Dawn chorus
2010/09/13 Mon
m25
重ねて言われた言葉に、声なく納得する。
「祭祀様の起床をお手伝いするのはもう少し後になりますが…今朝は…」
その続きを言うべきかどうか悩み、口ごもるとゲーニッツの足が止まる。
グスタフも釣られて足を止めると、何とも言えぬ空気が辺りを満たす。
何か言うべきだろうかとグスタフが悩むより早く、ゲーニッツの足が動き出した。
その速度は先ほどより早い。
慌ててグスタフも後を追うも、互いの間に流れた空気が払拭されたわけではない。
それに耐えられなくなったのか、ゲーニッツが歩きながらの会話を試みる。
「……今朝は紅茶を淹れて下さい」
「畏まりました。ダージリン、セイロン、アールグレイ、アッサムとご用意出来ますが…」
「アッサムをミルクティーでお願いします」
ふと、グスタフの視線がゲーニッツを捉える。
今朝はプレーンではないのか、という視線を感じとったのか、ゲーニッツが僅かに口ごもる。
長い長い沈黙のあと、観念したように吐息に載せて小さな呟きを漏らした。
「……少し、痛めたようなので……」
「………」
身に覚えのあるグスタフに何処が、などと問える訳もない。
朝靄の中で染まる首筋に昨夜の名残を見つけると暴風のような理解がグスタフを襲った。
何処までもグスタフの願望に沿った理解を否定して欲しくて、今度はグスタフの口が動いた。
「……祭祀様、お尋ね致しても宜しいでしょうか?」
「……何ですか?」
「…………照れておいでなのですか?」
グスタフの言葉にゲーニッツの足が凍りつく。
次いで、グスタフの眼前で朱印の散る首筋が刷毛で塗りつぶしたような赤に染まった。
暫く、完全に無音が辺りを満たしたが、朝が近づいたのに気づいた鳥が起き始めた。
鳥は幾度か囀ると数羽飛び立っていく。
グスタフはそれを視界の端に捉えるも視線は未だゲーニッツに固定されたままだ。
「………………明日はもっと遅くに起きて下さい」
問いに対して、否定も肯定もしないままゲーニッツはそう言った。
グスタフは理解が正しいのだと知ると、苦労して心音を抑えた。
綻んでしまいそうな頬を引き締めて、グスタフは一歩足を踏み出す。
「祭祀様が隣にいてくださるなら、」
囁くような声と共に指先がゲーニッツに辿り着き、柔らかな力で抱き寄せる。
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