知しないで側にいてはいけない。ヴィンセントがそこまで愚鈍とは思いがたい。

 はっ……、と息が漏れた。自然に思えた。深夜にまた、台所で、本を読んでいた。もうすっかり寒いから、毛布に包まりながら、ヴィンセントの読み終わった本を、あの人はどこでどういう気持ちになったんだろうと益体も無いことを考えながら。そうしたら、胸を押されたように、息が漏れた。

 甘えさせてくれるだけ甘えたい、甘えていたい。

 しかし世間体上俺は、まだティファの夫であり、ティファは俺の帰りを執念深く待っている。これも浮気って言うのかな。女の側からしたら最悪だろうな。最悪さは自分でも判ってしまうから、俺はまだ、息を漏らす程度で済んでいる。

 小説を読んでいると、きっと俺たちの進む道は舌を噛んだほうが楽なような、とんでもない上り坂なんだろうと察しがつく。出来ればティファたちにもそれを知ってもらいたい。俺だって苦しんでいるつもり。胸を張ってはいられないかもしれない、けれど、息を切らせている、疲れきった心を引き摺って、何とかヴィンセントに引っ張られては危ないところを避けている。みんなそうなんだと思えたなら、あいつも苦しいんだ、俺も苦しいんだ、それは一緒だ、放っておこう、そう思えるだろうに。きっとティファはそう思えない。当たり前のように苦しいとき、自分だけが苦しいのだと思っている。それでも彼女の方から離婚届なんて送られてきたら、俺は少し彼女を見直すだろう。もちろん、そんな未来をこんな風に期待することほど、薄汚いことはないと思っている。

 「ソルジャーになるよ」なんて、十三歳の子供の言うことを信じて、俺を好きになってくれたのなら、同じだけの偽りで俺はそれに答えることが出来るつもりだ。心を広く持つなら、こんな俺を好きになってしまったティファも可哀想なのかもしれないが、あんな「俺」を好きになるような女なら、ただ馬鹿だったと言うことだって出来るだろう。要は俺がどちらを択ぶかだ。そして俺は二流三流の小説の善良な主人公ではないから、自分本位に、自分の楽な方を択ぶのだ。もちろんそれでティファが死んだりしたら、また寝覚めの悪い思いをし、墓を蹴っ飛ばして「死んでまで俺に嫌な思いをさせるのか」などと言うに決まっているが。

 寝よう、と思った。時計を見ると、もう二時近い。本を読みながらこんなことを考えているということは、それだけ集中力が低下しているということだ。また読み終わったらヴィンセントと本に関する話をする予定だ。話をするためには相応に深く読んでいなければならない。ヴィンセントに要請されたことではなく、俺がヴィンセントに少しでも近い位置で話をしたいと思うからだ。それを小汚い恋心と言ってしまうことも出来たろう。

 毛布を引き摺って、ソファの布団に潜る。静かな音を立てて運転するファンヒーターはそっぽを向いているが、足先も温かい。

 ヴィンセントはとっくに眠っているはずだ。いつも寝相はいい、そして寝起きもいい。鼾をかいたりしない。俺は時々歯軋りをしているらしい。ストレスが溜まっているのだなと少し同情されたのは悪い気分ではなかった。ヴィンセントだってストレスは溜まっているはずだが、それを眠っているときですら見せない。俺の倍生きているからだろうか?

 布団に包まって、ベッドの曲線を見ていた。ヴィンセントの寝息がかすかに聞こえる他は、ファンヒーターの運転音以外、何の音も無い。外を、非常識なライダーが高い音を立てて走り抜けた。駅の方から、貨物列車だろうか、ずいぶんと長く列車の通り過ぎる音がした。ヴィンセントはそれら全てに反応を示さず、静かに眠っている。

 ニブルヘイムの地下で、彼は延々眠っていた。あのセフィロスの騒動の時にも目を覚まさなかった彼だが、アレは単なる睡眠ではなかった、深い深い悪夢の伴う睡眠だった。外界の衝撃よりも彼の内で起きていた痛みの方が程度として上だったというだけのことだろう。目を覚ましたときの彼の顔が今より真っ白く、薄暗いあの部屋にぼうっと浮かんでいるように見えたのが印象に残っている。

