Cry Me to the Moon
2010/11/24 Wed
m25
ダークブラウンのフローリングを踏んで、たどり着くリビングは全面強化ガラスのスクリーンに都会の夜景を映していた。
相変わらず、目が眩みそうな光景にユウキはこめかみを押さえる。
「呆けるなら座ってからにしろ」
背中に軽い声を掛けられて、首を捻ると片手にオープナーとワイングラスを二つ携えたグスタフと目が合う。
ユウキは口元に笑みを浮かべ、腕に持つワインボトルをローテーブルの上に乗せた。
目の前に夜景が見える特等席だ。グスタフは当然のようにユウキの隣に腰を下ろして足を組む。
「白ワインは好きですか?」
「嫌いではない」
「俺はあんまりワインの味って分かんないんですけど、これはグスタフさんが好きそうな味だなーって」
ソファから身を乗り出して銀色の包装を剥ぐと、中から細いボトルが姿を見せる。
青いラベルに白抜きでRadikonと書かれているそれを片手に持って、グスタフの目線の高さまで持ち上げた。
グスタフも僅かに身を屈めてラベルの文字に視線を滑らせる。
さらりとした黒髪がユウキの間近で肩から零れ落ち、微かにグスタフが愛用するフレグランスが鼻孔を擽った。
ユウキの心音が短く跳ねて、文字を追う視線に魅入る。切れ長の鋭い瞳だ。
「――…白と言うには濃密だな、だが悪くないセレクトだ」
「グスタフさんだと、アルコールで外しませんから」
種族柄なのか、もともとの嗜好なのかはわからないが、グスタフは酒が好きだった。
元から自分自身に構わないのもあって、食事の代わりを酒に務めさせようとした時さえある。
一瞬グスタフの瞳に意識を持って行かれてしまった自分を誤魔化すようにユウキは相槌を打つ。
今だけのことではなく、ユウキはグスタフと同じ空間にいると、いつも惹きつけられた。
ふとした瞬間の何気ない仕草から、これはワザとらしい釣り針だと思えるものまで、ユウキは全てに引っ掛かってしまう。
グスタフが放つ色気に中てられているのだと、自分でも理解できるが制御は出来ない。
時に冷たく、時にあっさりと、時にのらりくらりとあしらわれるが、極稀にこうしてデートしてくれる。
勿論、デートと言っても一緒に食事をしたり、ドライブに連れて行って貰ったりするくらいで、色っぽい話は滅多にない。
――――逆に言えば、多少はある。
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