「夕鈴ちゃん♪」
ボクは微笑みながら夕鈴ちゃんの部屋にはいった。
夕鈴ちゃんは無言のまま虚空を見つめている。
「最近元気ないようだけど、大丈夫?」
ボクは夕鈴ちゃんの横に腰掛けると、おもむろに小説のページをめくった。
「夕鈴ちゃんのために、今日はボクが官能小説を読んであげるね♪」
「いいえ、結構です」
しかし夕鈴ちゃんは、弱々しく否定する。
「なんで?」
「聞きたくありません」
「大丈夫だよ。絶対夕鈴ちゃんも気に入ってくれるって」
ボクは構わず小説を読み始めた。
「……加奈子の濡れた唇からは淡い吐息が……」
……あれ?
ボクは夕鈴ちゃんを見ると、彼女は静かな寝息を立てながら眠りに落ちていた。
「これからおもしろくなるところだったのに……」
ボクは本を閉じるとそっと部屋を後にした。
おやすみ、夕鈴ちゃん。