ボクと夕鈴ちゃんの甘い生活が引き裂かれてからもう2年以上が経つのか……
月が流れるのは、なんて早いんだろうと実感してしまう。
あの日、日記をつけ終わったボクがベッドで寝ていると警察官の人がボクの部屋に入り込んできた。
そしてボクを捕まえて、警察署に連行したのだ。
ボクは何にも悪いことはしてないのに、どうしてこんな扱いを受けなければいけないのだろうかという憤りを覚えた。
明らかに冤罪だ。
善良な市民にこんなことするなんて、警察なんて絶対に許してやるもんか。
でも、ボクにはどうすることもできなった。
その後、警察官や検事さんの恫喝にも似た取調べを受けて、ボクは裁判を受けることになった。
結果は無罪。
なんでも精神病にかかっているとか言うことで、ボクはそのまま鉄格子のついた病院に入れられることになったのだ。
それからというもの、地獄の日々が続いた。
ベッドに縛り付けられ、身動きが取れない毎日。
ボクは動物じゃないんだぞ!!と、いくら抗議をしても受け付けてもらえなかった。
大体、ボクは精神病患者なんかじゃないんだ!!
こんな扱いを受けること自体間違ってる!!
でも、どうやらここでは反抗的な態度をとるとダメらしいので、ボクは一計を案じることにした。
わざといい子ぶって、はやくここから抜け出そうと考えたのだ。
最初のころは病院の人達も信用してなかったけど、時間が経つに連れてボクのことを信用していくようになっていった。
バカなやつめ。人を騙すなんて簡単だ。
そして2年以上が過ぎた今日、ようやく外泊が許されたのだ。
今日家に泊まったら、また明日は病院に戻らなければならない。
でも、ここで築き上げた信用を失ってしまうのは今までの努力が全て無駄になってしまうので、今はまだおとなしくしていることにしようと、ボクは決めた。
そしてこうして家に帰ってきたけど、気になることがひとつある。
夕鈴ちゃんのことだ。
ボクと夕鈴ちゃんの仲を引き裂いた警察官を許すことはできないけど、それ以上に夕鈴ちゃんのことが、ボクには心配だった。
部屋を覗いても、夕鈴ちゃんの面影はどこにもなかった。
夕鈴ちゃん、どこに言っちゃったんだろう?
元気に暮らしているのかな?
ボクはサバイバルナイフを持って、夕鈴ちゃんの姿を求めるかのように町の中をさ迷い歩いた。
紅葉がとってもキレイで、秋風が気持ちいい。
そしてボクは、無意識のうちにあの公園へと足を向けた。
夕鈴ちゃんと初めて出会った公園だ。
すると、奇跡というのだろうか。
夕鈴ちゃんがブランコに腰掛けていた。
「夕鈴ちゃん!」
ボクは嬉しさのあまり、夕鈴ちゃんに駆け寄った。
でも夕鈴ちゃんはボクの姿を見るなり、急にこわばった表情を見せて、ガタガタ震えだした。
「どうしたの夕鈴ちゃん?ボクだよ。さ、一緒に帰ろうよ」
「助けて……」
「うん?」
「誰か!!助けて!!」
夕鈴ちゃんは大声を上げながらブランコから立ち上がって駆け出そうとした。
「!!」
ボクはまるで、夕鈴ちゃんに裏切られたような気分になった。
やっぱり失われた時間は大きすぎたんだね……
「誰か!!」
「うるさい!!」
ボクは逃げようとする夕鈴ちゃんを捕まえると、胸に持っていたサバイバルナイフを突き立てた。
「っ!!」
夕鈴ちゃんはそのまま崩れ落ちるように地面へ倒れこむ。
そしてそのまま動かなくなってしまった。
「夕鈴ちゃん?……眠っちゃったのかな。使えねー人形だ」
ボクはそのまま公園を後にすると、家へと戻ってきた。
途中でみかけた女の子、とってもかわいかったなぁ。
夕鈴ちゃんには嫌われちゃったけど、あの女の子とならうまくいきそうなきがする。
また警察が冤罪をでっち上げるかもしれないけど大丈夫。
だってボクは『精神病』とか言うのにかかっているらしいから、裁判で有罪になることも刑務所にはいることもないだろうから。