ブラックラインの攻防
2011/03/24 Thu
m25
「ッヨハン!!」
しかし、視線がジェネラルへと移動しきるまえに、ジェネラルが諌めるようにヨハンの名を呼んだ。
ジェネラルが声を荒げることも珍しければ、こんなにも動揺するところも珍しい。
思わずジェネラルとヨハンの顔を交互に見比べ、次いで、唐突にヨハンの言葉が正しかったのだと理解した。
「――――……は?」
大混乱の渦に放り込まれたオズワルドは、酷く間の抜けた声を漏らして呆然とした。
事実を事実として理解したものの、決して衝撃が小さいわけではない。
むしろ受けた衝撃が大きすぎて一切のリアクションが凍りつき、その場で硬直してしまった。
人生初の修羅場という渦中にオズワルドを叩き込んだヨハンはと言えば、自身へと詰め寄るジェネラルへと微笑みかけている。
「ウハハハ。何を慌てることがある。事実だろう?」
「―――…昔のことを勝手に口にするのはマナー違反だぞ…ッ」
「昔のことにしているのはお前だけだ」
特徴的な笑い声でジェネラルをからかうヨハンは、意味ありげな視線を刹那の間だけオズワルドへと向けた。
その視線に、固まっていた身体が僅かに動くも、回復にはまだ遠い。
オズワルドのその様子が気に入ったのか、まるで見せ付けるように鍛えられた肢体をジェネラルへと摺り寄せた。
猫科の獣のようにしなやかに腕を伸ばしジェネラルへとしな垂れかかると、無骨な掌がボトムの内側をそろりと撫で上げる。
「―――私は今でも……お前を忘れていないぞ…?」
まるで猫のように高飛車に囁くヨハンは確かに艶がある。鍛えられた身体に、恵まれた容姿、低く穏やかな声。
豊かな赤い髪が張りのある肌を流れて、同色の瞳はうっとりと細まった。
確かに、年齢性別問わず人が狂いそうな色香がある。それは認める。むしろ、認めざるを得ない。
けれど、だからと言って。
オズワルドは数歩の距離を瞬く間に詰めると、ヨハンとジェネラルの間に割り込んだ。
三人分の体重を受けて、猫脚のソファがぎしりと鳴ったが取り合わず、力任せに二人の間に距離を作る。
常の紳士然とした空気を払拭したオズワルドらしからぬ行動にジェネラルの目が丸くなる。
「オズワルド…?」
「お話は良く分かりましたが、今の閣下は私のものです。差し上げる気もお貸しする気もありません」
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