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Cookie&Cream

2010/11/13 Sat
m25



出迎えの挨拶にも何の反応もなく、うんざりと言い放たれて僅かに怯む。
キッチンには甘い香りが充満して甘味好きでも、少々厳しい空気ではある。
その自覚がある分、どうしても語尾が弱くなってしまう。
無論、そんな弱さを見逃す相手ではなく、酷く尊大に鼻で笑われた。
それが嫌に様になっていて、少々どころではないくらいに忌々しい。

「帰ってきた途端に甘い匂いを嗅がされる私の身にもなれ」
「お、お前だって食べるじゃないか!」

異議あり!と言わんばかりに正論を振りかざせば、つい、と赤い瞳が細くなる。
同じ龍の瞳孔が、冷めきった視線を向けてきて思わず肩が跳ねた。

「一人じゃ食いきれん量を何処かの地味が作るからな」
「地味じゃない!!」

条件反射のようにそう叫ぶと、視界が涙で歪んでいく。
顔が耳まで熱くなり、口を真一文字に引き結んで涙を堪えると、盛大な溜息が耳を打った。

「―――付き合いきれんな。部屋に戻る」
「うぅ…帰ってきた途端にこれだよ……」

視線を床に捨てると、堪えきれなくなった涙が頬を伝った。
確かに、二人分を考慮して作ったのは認めるし、甘いものが得意でないことも知っている。
それでもお菓子を作れば絶対に手を出してくるのはあちらの方なのだ。
クッキーもホイップ・クリームも甘さを抑えたのは、今日もきっと手を出すだろうと考えたからこその配慮だというのに、この仕打ちは何なんだ。
僅かに解けた赤い髪が頬に当ると、細い息が零れてしまう。
自分が酷く馬鹿らしいことをしている気がして、程よく泡立ったホイップ・クリームを更に泡立てた。
まるで八つ当たりのように腕を動かしていると、くん、と一つに結んだ髪が後ろから緩く引っ張られる。
摘まれた髪を取り返すように身を捩ると、逃げようもない引力で髪を引かれ、顎が反る。
思わず倒れそうになるのも、背後には頑丈な身体があって引っ繰り返りはしなかったが、赤い瞳に鋭い光が宿る。

「…ッ、なん―――」

上下反転のまま睨みつければ、そのまま何の前触れなく唇が合わさる。
相手の赤い顎髭や、その下の喉仏が視界を埋めつくし、無理な体勢で腰が痛んだ。
さすがにこの体勢で口腔を荒らされることはなかったが、心臓が数秒止まったのは確実だ。
手に持ったボウルと泡立て器を落とさなかったのは奇跡に近い。

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[Serene Bach 2.23R]