「恵……」
 俺は恵の唇に、静かに自分の唇を重ね合わせた。
「…………」
 恵は瞳を閉じてそれを受け入れる。
 もちろん、こんなことでは満足しない。
 俺は舌をねじ込んだ。
 そして恵の唾液をゆっくり味わうかのように、舌を絡ませる。
 だんだんと恵の体から力が抜けていった。
 調子にのって俺は指を恵の股へと這わせた。
 そして水着の中に滑り込ませ、密壷へと侵入させる。
 ビクッ!!
 恵は一瞬身を強張らせるが、さして抵抗する様子もない。
 それじゃあ、軽くイッてもらおっかな。
 俺はゆっくり指を動かした。
 途中でクリ○リスをかまってみたりする。
「!!」
 恵の息遣いがだんだんと激しいものになっていった。
 高鳴っていく鼓動が俺にも伝わってくる。
 そして――
 ビクッ!!
 激しい痙攣。
 イッたな……
 俺はそう確信すると入れてた指をひき抜いた。
 そして同時に唇を離す。
 出来あがる唾液の掛け橋。
 指には白くねっとりしたものがまとわりついている。
「恵ってエッチなんだな。こんなにオモラシしちゃって」
 わざとらしく俺は恵の目の前にそれを突き出して見せる。
 恍惚の表情を浮かべていた恵は困ったように下を向いてしまった。
「ほら、ダメだろ?自分のなんだから、ちゃんと味わないと」
 俺はそんな恵の顔を上げると、指を恵の口の中へとねじ込んだ。
 恵はためらっていたが、やがてしゃぶるように俺の指に舌を這わせる。
「よしよし、よくできた。それじゃあご褒美をやろう」
 俺はズボンをおろすと、自分のいきり勃つ肉棒をとりだした。
 一瞬、恵の顔が恐怖でひきつる。
「大丈夫だって。痛いのは一瞬だけなんだから」
 ……こくん
 俺がそう言うと、恵は意を決して小さく頷いた。
「それじゃあ恵、入れるぞ」
 ベッドに仰向けになった恵の水着をずらして、静かに静かに入れていく。
 ズブブブブ……
 思っていたよりも狭く、抵抗するかのようにどんどん締めつけてくる。
 挿入していくとやがて何かに突き当たった。
「恵……いくぞ」
 こくん
 恵はギュッと目を瞑った。
 俺は腰に少し力をこめた。
 何かを突き破る感覚。
 恵の表情がとても痛々しいものにかわる。
「恵!!」
 俺は勢いよく腰を振り始めた。
 恵は必死でそれを耐えるかのように歯を食いしばる。
 小刻みに揺れる胸。
 流れ落ちる涙。
 締め付けがどんどん酷くなっていく。
 もぅ、限界だ。
「くっ!!」
 俺は肉棒を引き抜くと、恵に向かって勢いよく精液を発射した。
 白く、ネバネバしたものが恵の顔を、水着を汚していく。
「はぁはぁはぁ……」
 俺は肩で息をしながらたった今合体を果たした少女の姿を確認した。
 恵は呼吸を荒げながら静かに横になっている。
 秘部からは処女の証である鮮血が流れ出していた。
 俺はその恵の横に同じように寝そべった。
「よく頑張ったな恵。偉いぞ」
 こくこく
 恵は恥ずかしそうに頷く。
 そしてスケッチブックを取って何かを書きこんだ。
「どうした、恵?」
『あのね』
『パリパリするの』
「パリパリ?」
 こくん
 恵は頷く。
「ははは。それじゃあ、お風呂に行って洗い流して来るか?」
 ……こくん
 俺が恵の頭を撫でてやると、恵は小さく頷いた。

「……………………」
 俺は無言のまま、原稿をテーブルの上に置いた。
「ど、どうだった?」
 小雪は真剣な表情で、俺のことを見つめている。
 この場合の小雪の気持ちを、俺はどう取ればいいのだろうか?
 批評を待ってる?それとも誘ってる?
 ……おそらく前者だろうなぁ……
 いくら突拍子もない行動を取るのが得意な小雪だからって、いきなりこんな回りくどい真似はしてこないだろうし……
 しかし……
「……なぁ、ひとつ聞いてもいいか?」
「なぁに?」
「……なんで、俺にこんな作品を読ませるんだ?」
「そんなの決まってるじゃない。それは、古閑くんが人を感動させるような魅力のある文章を書ける人だからよ」
「……でも、だからって官能小説はないんじゃないか?」
「なんで?権威ある賞を取ってる人達のほとんどは、それに近いような、あるいはまったく同じ作品書いてるわよ?」
 基準はそこかよ。
 まったく、小雪の高望み思考には困ったものだ。
 俺は空になった小雪の湯飲みにお茶を注いで、小雪を見た。
「……もうひとつ聞いていいか?」
「なによ?」
「お前……その、なんだ……」
「?」
「だ、だから……その……」
 コホンとひとつ咳払い。そして言葉を続ける。
「だから……ここに書かれてるようなこと、経験したことある……とか?」
「ま、まさか!!」
 小雪は顔を真っ赤にして、ブンブンと首を横に振る。
「あくまで創作よ!!経験あるわけないじゃない!!第一、経験したことが全てだって言うなら、サスペンス物書く人はみんな人殺したことあるってことになるじゃないのよ!!」
 小雪はやけに興奮しながら一気にまくし立てると、湯飲みに入ってるお茶を一気に飲み干した。
「わかった。わかったから落ち着けって」
 俺は一応なだめながら、原稿をぺらぺらとめくる。
「それにしても、リアリティにかけるような気がするな。誤字脱字も多いし」
「例えば?」
「この最初のところ。いくら演劇の練習だからって、いきなり体操着姿になったり水着姿になったりするのは、かなり無理あるような気がするんだが……」
「ふーん……例えば、こんな風に?」
 小雪は突然立ち上がるや、いきなり服を脱ぎ始めた。
「お、おい小雪!?」
 俺は慌てて目をそらす。
「目を反らさなくっても大丈夫よ」
 小雪の笑う声が耳に飛び込んでくる。
 俺は恐る恐る小雪を見た。すると――
「どう?」
 なんと小雪は、紺のスクール水着姿になっていた。
「これで無理がなくなったわよね?」
 小雪は勝ち誇ったように、腕組みしながら言う。
 こいつ……無理やり既成事実に変えやがった。
 まぁ、そんな強引なところが小雪の魅力ではあるんだが。
「わかったわかった」
 俺は潔く負けを認める。
「わかればよろし…………い!?」
 突然、小雪が態度を豹変させた。
 今まで落ち着き払っていたものが、どことなくそわそわと落ち着きないものになる。
「どうしたんだ?」
「ご、ゴメン……ちょっと、お手洗い借りるね」
 小雪は俺に断わりを入れると、そそくさと部屋を出ていく。
 どうやら薬が効いてきたようだ。
 と、なると……
 俺はしばらく原稿の続きを読み漁ることにした。


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