ブラックラインの攻防
2011/03/24 Thu
m25
「今の…なぁ?」
含みをたっぷりと持たせた囁きに、ジェネラルは小さく肩を竦めた。
若い頃は今思い出しても頭痛を覚える程度にはやんちゃをしていた記憶がある手前、何も言えなくなってしまう。
流石にジェネラルの夜遊び関連をヨハンが全て知っているとは思いたくないが、片鱗を知られているのは事実だった。
ぐうの音も出ないジェネラルの姿が面白いのか、ヨハンは唇を弧に歪ませて目を和ませた。
人外然とした縦長の瞳孔は笑気を含み、視線でもジェネラルをからかってくるのだから始末に悪い。
ジェネラルは溜息を紅茶へと吹きかけて僅かに温くなった紅茶を口へ含んだ。
「―――…ヨハン、用がないならそろそろ帰りたまえ」
「まぁそう言うな」
紅茶一杯で長々と居座り続けるヨハンに痺れを切らしたジェネラルが、言葉を選びながらも帰宅を促した。
そう強くは言えないものの、かれこれ三時間近く、ヨハンの言葉遊びに付き合っているのだ。
程よいところで穏便に退場を願わなければ、このまま夜になるまで居座りかねない。
ジェネラルが一人暮らしかつ、独り身ならば、加害者側の当然の贖罪として深夜まででも付き合う気はあるが現実はそうではないのだ。
そんな心情を重々承知しているだろうに、ヨハンはにっこりと笑みを深めて見せる。
僅かに傾げられた髪が波打ち、まるで大輪の薔薇が咲き誇ったかのようだった。
「―――お前の番に挨拶の一つくらい、しても良かろう?」
「ッ!」
その一言に、漸くジェネラルは玄関の外の気配に気づいた。
ジェネラルの想像以上に、目の前の男に意識が向いていたのだと気づいても既に遅い。
気配は何の疑いもなく帰宅の声を室内に響かせ、真っ直ぐにリビングへと近づいてくる。
頭を抱えたくなる衝動をジェネラルが何とか押さえつけていると、ヨハンは澄ました顔で紅茶を啜っていた。
それが酷く様になっていて、八つ当たりだと分かっていながらも3wayを飛ばしたくなる。
「閣下、向かいのレストランが改装したようですよ。今度―――」
中折帽を片手で弄び、他愛ない報告を口にリビングへと入ってきたオズワルドは僅かに目を瞬かせて驚きを表した。
幾度かトーナメント会場で顔を合わせた間柄なれど、オズワルド個人としては余り面識がないヨハンがソファで優雅に足を組んでいたのだから当たり前のことだ。
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