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「功司君……なんだかここ暗いよぉ……」
「まぁ、地下だからな。それよりも沙夜、俺の側を離れるんじゃないぞ?」
「う、うん……」
「もうすぐ上に出られるはずだから」
「う、うん……」
……とは言ったものの、一体どこが出口なんだ?
あの洋館の大きさから考えてもうそろそろ壁にぶち当たってもいいはずなんだが、それすらもないし……
まさか無限ループ?
……ありえる。あのインチキ妖精だったらそれくらいのことやりかねない。
せめて、ロウソクの灯で照らした程度の灯りがなんとかなってくれれば……
「はぁぁ……」
「クスス」
「ん?どうしたんだ沙夜?急に笑い出したりして」
「前にもこんなことあったなぁって思っちゃって」
「はあ?あったか?」
「あったよぉ。ほら、昔二人で山に探検に行った時のこと覚えてない?」
「うーん……よく覚えてないなぁ……」
「もぅ!!功司君と二人で山に遊びにいって迷子になったじゃない」
「ああ、そう言えば……」
アレは確か10年くらい前になるのか?
沙夜と二人で山に遊びに行ったのはよかったものの、帰り道がわからず一晩山の中で過ごすことになったんだが……
しっかし、よく覚えてるな沙夜のやつ。
「あの時の功司君、おかしかったよね。『俺にまかせとけ!』って言っておきながら迷子になっちゃうんだもん」
「おかげで親に物凄く怒られたけどな」
「仕方ないよぉ。お父さんやお母さんだってすっごく心配してたんだから」
「まぁ、当然と言えば当然か」
「でも功司君、あたしが怒られそうになった時必死になってかばってくれたんだよね」
「そう言えば……そんなこともあったな」
「あの時とっても嬉しかったんだから」
「おかげでこっちは2倍怒られるハメになったけどな」
「功司君優しいもんね」
「そっかなぁ……」
「そうだよぉ。功司君自身が気づいてないだけで、とっても優しいよ」
沙夜、なんだかとっても嬉しそうだ。
俺自身はそんなに優しくしてるつもりはないんだが……うーん……
ま、沙夜がそう言うんなら、それでいっか。
「あの時からだよな」
「えっ?何が?」
「俺と沙夜が他人じゃなくなったのって」
「えええっ!?」
「あのあと沙夜と一緒にお風呂に入る様になったりして、二人の親密度が一気にはねあがったんだよな」
「ちょ、ちょっと!!あたし功司君と一緒にお風呂にはいったことなんて一度もないよぉ〜!!」
「照れることないだろ?一晩寝床を共にした仲なんだから」
「功司君!!」
ははは。やっぱり沙夜のやつ怒ってる。
まぁ、沙夜はこのくらい怒ってたほうがカワイイからしばらくこのままほうっておくことにする……ん?
「沙夜……なにか聞こえないか?」
「ふーんだ。そんなことでごまかされないんだから」
「ちげーよ。ほら、耳澄ませて見ろ。何か聞こえるだろ?風が吹きぬけるような……」
「……ホントだ。なんだろう?」
「とにかく行ってみるぞ」
「うん!」
よーやく希望の光が見えてきたな。
きっとこの回の出口かなんかに違いない。
もうこの場所にいるのはうんざりだ。
「こ、功司君、あれ!!」
「なんだなんだ?」
あれは一体なんだ?
眩しいくらいに輝いてる光の……円柱?
「ひょっとして、魔方陣じゃないかな?」
「魔方陣?」
「ほら、よくあるじゃない。中にはいるとどこかにワープできるっていう」
「なるほど!」
そうか、それなら確かに納得がいく。
間近で見るとちょっとバカでっかすぎるような気もするけど、他に手がかりはなさそうだし、ここに来るまでに凄く歩いたんだ。
罠ということは考えにくいよな、うん。
でも……なぁ。それで罠を仕掛けるようなこと平気でするのが鬼畜エリスだからなぁ。
うむ……
「なぁ、沙夜。このままここに入って大丈夫だと思うか?」
「わからないけど……多分大丈夫じゃないかなぁ?」
「そうだよなぁ……うーん……」
迷う……迷うぞ……
ここにはいってもいいのかどうか。
「どうしよう沙夜?」
「あたしに聞かれても困るよぉ」
「そうだよな……って、あれ?お前の下にいるの、なんだ?」
「えっ?」
「ほら、その赤い目をしたやつ」
「赤い目……きゃー!!ネズミ!!」
ドン!!
「わ、ば、ばか!!押すやつがいる、う、うわっ!?」
ツルン!!
「わわわ、なんだぁ〜!?」
な、なんでこんな所にバナナの皮が!?
う、うわわっ、地面にぶつかる!!
ゴツン!!
「あたたたたた……」
いっつー!!
おもいっきリ額を打ち付けちまったぜ……
パアアアアアア
「えっ?」
こ、今度はなんだ?
いきなり地面が光り出して……ま、眩しい……
ドッカアアアアアアアアン!!
「うぎゃあああああっ!!」
な、なんでいきなり地面が爆発するんだ!!
やっぱりトラップだったのかよ!!
ドスン!!
「あいたたたたた……」
受け身が上手く取れたけど、体中が痛むぞこれ……
とりあえず起きあがらないと……
ゴン!!
「うげっ!!」
「こ、功司君、大丈夫!?しっかりして!!」
「ぜ、全然大丈夫じゃない……なんで金タライまで降って来るんだ……?」
一瞬目から火花が飛び出したぜ。
なんなんだ一体これは!?
「あっ、功司君みて。魔方陣が……」
「魔方陣?あっ……」
なんかいつのまにか一回り小さくなってるぞ、この魔法陣。
一体どーゆーことだ?
「あっ、功司君。なにか立て札がたってるよ」
「立て札?」
「ちょっと待ってて。読んで見るから」
「ああ、頼む」
「えっとね……『この魔方陣は2階の研究室に直通してますが、罠を解除しない限り入ることはできません。なお、罠の解除の方法は、魔方陣に入って罠を体感することです』……だって」
「ははは……」
つまりなにか?
沙夜に突き飛ばされてバナナの皮に滑り、魔方陣の中に突入して床に激突したあと、爆発で吹き飛ばされて床に叩きつけられて、そんでもって起きあがりざまに金ダライの洗礼と言うおまぬけなトラップの連続コンボをくらってしまったわけか?
ははは……ははははは……
「あのヤロウ、絶対許さん!!!!!!!!!」
「功司君、綺雲さんは女の子だからヤロウじゃないよぉ」
「うるさい!!とっ捕まえて妖精鍋にしちゃる!!行くぞ沙夜!!」
「あ、そんな急に引っ張らないでよ!!功司君!!」
いざ魔方陣の中に突入!!
おお!!体中が光に包まれて行く!!
しかし、眩しくって目を開けてられん!!
待ってろよエリスめ……この仕返しは何十倍にもして返してやるからな!!
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