ブラックラインの攻防
2011/03/24 Thu
m25
ジェネラルの何処か困惑したような視線を感じないわけではないのだが、それよりも未だ愉しげに笑っている龍へ牽制するのが先だ。
腕の中にジェネラルを仕舞いこみ、敵意の満ちた視線でもってヨハンを貫いた。
長らく暗殺者として闇と共にあったオズワルドの人相の悪さは折り紙つきだ。
嫌な迫力ばかりある眼光を駆使して不快を露に睨みつけるも、ヨハンは一向に気にした風もなく首を傾げて見せる。
「一晩でも構わんぞ」
さらり、と流れる髪はまるで炎のようで、首を傾げたせいで伸びた首筋は匂い立つような色香を放っていた。
動作の一つ一つに含みがあり、手馴れている感が嫌でも伝わってくる。
ジェネラルともそうやって褥を共にしたのだろうか、という邪推が脳裏を過ぎり、腕に必要以上の力を込めた。
「お引取りください!!」
到底オズワルドが許容できるはずもないことを飄々と口にするのだから性質が悪い。
言ったヨハンですら、その言葉に頷くなどと思っていないのだと、雄弁に赤い瞳が物語る。
それでも、ヨハンの視線はオズワルドの腕の中へと注がれている。
視線を辿らなくても分かる。目の前の龍の目当てはオズワルドの宝なのだ。
けれど、腕の中の掛け替えのない宝を渡す気は一切ない。
無論、色々問い詰めたくはあるものの、それは一対一で話すことにして、断固として拒絶の言葉を発すればオズワルドの激昂など何処吹く風というようにヨハンは口を開いた。
「そちらがそうは言ってもな…ジェネラルとて男だ。老体では満足できない夜もあるだろう」
「随分下世話な話に持っていくのですね」
「好きだの愛してるだのと囁くだけで済む関係などではあるまい?」
低く唸り声を上げるオズワルドに、ヨハンは両手を挙げて肩を竦めて見せる。
嫌に芝居がかっている仕草は、ヨハンに頗る良く似合う。
本来なら、大切な宝を狙われるのは龍の方ではなかっただろうか。
MUGEN界ではお伽噺すら一筋縄ではいかないらしい。
「……お話する義理はありません」
奥歯を噛み締めるように切り捨てれば、ヨハンは喉奥で笑みを噛み殺した。
必死になっているのはオズワルドの方だ。
ジェネラルが若さや色気を重要視しているとは思わないが、ないよりはあったほうが良いだろうし、ヨハンの下世話な指摘も全くの的外れであるとは思えなかった。
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