ブラックラインの攻防
2011/03/24 Thu
m25
「…気、持ち良かったですか…?」
何処か不安そうに尋ねてくるオズワルドに、これ上なく煽られる。
スーツを一分の隙なく着こなしているという倒錯的な状況も、欲を加速させる要因でしかなかった。
色香溢れるオズワルドと、それにしっかりと当てられている自分自身を自覚するだけで消えてしまいたくなる。
けれど、返答を待つオズワルドの視線が一心にジェネラルへと向けられており、逃げ場はなかった。
「―――――…ああ」
短くはない沈黙を挟み、頬を薄く染めながら、酷く情けない顔でそう言うと、ジェネラルは片手で顔を覆った。
隠し切れない耳は朱色に染まり、居たたまれなさからか、オズワルドを撫でていた手が完全に止まっている。
オズワルドはといえば、その返答を聞いてほっとしたように控え目な笑みを浮かべ、止まってしまったジェネラルの手へと頬を寄せた。
「65点」
そんな二人を眺めていたヨハンは、笑みを刻む唇を片手で隠しながら聞いてもいない評価を口にした。
因みに及第点は70点だ。と、これ見よがしに人指し指を立ててみせる。
「ヨハン!」
文句の付けようのない笑みは完璧で、ジェネラルは思わず声を荒げた。
達した直後に発した声は掠れており、迫力に欠けるどころか妙な艶がある。
鳴りそうになる喉を丁寧に隠し、ヨハンは表面上は穏やかな笑みを晒した。
「だが、まぁ…面白いものを見せてもらったからな。今日は帰ろう」
漸く聞けた一言に、オズワルドとジェネラルの肩が分かり易く下がる。
それが言葉以上に雄弁に安堵を物語っており、ヨハンの目を楽しませた。
もう早く帰ってくれと全身で訴える二人を存分に鑑賞した後、ヨハンの手はソファに掛けてあったコートへと伸びた。
自己申告通りに帰り支度を始めたヨハンに、オズワルドは深い溜め息を漏らした。
帰宅してから決して長い時間は経っていないが、疲労感が尋常ではない。
何はともあれ、これで少しは落ち着いてジェネラルと話すことが出来る。
そう安堵したオズワルドは、他の誰でもない、ヨハンの目の前で気を緩めてしまった。
どう贔屓目に見ても迂闊の一言に尽きるが、そんな迂闊さを見逃すヨハンではない。
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