俺の側に居て欲しい (7)彼もまた、とまりの髪を優しく撫ぜながら、そうして、ゆっくりと押し倒していく。 上に覆い被さった格好になってから、はっとした顔をしながら明日太が言う。 「あ、背中についてんだっけか……外す…ホックって奴」 小さく首を横に振りながら言う。 「……このままでいいんだ」 絡めた腕をほどき、下着を明日太に見せる。 「あっ」 フロントホック。 「前についてるのか……」 「今日はたまたま、これだったんだよ」 恥ずかしそうに横を向いて、とまりが答える。 それから、一瞬ためらった後、言葉を続ける。 「……こんな風になるなんて……考えてもみなかったんだからな」 「そんなの、俺だって」 お互いわかり切った事でも口に出さずにはいられない。 とまりが横を向いてる隙に脱がせてしまおうと、ホックに触れる。 不器用に指を動かしながら、明日太はつい呟く。 「な、何か初めから裸より、脱がせる方が余計に興奮するんだけど」 「そういう感想は心の中だけで言いなよ」 顔を赤らめながらも、真顔で明日太は言う。 「さっきから、キスしたりとか、脱がせたりとか全部に感動しちまってさ」 明日太の率直な物言いに、とまりはしばらく口をパクパクさせた後。 「……バカ」 やっとそれだけ言って、困ったような、嬉しいような顔で明日太を見つめる。 プチン。小さな音を立て、ホックが外れた。 明日太の前に二つの膨らみ。 「ちっちゃいだろ、あたしの……」 不安げな表情をとまりは覗かせる。 「い、や、俺よくわかんないし」 「嘘だ、よくグラビアとか見てただろ」 言い訳を重ねようにも常日頃の行動はばれている。 「あれは営業用ってか、プ、プロの人だろ」 明日太のうろたえる姿が今日は妙にいとおしく。とまりはつい笑って言う。 「本当にバカだな、明日太は」 「何だよ、とまりこそ……」 言い返そうとしてやめる。 自分が口で勝てるとも思えないから。 それなら別の事で、という訳でもないけど。 明日太は覆い被さった体を下へとずらす。 「な、何? 明日太」 それに明日太は答えない。 「あ、う……ん、や」 目の前の乳房に吸い寄せられるように口付け、そのまま吸う。 「だ、め……あすた」 とまりは明日太の肩に手を置くが突き放すほどの力が入りない。 舌の先で乳首の表面を撫ぜるようにして舐める。 「……あ、ん……」 とまりの口の端から抑えきれない吐息がもれる。 「ん……知らなかった……明日太……」 「何が?」 上目遣いにとまりを見つめ訊ねる。 とまりはその目線の角度にどきっとさせられる。恥ずかしそうに目を細めて答える。 「こんな感じ……こんな風に感じちゃうの」 からかうように、口を少し開けて、下を乳首の先で寸止めさせて、明日太は尋ねる。 「吸われるのと舐められるのどっちがよかった?」 「……だから、そんなの……聞かないで」 「どうして? 『どうしても』じゃ駄目だぜ」 むー、と困った口をした後、小さく答える。 「だって、どっちも感じるんだよ……」 にやりと笑って明日太が言う。 「じゃ、両方な」 唇で吸い付くと口の中、舌で乳首を転がす。 「……ん、あ……だ、め、感じちゃうから……あ……」 聞いた事の無い甘い吐息。とまりの口から漏れてるんだ。俺が感じさせてる。 テレビ越しなんかじゃない。生の声。 今、とまりはどんな表情を見せてるんだろう、乳房から唇を外し、上目遣いに彼女の顔を覗 いてみようとしたけれど、 「あ、み、見るなー」 とまりは自分の顔を見られないように首筋に腕を絡め、しがみつく。 「バ、バカ、そんなんされたら逆にな……」 自分の胸にとまりの胸が押し当てられて、自分の耳のすぐそばにとまりの唇があって。 「だ、だって」 耳元に息が掛かって吐息に温度がある事に気づく。 まだ本番にまで行ってないってのに初めてな事だらけだ。 胸を触る事を封じられて所在無げな明日太の両手はとまりの体のラインをなぞる。 「な、何つーか、すべすべしてるのな」 わき腹、腰の辺を滑らせていくと、指先が下着に触れる。 「これ、脱がしちゃってもいいか」 最後の砦、にしては頼りない面積の布切れ。 でも、この一枚が剥ぎ取られれば、とまりは明日太の前に生まれたままの姿をさらけ出す事 になり。 けれど、とまりは小さく頷きながら明日太に言った。 「う、うん、よくわかんないけど……多分、下着濡れてる、と思うから」 「お、おう、それなら」 何が『おう』なんだか。自分の言葉に突っ込みを入れながら、右手の人差し指をとまりの下 着に引っ掛ける。 頼りなさげなつるつるした、ちっちゃな布切れ。 「破けたりしないよな?」 「破くなよ」 って、破ける事もあるのか? 恐る恐る下着を脱がそうとすると彼が尋ねたせいもあるだろうが、 とまりは少し腰を浮かしてくれている。 そのこと指摘したら激怒するんだろうな。テンパってるはずなのにどこか冷静な自分もいる。 いや、違うか必死で冷静な自分を作り出して落ち着いてるふりをしてるだけだ。
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