 今は悪夢を見ないのだろうか。魘されたり、寝苦しがっている風はない。ただ、死んだように眠っている。あの「旅」の続き、俺が意識の無い間に、一応は「星」を、「セフィロス」を、救い、更にこうしてエアリスの願いを叶え続けていることで、とりあえず彼も救済されたのだろうか。だとしたら、ティファの不幸に同情できないような俺でも、良かったなと思う。申し訳なくも思う。

 俺はヴィンセントのことを好きと思っても、それを表現することが出来ないのだ。ただ内心で、出来るだけ彼に迷惑をかけないようにしよう、そう考えることが出来るくらいで、あとはなにも。積極的に事を進める――例えばティファと離婚するとか、バレットと和解するとか、ユフィに謝罪するとか――ことはまだ出来ないような状況で、何も片付かない宙ぶらりんの状況だから、まだそういうことを表現してはいけないのだとも思う。ヴィンセントに触れられたらきっと楽になるだろうなと思っても、それを求めることはまだ出来ない。その「出来ない」ということにも、一時のように抗おうとするほど、余裕のない訳ではなかったが。

 全部片付くのはいつのことだろう。そんな日が本当に来るのだろうか。俺のことだ、またちょっとした苦しさで、壊れて、好きになった相手のことを無残に傷つけてしまうのかもしれない。結局ヴィンセントは責任感で側にいるだけなのかもしれない、その可能性のほうがずっと高い。だから、片を付けるのは不安も伴う。いなくなってしまうのかもしれない。ヴィンセントがいなくなったら、結局俺はゼロと同じだ、そしてきっと、

「あんたまで俺を捨てるのか、みんな俺から逃げていくんだ」

 そういうことを言って、傷つける。

 明瞭に広がるビジョンを、本当にしない為に、そして出来れば、俺は、ヴィンセントに愛されたいと思うからこそ、ゆっくり、でも、変えていきたい。

 何度も言う、何度でも言う、俺は正しい、しかし、きっとティファたちも同じような気持ちを持っている。端的に言えばその溝を埋めるためにヴィンセントがいる。だから、ヴィンセントは究極的には味方ではない、もちろん敵でもない。中立だ。今は俺のバランスが悪いからという理由で、俺にべったり寄り添ってくれているだけで、ケースが替われば立場も変わるだろう。解決して以後、俺はどうなっているか、ヴィンセントが何処にいるか、それはまるで判らない。願ったような未来が訪れない可能性もある。

 殊勝な気持ちを出すならば、問題が解決すればヴィンセントが今より楽になると思い、それが俺の出来る唯一の愛情だと判るなら、それを択んでもいいとは思う。

 けれど、自分勝手な部分の大いに残る俺だから、もう重たくなった瞼の先で、音なく眠る男を、離したくないと思うのだ。

 ああ、何度も言うよ。

 甘えさせてくれ。俺はだって、被害者なんだから。

 譲歩しよう、「君も被害者だ」と。

 だから同じように認めてくれよ、俺が被害者だと。

 ヴィンセントをずっと見ていたつもりが、俺の目は閉じられていて、ティファが瞼の裏に浮かんだ。嫌な気分になる。

 冷静に言えば、ティファを嫌いと思うのではない、憎いと思うのではない。しかし、疎ましいと思う。その感情は、つい最近に生まれたものではないのだ。十代の半ば頃、俺がザックス=カーライルやセフィロスと関係を持つようになってから、数年の空白を設けて今なお、続くものだ。多分、この先もずっと続くに違いない。俺が如何足掻いても乗り越えようのない壁を意識する度、俺はティファを疎む。今回の件があったから、俺の不快感は以前より増すに違いない。

