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Beloved Bastard

2010/11/11 Thu
m25


それでも、グスタフはいっそ献身的なまでに滑稽なまでに風に尽くそうとする。
そうして傷つき、サイキカルの元へと帰ってくるのだ。
ネクタイを解き、首元を寛げて、呼吸を楽にしてやるとグスタフの寝息が深いものになった。
首から鎖骨へのラインに黒髪が零れて酷くサイキカルを誘い、引き抜いたネクタイを床に捨てた。
起きる事も無いグスタフ相手に、出来る事と言えば、その程度の稚気を散らすことだった。
何をどうしても、グスタフは変わらないだろうし、自分自身にも変化があるとは思えない。
出口の無い不安定な関係性の上を綱渡りしながら、お互いに見果てぬ夢に恋焦がれている。

「諦めろ、此処が地獄だ」

投げやりに声を出すとグスタフの顔の隣に手をついて、整った顔を覗き込む。
何時もは纏う雰囲気と髭のお陰で年相応に見えるが、眠っていると自棄に子供じみて見えた。
瞳を細めながら、ゆっくりと上体を折ると暗い褐色の髪が視界の端を塞ぐ。

「―――……ん、」

傾斜に合わせて、サイキカルの唇が近づけば、酒で濡れたグスタフの唇が微かに戦慄いた。
微かな反応に、もしかして起きてしまうだろうか、と目を細める。
気配には人一倍聡いグスタフのことだ、泥酔していても気付くかもしれない。
しかし、目を覚ましてくれるなら逆に好都合かもしれないと杞憂を打ち消す。
無論、現実はそんなにも甘たるいものではないし、上手くいくわけもないと知っている。

何せ此処は地獄なのだ。

現に気配を察知し、震えた唇が紡ぐのはサイキカルの名前でも、制止の声でも無かった。

「……ゲーニッツ様…」

分かってる。夢に見るのすら、私ではないのだろう。
そんなことは、誰より良く分かっている。
どれ程辛い感情を抱えているかなど、自分以外に分かりようがない。

く、と結んだ唇に力を込めて、一瞬瞳を揺らしただけでグスタフの声に耐えた。
けれど、行動はか細く零れた声に阻まれ、吐息を唇にぶつけるだけで止まってしまう。
こうなるから酒に溺れたグスタフを介抱するのを役得だとは思わない、それでも誰にも譲りたくない。
案外、この感情を逆手にとって利用されているだけかもしれないが、別にそれでも構わなかった。
グスタフを詰れるほど、サイキカルも褒められた感情では動いていないのだ。

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[Serene Bach 2.23R]