その日の四阿家の食卓は、いつにもまして豪勢なものになっていた。
様々な料理がテーブルの上にドドンと置かれ、その様子をニーナが目を輝かせながら見ている。
「それにしても、今回は百合ちゃんに迷惑かけちゃたわね。ゴメンね」
「いいんですよ。ニーナさんが元気になってくだされば」
百合もちょっと引きつった笑いを浮かべながらニーナを見た。
これらの料理は、ニーナの快気祝というわけではなかった。
「でもまぁ、百合ちゃんなかなかやるじゃない。悪を断罪しつつ赤羽にスクープ取らせるなんて」
「クスッ。三森ちゃんあの後『怪盗黒薔薇に塩を贈られたようで、納得できないわっ!!』って怒ってましたけどね」
「あはは。確かに赤羽だったら言いそうね」
ニーナもその光景を想像して、思わず吹き出してしまった。
あの後、三森と通を上手いこと社長室へと誘導した百合は、彼女達に絶好のスクープを与えることに成功した。
しかし、三森はそれが怪盗黒薔薇の力を借りてと言うことになった結果が非常におもしろくないらしく、以前にもまして打倒怪盗黒薔薇の決意を心に誓っているようであった。
「それじゃあ、いっただっきまーす」
「いただきます」
ニーナと百合はそう挨拶をすると、それぞれ料理に箸をつけていった。
「うーん、おっいしー!!」
「……でも、これで本当に痩せられるんですか?」
半信半疑の百合が、ニーナにそう聞いた。
「大丈夫だって。朝昼を極力押さえて、夜好きなだけ食べる。そうすることで新陳代謝がバランスよくなって、すっごく痩せやすくなるんだって」
ニーナは嬉しそうに物凄い勢いで料理を食べていく。
「こっちの方がよっぽど魔法みたいです……」
百合は呆れながらそう呟いたが、ニーナの耳に届くことはなかった。
「あぁ!!好きな物好きなだけ食べることが出来て、しかも痩せられるなんて、もぉ幸せっ!!」
そしてニーナはたい焼きを口に入れながら、至福の表情を浮かべるのであった。