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黒暑―こくしょ―

2011/06/29 Wed
m25


グラスの中で氷が涼やかな音を奏で、ライダースーツから覗く首筋が露になる。
そこでグスタフは、トレードマークの赤いマフラーがないことに気が付いた。
視線だけで室内を探すとソファの上に置かれているのを見て僅かに息をつく。
ただでさえ白い肌だ。外で外していたら日焼けで酷いことになるだろう。
そう思ったグスタフは、ゴクゴクと音を鳴らしながらコーヒーを飲み干すユウキの首筋に手を伸ばした。
触れたユウキの肌は汗ばんでいたが荒れている様子はない。
心中で安堵の息を吐き、上下する喉仏を指先で擽れば面白いほど素直に引き攣った。
咄嗟にユウキは逃げるように上体を反らし、気道へと逆流したコーヒーにむせ返る。

「―――ぐ、ぐぐぐぐ、グスタフさんッ!?」

ゲホゲホと咳き込みながら、行き成りの接触に盛大に動揺するユウキに、グスタフは余裕綽々にコーヒーを啜った。
その姿が嫌に様になっていて、ユウキは思わず見惚れそうになってしまう。
しかしすぐさま我に返り、擽られた喉を片手で押さえつけた。
ドクドクと騒がしい心臓も出来ることなら押さえつけたいところだが、流石にそこまで露骨な反応はできない。
そんな初心な反応などお見通しなのだろう。グスタフは込み上げてきた笑気を殺し、何食わぬ顔でユウキに問いかけた。

「何だ」
「何だじゃないですよ!行き成り何すんですか!」

咳き込んで酸素が不足したという理由だけでは説明がつかないほど顔を赤くしたユウキに、殺したはずの笑気が息を吹き返す。
笑みはそのままグスタフの制止も聞かずに唇に浮かび、ユウキをからかうように言葉を軽くした。

「―――感じたのか?」
「っ違ッ!? 違いますよ!!」

余りの言葉に盛大に否定するも、強い否定が返って嘘くさい。
ユウキはブンブンと熱の篭っている頭を振って幾度も口腔で言葉を嬲った。

「ただ、その…ッ冷たかったから驚いただけですよ!!」
「ほぅ?」
「最近、夜だって暑いじゃないですか! 寝てるときも熱篭ってるような感じで、全然眠れなくて!」

だから冷たい手に触れられて驚いただけだと言い募るユウキの顔色は確かに悪い。
フローリングに倒れていたのは暑さにバテているだけだと思っていたが、どうやら睡眠不足も絡んでいるらしい。

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[Serene Bach 2.23R]