 俺は男で、同性愛者で、所謂ネコである。ザックス=カーライル、セフィロス、ルーファウス、三人の男に代わる代わるに愛されるという幸福な経験をして、俺が望んだのは、「女に生まれてくればよかった」ということ。声が変わり体の形が変わり、俺の中で「性」が定まっていくシーンを、鏡の中で見ていた。あまりにも苦しいことだった。ザックスたちは変わらず俺を抱いたし、「可愛い」と言ってくれた。それでも、俺は決してそんなことはないと思った。俺は女じゃないのに、女の真似をしている。常にそういう意識があった。

「俺はクラウドが女だったらって思ったことは一度もないよ」

 ザックスは時折フテ腐れた俺を慰めた。それでも、俺には叶わない夢があった。最愛の人の命を俺の身体に宿せたならば、どんなに幸せだろう。

 子供が欲しかったのだ。俺は、お母さんになりたかった。あんたは私の大切な子供と、撫でる優しさを、俺も身につけたかった。

 俺が真剣になって生きようとすればするほど、俺の夢は更に遠のいた。最早「ソルジャー」は俺にとって何の意味も持たないようになっていた。唯一「ソルジャー」の理由があったとしたら、それは、ティファだった。

 そして、ティファは俺の持ち得ないものを全部持っている。ティファは女だ。俺の知る限り最も女性的な身体を持つ女だ。俺は男で、女にはなれない。彼女のような優しいラインの身体を持つ事も叶わない。エアリスやユフィよりも、ティファを見るとき、俺は口の中が苦くなった。

 世の中には性別を間違えて生まれてきてしまった例がある。完全に男の心を持っているのに、身体が何故か女というケース、あるいはその逆。俺の場合は後天的に望んだもので、単なる我儘に過ぎないが、それでも嫉妬心とも呼べそうな暗い感情が備わっている。そして、俺は永遠に女になることは出来ないから、ティファへの暗い感情が消えることはありえない。俺は、俺自身が正気を疑われるような人間であることを判っていながらも、ティファを俺の身体で抱いた人格の正気を疑う。何を考えていたのか、その舌から聞いてみたいものだ。

 悔しいという気がどこかにあるのだと分析する。ティファは俺の持ち得ないものを全部持っている。女性的な感情、女性的な肉体。アレだけの物が俺に在ったならば、どんなに嬉しいだろう。狂おしく恨めしく、しかしそれを表には出さないで俺はティファを見ている。俺にとってコンプレックスの塊が彼女だった。そして、そのコンプレックスは、素直な或いは歪んだとにかくどんな形の愛情にも昇華することなく、暗澹たる心の泥闇の中で蟠っている。

 これだけは、変わらない。

 俺は今、ヴィンセントが好きだ。ヴィンセントを欲しいと思う。そう思うたび、自分が男であることが、身悶えするほど恨めしい。俺には膣がない、俺には子宮がない。万に一つヴィンセントが俺を愛してくれるようなことがあったとしても、俺が用意できるのは肛門ひとつきりで、そんな不潔なところで彼が悦んでくれるかどうかは覚束ない。

 あのいい、高い、声が欲しい。柔らかな身体が欲しい。全部が羨ましい。俺だったら良かった。俺はどうせ男だ。

 たまらなくなってまた目を開けた。オーディオのLEDの時計が二時半を回っている。

 やっぱり本を読もう。俺はまた起き上がって。

「眠れないのか」

 ヴィンセントが半身を起こしてこっちを見ているのに気付いて、あっと声をあげそうになった。

「あまり憂鬱なことを考えるな。楽にしていればいい……」

 眠っていたのに、俺の為に起きた。そう言うことが、一つ、俺を悦ばす。

「……別に、明日用事があるわけではない、眠れないなら起きていてもいい、その代わり昼に寝ればいい。そういう怠惰さを、咎めはしないから」

 うん……、と俺は言った気がした。覚えていない。それからぱたんと横になって、下らないことを考えるのを止めてしまった。午前二時半過ぎに考える事ではない。とりあえず、眠いのだけが確かだった。目が覚めたら女になっているかもしれない、そうとだけ考えた方が余ッ程得だと思った。

 


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