第9話
やせ薬と幸福の写真

「ふぅ、食った食った」
 昼食を終えた慎一は、独り屋上で寝そべっていた。
 まるですいこまれそうな青空が一面に広がっていて、心地よい風が吹き抜ける。
 ボーっとしながら慎一は、先程食べた幼馴染の弁当の味を思い出していた。
 小夜の弁当美味かったなぁ……あーゆー弁当なら毎日食いたいぜ、ホント。
 まぁ、美術部の活動が忙しいらしく、弁当食い終わったらすぐに美術室へ行っちまったのがちょっと残念ではあるが。
 しっかしまぁ、満腹な気分でこーやって寝そべってると、眠くなるよなホント……
 ふわぁ〜……
「バァ!!」
「うぉっ!?」
 突然目の前に現れた顔に、慎一は思わず驚きの声を上げた。
 なんだなんだ一体……
 慎一は混乱する心を落ち着けて、その顔をマジマジと見つめる。
 それはよく見知った後輩、恵理子であった。
「お前……どっから湧いて出てきた?」
「エヘへ……シンシュツキボツ」
 恵理子はしてやったりと笑みを浮かべながら慎一の隣に座る。
 慎一もむくりと起き上がった。
「今の先輩の顔、とっても最高だったよ。写真にとっておけばよかった」
「ヘイヘイ。そりゃどうも。で、今日は一体何のようなんだ?」
「実はね、つばめの極秘情報を持ってきたんだ」
「極秘情報?どんな情報だよ?」
「ソレを言ったら商売にならないよ」
 恵理子は体育すわりをしながら、意味深な笑顔を浮かべる。
 毎度毎度このパターンで騙されているような気がするが、鼻息が荒いところをみると相当重要な情報を握っているようだ。
 まぁ……たまには信用してもいいかな?
 慎一は少しだけ、話に乗ってみることにした。
「今ならオマケもつけるけど。どうする?」
「まぁ、退屈してたところだし、買ってやることにするよ」
「そー言うと思った。じゃ、さっそくお店のほうへレッツらゴー!!」
「えっ!?今からか!?」
「そうだよ」
「でも、授業が……」
「そんなもんサボレばいいじゃない」
「サボレって……」
「まあまあ。たまにはいいじゃない。それに、今の時間じゃないと、デキないことなのよ」
「……ったくしょうがねーなー……」
 慎一は恵理子に連れられるまま、恵理子の店へと向かった。


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