「ふぅ……」
俺はため息を大きくつくと、窓の外を眺めた。
春の陽射しをいっぱいに浴びた桜の花びらが、気持ちよさそうにそよいでいる。
「はぁ……」
俺はもう一回大きくため息をつくと、鉛筆をノートの上に置いて椅子の背もたれにもたれかかった。
春の陽気っていうやつなのか、なんだかとっても眠い。
大体、何で試験勉強なんかしなきゃいけねーんだ?
まぁ、『明日の試験、赤点とった者は補習だから覚悟しろよ』何て言われたから、仕方なくしてるわけなんだが。
まったく……『冗談はヨシオくん』『冗談顔だけにしろよな』って感じだ。
俺はこんなことをしてないで、どこかに遊びに行きたいんだが……
「こらサボり魔!ちゃんと勉強する!!」
すかさず、怒ってるんだか褒めてるんだかわからない声が飛んでくる。
「そんなこと言ってもさぁ、姉さん……」
俺は顔を後ろに反らし、微笑を携えている従姉を見ながら反論した。
「口を動かす暇があったら、手を動かす。それにダメじゃない。そんな格好で勉強しちゃ?メッ!」
姉さんは腕組しながら、悪戯っぽく笑った表情で俺をジッと見る。
「へいへい」
これ以上抵抗しても無駄なようだ。
俺は諦めて姿勢を正すと、再び鉛筆を握った。
「そうそう。それでいいのよ」
後ろの方で、姉さんの満足そうな声が聞こえてくる。
こう監視の目が厳しくては、抜け出すことも厳しそうだ。
それにしても……
「姉さん、ちょっと聞いていいかな?」
「なーに?スリーサイズとかだったら答えてあげられないけど」
「そうじゃなくって……どうしてここに姉さんがいるの?」
「それはね、お兄ちゃんに頼まれたから。まぁくんの勉強を見て欲しいって」
「叔父さんに?」
「だってまぁくん、試験の時でもちっとも勉強しないじゃない。だから赤点取らないように家庭教師をしてくれって。お兄ちゃん、とっても心配してたよ?考古学のことが手につかなくなるくらい」
姉さんはおかしそうにクスクスと笑う。
「……………………」
由良叔父さん……余計なことしてくれなくてもいいのに……
まぁわざわざ白雪村からコッチに来てくれたのだから、姉さんにはとても感謝しなくちゃいけないけれど。
でも、新しく開通した新幹線を随分気に入ってるみたいだから、きっと頼まれてなくても俺を監視しに来てたと思うけど……
「はぁ……」
「あー、また溜息ついてる。もぅ、しょうがないなぁ……」
姉さんは、俺が勉強に飽きたと勘違いしたのか、小さく溜息をついた。
まぁ、すぐに勘違いするのは姉さんの悪い癖なんだが……ひょっとしたら休めるかも。
「まぁくん、コッチ向いて」
「なんだい、姉さん……んっ!?」
振り向いた瞬間、俺の目の前に姉さんの顔のどアップが現れた。
唇に、何か柔らかく温かいものが触れる。
えっ?な、なんだ??
俺の唇に触れてるのって……姉さんの、唇?
「んっ……」
姉さんは唇を離すと、恥ずかしそうに笑った。
「ね、姉さん!?」
俺は驚きのあまり、言葉を失ってしまう。
俺は今……姉さんとキスを……したんだよ……な……
心臓が張り裂けそうなほどバクバクと高鳴っている。
唇には、姉さんの唇の感触と温もりが。
お、俺……俺は……
「ひょっとして、初めてのキスだった?」
「えっ!?」
俺は姉さんの言葉に、金縛りが解けたかのように、我に返った。
「ね、姉さん!!」
俺は慌てて立ち上がる。
「クスッ……」
姉さんは笑うと、再び俺にキスをしてきた。
「!?」
俺はそのまま固まってしまう。
心地よい感触。
優しい温もり。
俺には姉さんから離れることが出来なかった。
自然に瞳が閉じていく。
「んんっ……」
すると、姉さんの舌が、俺の口をこじ開けるように侵入してきた。
「はんぅ……」
姉さんの舌は、俺の口の中で暴れながら、執拗に俺の舌に絡み付いてくる。
「んぅ……」
くすぐったい。それでいて気持ちがいい。
俺も夢中で舌を絡めた。
ちゅぱ、ちゅぱ
俺と姉さんの唾液を絡ませあう音が、部屋中にいやらしく響き渡る。
まるで溶けてしまいそうな、気持ちのいい感触が俺を包みこんでいく。
姉さんの吐息が顔にかかるたびに、俺の気分はさらに昂揚していった。
「ぷはぁっ」
姉さんは突然舌を引き抜き、唇を離した。
糸のように伸びた唾液が、床へと垂れ堕ちていく。
「気持ちよかった?」
「う、うん……」
俺は思わず、正直に頷いてしまう。
「そう……それじゃあ『試験勉強』はヤメにして、お姉ちゃんと『大人の勉強』しましょうか?」
姉さんは意味深なことを言うと、突然服を脱ぎだした。