Dawn chorus
2010/09/13 Mon
m25
「………」
グスタフはゆるりと首を巡らすとシーツの中にいるであろうゲーニッツを探した。
加減も何も出来なかった自覚がある分、居たたまれなさが脳を灼いたが敢えて気付かぬ振りをした。
腕を伸ばして引き寄せるべき身体を手繰るが、グスタフの手は冷えたシーツを寄せるだけに終わった。
僅かに身を起こし視界と気配で以てゲーニッツを捜すと、研ぎ澄まされた神経が居場所を教えてくれる。
グスタフは寝台から離れ、脱ぎ散らかしたシャツを手に取った。
一晩を床で過ごし、鋭利なまでに冷えたシャツを羽織ると気配を手繰って寝室から姿を消した。
グスタフが珍しく軽装で辿り着いたのはゲーニッツの自宅に隣接し、管理を務める教会の庭だった。
辺りは薄暗いが空は明るく、朝日が近いのだと見て取れた。
グスタフが確信を以て歩を進めると程なく青い法衣が見つかった。
「祭祀様」
呼びかけると、今まで空を眺めていたゲーニッツが振り向いた。
その顔に敷かれているのは常と何ら変わることのない微笑で、グスタフは僅かに息を呑んだ。
「ああ、おはようございます」
告げられる挨拶も何も変わらない。
昨夜の今朝で何らかの変化があるのを期待していた自分を、グスタフは今更ながらに自覚した。
何を馬鹿な事を、と自嘲すら巧くいかず、グスタフは静かに頭を下げた。
「…朝は冷えます。どうぞ、お戻りを」
ゲーニッツが望むなら、昨夜を戯れとして忘れなければならない。
グスタフの感情よりも、ゲーニッツの意志が優先されるのは当然のことだ。
そう心中で呟くも、ゲーニッツからの返事はない。
「……祭祀様…?」
訝しんで視線を上げると、ゲーニッツは背を向けていた。
ゲーニッツはグスタフに背を向けたまま歩き出す。
それに倣うべきか逡巡するも、ゲーニッツの足が僅かによろめいたのに気付いてしまえば、選択肢などない。
グスタフは付き従うようにその背を追った。
グスタフが付いてきたのを気配で知ったのか、暫くしてからゲーニッツが口を開いた。
「…今朝は随分と早いですね」
言われた言葉に、グスタフは僅かに首を傾げた。
「いつもと変わりありませんが…?」
「そうですか? いつもはもう少し遅いでしょう?」
[7] << [9] >>
-
-
<< きんいろのひかり
いとしきみよ >>
[0] [top]