黒暑―こくしょ―
2011/06/29 Wed
m25
確かにユウキの暮らすアパートでは夜でも暑いだろう。
グスタフは手で頬を仰いでいたユウキの手を取ると、そのままソファへと誘導した。
「ちょ、グスタフさん!? 今度は何ですか!?」
「寝不足なんだろう? 少し寝ていけ」
グスタフはそういうと、自身はソファへと腰掛け、ユウキの頭を膝へと乗せた。
無論のことユウキは盛大に抵抗したが、腕力の差以上に、夏バテというマイナス補正が掛かっているユウキに勝ち目はない。
暫くは暴れていたが、折角アイスコーヒーと風で冷やされた身体がまた熱を持ち出したあたりで余りの不毛さにユウキが諦めた。
「グスタフさん…せめて膝枕はやめてつかぁーさい…」
「首の裏を冷やすと血管が冷やされて全身の体温が下がるらしいぞ」
「――――…やめる気はないんですね…」
ソファに腰掛けたグスタフの膝に頭を預けていたユウキは、長いこと居心地が悪そうに身を捩っていたが絶えず髪を梳く冷たい手と開け放たれた窓から入ってくる心地よい風に段々と身体の力を抜いていった。
その様子を見ていたグスタフが頭上で笑う気配がした。どうせ子どものようだと笑っているんだろう。
正直、子ども扱いされることに慣れたくはない。これ以上は入ってきてはならないと、明確に線が引かれているような気がするのだ。
「―――グスタフさんは…」
慣れたくないし、認めたくない。理解したくない。
けれど、それでも、グスタフが大人であることと、ユウキがグスタフに比べれば子どもだということは事実だ。
生きている年数が違うという以上に、グスタフはユウキの知らない世界を山ほど知っている。
グスタフがユウキを子ども扱いするのは当然だろうと、客観的にならそう思えるのに、心が納得しない。
「暑さにバテる子どもがいたら、みんなこんな風にするんですか?」
心地よいまどろみに浸りながら、ユウキは何処か責めるようにそう呟いた。
グスタフを責める権利などありはしないと、大人ぶって自身を諌める言葉は聞こえない振りをした。
子ども扱いを止めてくれない相手に、子どものように我侭を言っても逆効果なだけだと分かっているのに、もしも自分以外の誰かがこの冷たい手を享受したらと思うと嫌で堪らない。
その思考すらも、我侭な子どもの煩わしい独占欲にしか思えなくて、ユウキはグスタフの答えを聞かずに目を閉じた。
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