君には見せない 誰にも言わない「初恋はうまくいかないものだ」 言ったのは小学生の時の担任 自身の未熟さと 神様、仏様が人生修行させるためだ とか何とか 信じきったわけじゃないけど 心に残ってた だから 告白の返事をもらった時 終わりを恐れた 私だけの天使に抱かれた日 せめて 思い出だけでも残るよう 祈った この身の 快感を苦痛を なにより あなた自身を忘れないように 見つめ続けた 目を逸らさずに これが通り魔みたいな きまぐれな優しさでも後悔しないように 「かわいかった」という嬉しい言葉には 可愛げのない言葉で 返してしまったけど 二人が一つになる意味って 約束?それとも絆? 前に考えたことがある 今の答え――どちらでもない 抱きしめ合うのは 未来のためじゃなく 今、あなたが 私が ここに同じ思いでいる事を 確かめるため…だと思う 「今も あなたは終わりが怖い?」 私は首を横に振る だって これは只の初恋じゃない 私の一生分の想いをかけた恋だから 神様も片目をつぶってくれるんじゃないかな なんて思ったり 私が図太くなっただけ? ま、いいよね? * * * * * * * * * * * * 美奈萌が手帳を閉じ、机の上に置いてから十五分後、そーっと別の手が伸びる。 「こらっ!!」 ペシッ。その手を美奈萌が容赦なく叩く。 「あいたぁ」 「絶対見ないでって、いつも言ってるでしょ」 「だってさぁ、美奈萌のことは全部知りたいんだもん」 甘えたように言うまひるについ、微笑んでしまいそうになるのをこらえて、きっぱり言う。 「駄目なものは駄目」 「けちぃ」 「そんなことより、お茶淹れて、まひるが持ってきてくれたケーキ食べよ」 「うん、あたし、苺が乗ってるほうね」 「普通、持ってきた人が、自分で言う?」 「たっのしみぃ♪」 ―――だってね。そんな事あるはず無いって思いつつも。 もし、読ませたら、まひるが何か思い出してしまいそうな気がして。 誰かに見られたら、まひるにかかった魔法が解けてしまうような気がして。 天使が空へと帰ってしまわないように。 だから、手帳も、この想いも。 君には見せない。誰にも言わない。
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