紳士のくちづけ
2010/09/03 Fri
m25
「クリザリッドくんもあんなに真面目に働いているんですよ、社長」
「お前が強情なのが悪い」
たしなめるように眼の前のルガールに声を掛けても、
子供のような返事しか返ってこず、オズワルドは密やかに眉を揺らす。
当のルガールはと言えば、左腕はオズワルドの右手首を拘束して壁に押しつけ、
真っ赤な右手でオズワルドの細い顎を確りと固定させていた。
お陰でオズワルドは身動きが取れず、後頭部から背中まで壁に縫い付けられている。
一応の抵抗として、自由な左手で顎を掴むルガールの右手首を引き剥がそうと試みているが、如何せん、年齢に基づく基礎腕力が違いすぎる。
クリザリッドが通りかかるまでにも暫く押し問答していただけに、
半ば諦めたようにオズワルドはルガールを見やった。
「直ぐに終わるだろう、何を躊躇う」
「なんで貴方は躊躇わないんですか、仕事中でしょう」
思わず突っ込みをいれながら、自由奔放なルガールをたしなめた。
持ち前のカリスマを盾にしたルガールはかなり聞きわけが悪い。
まるで子供のようなことばかりを繰り返しては、オズワルドの説教を受けている。
(それでも一向に言動を変えないのは、これ上無く社長らしいですがね)
いっそ尊敬を抱けるほど自由なルガールへの本音は隠しておく。
恐らく持ち前のポジティブぶりで好意的に解釈するだろうからだ。
「このままじゃあ、やる気なんて出ないぞ」
「堂々と言う事ではありませんよ、社長」
「オズはしおらしいのが好きなのか?」
「そう云う事では無くてですね」
「私は好きだぞ、オズとのキス」
「……………」
ストレートに告げられると閉口するしか道はない。
ただでさえ憎からず想っている相手なのだ、そういった関係にあるとしても気恥かしさが喉元まで込み上げてくる。
サングラス越しの視線を脇に捨てて、誤魔化す以外に何もできない。
その反応を楽しむようにルガールの指先が顎を軽く撫でてきて、居た堪れないような羞恥を堪えるのに苦労する。
「……仕方のない、人ですねぇ」
「私とオズの仲だからな」
どんな仲ですか。と言えるほど狸を被れなくて、薄い唇を結ぶ。
顔を傾けながら、距離を削るルガールに諦めたように瞳を伏せた。
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