消失地点
2010/12/16 Thu
m25
グスタフの反応に満足したのか、蠢く手は再び動き出す。
掌を温めたいだけ、安穏とした眠りに落ちたいだけだと念じながらも、一度感じてしまった不自然さは拭えない。
気のせいだと何度も自身へと言い聞かせるが、ゲーニッツの手が筋をなぞるように皮膚を這うと、身体に力が入ってしまう。
じり、と背側のシーツをスーツで詰ると、微かな笑気が耳を打った。
「――――ッ!?」
思わず問い返そうと口を開いた瞬間、視界が翳り唇に冷たい皮膚が重なった。
確かめるまでもなく、それはゲーニッツの唇だった。
視界をゲーニッツの顔が埋め尽くし、途方もない驚愕と狼狽がグスタフを襲う。
唇に冷たい体温を感じながら、手は止むことなく隠された肌を這いまわる。
腹の底から湧きあがるような不快感に、グスタフは抵抗するように腕を持ち上げた。
けれど、それを咎めるような視線が近距離で交わると、動いたはずの腕は凍りついたように止まってしまう。
グスタフが固まっている間に、肌を這っていた手がスーツを割った。
「さ、祭祀…さ…ッ」
流石に、腹を掌全体で撫で上げられれば居心地が悪いどころの話ではない。
グスタフは顔いっぱいで困惑を示して、覆いかぶさるゲーニッツを見上げた。
ゲーニッツは身の置き所がない様を笑うと、冷たい掌を殊更ゆっくりとグスタフへと摺り寄せた。
その手つきはまるで喰らう獲物で遊ぶ捕食者のようで、グスタフは一層困惑を滲ませる。
「暖めて下さるのでしょう?」
「―――――ッ」
言葉に含まれた意味と、肌を這う掌の意図に気づいた瞬間、闇に無音の悲鳴が響いた。
同時にグスタフの顔から音を立てて血の気が引いていく。
目の前で微笑むゲーニッツが、同性を性欲の対象に見れるということも初耳ならば、その対象に自身が入るなど夢にも思っていなかったのだ。
余りの不測の事態に、咄嗟に袖に隠してあるワイヤーに手が伸びるが、それを何とか理性で押さえつける。
暴れたがるのは獣の本能ではあるものの、一族の導き手であるゲーニッツにはどうあろうと逆らえない。
例えこのまま慰みものとして一夜を明かすことになろうとも、グスタフにはゲーニッツを害せない。
しかし、その本能と、グスタフ個人の感情は別に存在した。
ごく一般的な嗜好を持つグスタフにとって、自身よりも上位に位置する同性に犯されるのはどうあっても許容できることではない。
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