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理由なんていくらでも

2010/12/10 Fri
m25


オズワルドは腕を伸ばし、グスタフの額へと手を載せる。
前髪は整髪料で整えられているから、額は無防備だった。
オズワルドはグスタフが何事かに気づく前に、そこを鋭く指で弾いた。
長く器用なカードを操る指が空を切り、痛々しい音が室内に響く。

「―――-ッ」
「早いのは口と手ばかり。誘い方も心得ていない若造は帰りたまえ」

グスタフは咄嗟に弾かれた額に手を当てて見下ろしてくるオズワルドを睨みつけた。
無論、そんな眼光で怯えるような殊勝な性格はしていない。
鋭い視線を何処吹く風と受け流し、グスタフの顔の横に手を付いて上体を起こそうと試みる。
しかし、グスタフはそれを良しとせず、腕力に物を言わせて痩躯をひっくり返した。
かつては稚く弱い弟子であったとはいえ、今ではオズワルドを遥かに超える腕利きに成長した純然たる力に抵抗できず、視界は呆気なく反転する。
ソファへと押しつけられた身体は軋み、オズワルドは顔を顰めた。
仰々しく肩を竦めると、溜息を吐き出すために開いた唇を奪われる。

「―――…ん」

薄い唇同士を合わせて、数度角度を変えると、そのまま長い舌が進入してくる。
ぴちゃぴちゃと粘液を捏ねる音が口内に響き、互いの舌を絡ませあう。
何をされても白状する気はさらさらないが、グスタフとのキスは嫌いではなかった。
その手の誘いを幾夜も重ねてきたのだろうキスは巧みで、ゆっくりと瞼が落ちていく。
鋭い瞳が閉じられるのを待っていてたかのように、腰を捕らえていた手がサングラスに伸びて邪魔なそれを取り払う。
微かな音に、閉じられた瞼が僅かに開くが、グスタフの所作を許容するかのように再び閉じられた。
分かりやすく身体から力を抜くと、グスタフの手がネクタイを解くのを感じた。

「……仕方ない…子です、ねぇ……?」
「―――もう、黙れ」

口付けの合間に囁けば、寛げられた首筋に歯を立てられた。
老いた肌に歯列を埋めて舌で以って濡らして、舌腹で脈動を聞く。
べったりと接触する軟体が筋を辿るように上り、耳の裏に朱印を残す。
リップノイズが鼓膜を揺らし、遠くで衣擦れの音が絶え間なく奏でられている。
やはり、手が早い。と呆れたように思いながらも、人外然とした冷たい体温は悪くなかった。

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[Serene Bach 2.23R]