ブラックラインの攻防
2011/03/24 Thu
m25
ヨハンはすい、と、ごく自然に腰を屈めると、ジェネラルの額へとキスを落とした。
「―――では、な。ジェネラル」
酷く可愛らしいリップノイズを挟み、笑みを転がせるヨハンからジェネラルは弾かれたように距離をとった。
ジェネラルの背がソファの背もたれにあたり、抗議のようにスプリングが鳴く。
「ッヨハン!」
「ウハハハハ。私に構うよりも先に宥めねばならん相手が居るぞ?」
「―――お前ッ!!」
最後の最後まで場を引っ掻き回しておきながら、足取り軽く去っていく赤い黒龍を見送りながら、ジェネラルはそろり、と視線をオズワルドへと向けた。
視線の先では、オズワルドが眉間に皺を寄せてジェネラルを―――正確には、その額を―――睨み付けている。
怒りからか、或いはもっと別の感情からか、頬は赤く染まり、淫液に濡れる唇が僅かに震えていた。
ジェネラルは、今にも泣き出しそうな不安定さを感じ取り、咄嗟に頬へと手を伸ばす。
しかし、その手がぬくもりを感じるより早く、今までフローリングに座り込んでいた痩躯が強襲を掛けた。
「――――オズ!?」
背中をソファへと押し付けられ、視界が回る。
衝撃に歪んだ視界を幾度か瞬きで洗うと、天井を背にしたオズワルドがジェネラルの体躯を押さえつけていた。
困惑を視線に載せると、ジェネラルを見下ろしている切れ長の目に涙が浮いていく。
雫は眦へと溜まると、そのまま重力に引かれてジェネラルの軍服へと落ちる。
硬い布地が水滴を受ける音を聞いてしまえば、無意識のうちに腕がオズワルドへと伸びた。
そっと優しく頬に触れれば、オズワルドの眉間に皺が寄り、涙は止め処なく頬を流れていく。
「オズ、……オズ」
すまない。と謝ることは容易い。けれど、謝ることで一層その心を傷つけはしないだろうか。
何もなかった。と言い募ることは容易い。けれど、言い募ることで疑惑が一層深いものにはなりはしないだろうか。
ジェネラルの心中でそんな葛藤が生まれては、言葉が詰まって音にならない。
出来ることと言えば、一つ覚えのように大切な名を連呼するだけだった。
「―――分かっております」
ジェネラルが自身のデリカシーのなさに頭を痛めていると、名を呼ばれたオズワルドが切なげに目を細めた。
いつもはサングラスで阻まれている深みのある瞳は、痛みを堪えるように揺れている。
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