7月16日

「夕鈴ちゃん♪」
 ボクは微笑みながら夕鈴ちゃんの部屋にはいった。
 夕鈴ちゃんは無言のまま虚空を見つめている。
「最近元気ないようだけど、大丈夫?」
 ボクは夕鈴ちゃんの横に腰掛けると、おもむろに小説のページをめくった。
「夕鈴ちゃんのために、今日はボクが官能小説を読んであげるね♪」
「いいえ、結構です」
 しかし夕鈴ちゃんは、弱々しく否定する。
「なんで?」
「聞きたくありません」
「大丈夫だよ。絶対夕鈴ちゃんも気に入ってくれるって」
 ボクは構わず小説を読み始めた。
「……加奈子の濡れた唇からは淡い吐息が……」
 ……あれ?
 ボクは夕鈴ちゃんを見ると、彼女は静かな寝息を立てながら眠りに落ちていた。
「これからおもしろくなるところだったのに……」
 ボクは本を閉じるとそっと部屋を後にした。
 おやすみ、夕鈴ちゃん。


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