3.夕食

 二人が観光から戻ってきてから程なくして、夕食が部屋へと運ばれてきた。

「うわぁ♪」

 シェラはそれを見て、瞳を輝かせる。

 夕食は松茸をメインとした豪勢なものであった。

 松茸のてんぷら、土瓶蒸し、松茸の焼き物、虹鱒の塩焼き、イナゴの佃煮等々……

 風土をよく表した料理の数々が、そこには置かれている。

「やっぱり旅行に来たときの料理って言えば、各地の名物だよね♪」

「そうね。フランス料理や中華料理は、例え豪勢であってもその土地の土地柄を表してる、とはいえないわ」

「うんうん♪ところでイリス。この緑色の粉みたいなの、何かな?」

「それは塩よ。そのおっきな松茸焼いて、それにつけて食べるのよ」

「そうなの?」

 シェラは恐る恐るその緑色の粉を指先につけ、なめてみる。

 塩辛い味が舌先を刺激した。

「しょっぱ!!ホントだぁ」

「あまりつけすぎるとしょっぱくしか感じないから、ほどほどにしておくことね」

「うん。それじゃあいっただっきまーす!」

 シェラは夢中で料理に箸をつけはじめた。

「うん!オイシー!!」

「そんなに慌てなくっても料理は逃げたりしないわよ」

「そうなんだけどさぁ。これならご飯が何杯も食べられそう♪」

「あら?そんなに食べたら太るわよ?」

「大丈夫だよ。温泉に入ったり運動して太らないようにするから」

「ホントかしら?」

「ホントだもん。ああっ、このおっきな松茸、とってもおいしい……輸入物じゃないんだよね?」

「ええ。地元で取れた松茸らしいわね」

「うんうん。おいしいおいしい」

 シェラは幸せいっぱいの微笑を浮かべながら料理を食べる。

「おいしい料理を食べて温泉につかる。これ以上の贅沢ってないよね♪」

「そうね」

「温泉って言えば、ここの温泉露天風呂なんだよね?」

「ええ。あたし達二人だけの貸切よ」

「へぇ?そうなんだ?じゃあゆっくり入ることできるね」

「そうね。夜の闇に浮かぶ紅葉、って言うのもなかなか風流があるわよ」

「楽しみだなぁ……」

 シェラは温泉に思いをはせながら、楽しい夕食の一時を満喫するのであった。



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