「ただいまー……」
ニーナが四阿家に帰宅したのは、既に陽が落ち夜空に月と星が浮かんでいる時分であった。
キッチンに行くと、パジャマ姿の百合が夕食を作っていた。
「あ、お帰りなさいニーナさん。遅かったですね」
「うん、いろいろあってね」
ニーナは指をパチンと鳴らし、変身を解除して元の姿へと戻る。
そして椅子に腰掛け、テーブルに突っ伏した。
「百合ちゃんは起きてて大丈夫なの?」
「はい。おかげさまで大分よくなりました」
「そう。それはよかったわ。あたしも頑張った甲斐があったわ」
「えっ?」
「なんでもないから、気にしないで」
「は、はぁ……」
ニーナの言葉に百合は首をかしげる。
そして、コンロの火を止めると、上に乗っていた土鍋を持ち、そのままテーブルの上においてあった鍋敷きの上へと置いた。
そして鍋のふたを開ける。
「はい。たまご雑炊です」
「うわぁーおいしそう」
ニーナは身を起こし、鍋の中を確認した。
「ああ神様仏様百合女神様。汚れてしまったあたしの身を、清いお米で浄化してください。アーメン」
そして天に向かって、祈りを捧げるポーズを作る。
「やっぱり、何かあったんですか!?」
「それはチミ、明日学校に行ってからのお楽しみだよ。むふふ」
ニーナは悪戯っぽく笑って、指をチッチッと左右に振る。
「そんなこと言われると、すごく怖いんですけど……」
百合は茶碗とレンゲをテーブルの上に置いて、椅子に座った。
「それじゃあ食べましょうか。いただきます」
「いただきまーす」
そして二人は雑炊をお椀にとり、夕食を食べた。
そして翌日――
高校に登校した百合は、昨日ニーナが起こした行動をすべて把握して、頭を抱えることになるのであった。