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ちょっと所じゃなく変更した

皆様こんばんは!
GNOの興奮が冷めやらぬままちょっと所じゃなく追加してしまったみやももが完成しましたので。
向こうでは埋め立てエラーが出てしまうので一旦ここで全文掲載。この後HP用に編集します。
馬鹿みたいにみやもも愛が長い(原稿用紙28枚分)ので興味が無きゃそっとじして下さいね。

みやももを無性に書いてみたくなってしまった
雅ちゃんが水着ショックから立ち直る頃だろうけど箸休めにどうぞ


Bershkaの展示会終わりで事務所に出勤。
熊井ちゃんもお昼頃来てたよーってBershkaのスタッフさんに言われて、
会えなかったのはちょっと残念だったけど色々オーダーしてきたから疲れてるけど気分は良い。
そんな事を思ってたら事務所で茉麻とイベントの打ち合わせと工作をしていた。
なるほどー、それで早く行ってたのかと納得した。

「えっ?嘘、もうそんな時間!?やばい!」

ってクマクマしてきてたのでオロCとクッキーを差し入れた。
素直にモグモグ食べてくれた熊井ちゃんはやっぱり可愛い妹だ。
茉麻の目が輝いていたので、茉麻が元気になるならと満足するまで触らせた。

「えー?この後LIVEのリハなの!?相変わらずタフだねー」
ってさっき廊下で帰りがけのしみちゃんにも笑われたけどまあ仕方ないよね。
あっちで時差ボケしないようにって生活リズムを少し変えたから。
しみちゃんもつばきのデビュー準備で最近特に忙しくしてて。
たまーにしか遊んでくれないのはちょっと寂しいけど、
一生懸命で楽しそうにしてて嬉しいよって言ったら、
落ち着いたら皆でご飯また行こうねーって笑ってくれた。

いつまで経ってもどこまでいってもやっぱり優しいキャプテンで安心する。

GNOやってるってせいもあるけど自分にとっても可愛い事務所の後輩ちゃん達、
カントリーも勿論だし、こぶしにもつばきにも頑張って欲しいもんね。


で、肝心のあの人はと言うと。
6月に向けて、相変わらずのハードスケジュール。
千奈美じゃないけど、大事な嗣永の最後の最後にフライデーだとかそういうのは、
たとえ相手が夏焼であってもファンの皆さんの心臓にも後輩達にも悪いし、
PINK CRES.にとってもこれからが大事な時期なんだから、
お前達はもう大人だけど流石に勘弁して欲しいので、
外では自重するようにって事務所にも散々言われて。

失礼な。まだ何もしていない、とは思ったけど正論なので受け入れるしかなかった。

おかげで今では事務所じゃなきゃ安心して会えないし。
まあ顔見るだけで一気に疲れなんて吹っ飛ぶから、
こっちはどこだろうと気にならないけど。

事務所の一室をそっと開けると小さくてピンク色な塊が机に突っ伏していた。
結構な量がありそうな書き物は一応終わったのか、机の端にしっかりと整頓されていた。
タワレコのイベ後にこれって。うーん、今日は相当疲れてるなこの人。
あ。こっち向いた。ペンギンみたいに近づいてくる。

「はぁーぃ。ももー、生きてるー?」
「もう少しで寂し死にする所でした!遅いよみやぁーー!」

うおっ。凄い衝撃。タックルを抱き止めて背中をよしよししてあげると笑ってくれた。
勿論抱きつかれて悪い気はしないけど笑ってくれる方が嬉しいからね。

「んっ!?みや、なんかけもけもしてるね今日の服」
「さっきまで展示会行ってたからねー。ほらカイロ」
「ちょっとぉ、けもけもが口に入っちゃうじゃん。……んーー、温かい」

見るからに顔色が悪いからほっぺにギューって押し付けて、あげた。
今迄ありがとうカイロさん、次はももを温めてあげて下さい。

「てか今日って一人収録だっけ?いつものお子ちゃま達は帰ったの?」
「んー、皆は今別室でもも抜きでの取材中。ももは梨沙ちゃんが戻って来たら次の打ち合わせ」
「そっか。一緒に帰れそう?」
「深夜の生放送だし、多分戻ってくるの遅くなっちゃうよ?」
「待ってるって。こっちもLIVE前だし、来るまで個人練習してるから」
「……ほぉーぃ、じゃあももちゃんも頑張ってくるねー、うふふっ」
「何その顔、やめなよー。嬉しいなら普通に笑いな」
「だってー。フフフー」

お互いまだ時間があるから、とソファーに並んで座る。
手触りが案外気に入ったのかさっきから腕のけもけもを撫でてくる。
うん、今日はこれ着てきて良かった。

「そうだ!ジャーン!見てー、可愛いでしょ?」
「おー。何今日のネイル、右と左で違うの?みやは相変わらずお洒落な事するね~」

自分自身が普段着飾るのは邪魔っていつもバッサリ言うこの人だけど、
人がコーデだとかメイクとか女子っぽい事を存分に楽しんでいるのを否定することはしない。
昔からそう。面倒だしももには似合わないから、みやを見てるだけで十分って、そういう空気。
ま、こういうのは押し付けるもんでもないし?

「そう。この間行きたいって言ってたSPARKでやってきたの。
 一面ピンク色のお店で可愛かったよ?ほら」

店内とフォトスペースとかで撮ってきた沢山の写真をももに見せる。

「どれどれ?」

左手で画面をスライドさせてはその時の事を話すたびにももの表情がコロコロ変わる。
自分ではしないと言ってもみやのする事は嫌いじゃない。
そう言われてる気分になって何だかくすぐったい。

「それにしても、また桃のデザイン入れちゃったの?みやは本当ももの事が好きだね~」
「違うから、ただのハートだし」

ニヤニヤとしながらももが左手薬指のネイルをツンツンしてくる。ハートだっての。
この相変わらずのやり取りをする為にたまーに入れてるってのは多分バレてる。
しょうがない。ももにそう言われると耐えようとは思うんだけどつい笑っちゃう。
これがみやの普通。

「てかそれより!ももの方こそ最近爪のお手入れしてないでしょ。見せなさい!」
「えー。良いよぉ。ももちゃんだって爪切り位ちゃんとやってるもーん」

ドタバタとしながらももの二の腕を捕まえる。うん、筋肉は相変わらず。
Berryzの時程ハードじゃないけど、カントリーでも踊ってるもんね。
隣に居た時はじっくり見られなかったけど、
今のももの優しくて柔らかいダンス、実は結構気に入ってる。

「やっぱり」

眉間に皺が出来てるんじゃないかって程には盛大に溜息をついてしまった。
半ば強引にももの右手を掴んだら、所々爪先が直線的になっていた。
爪を切ったら整えてから磨きなさいって言ったのに……
そこはもう面倒くさくなったのか。
ももらしいけどさ。

「みや、顔が怖い」
「元々こういう顔です」

観念して大人しくなった相変わらず小さいももの手を取って、
小振りな爪を一つ一つ見ては付け根をなぞってチェックする。
本人曰く「可愛いおてて!」なんだそうだけど。
おっ。ももにしては偉い。
前に教えた甘皮処理はそれなりにやってあって、ちょっと感動したかも。

「みーやぁー。もう良いじゃなーい。はーなーしーてーよー」
「だーめっ」

パッと見ても抱きしめてても随分痩せたなーとは分かっていたけど、
いつの間にか大人の手になってる。そう思った。
案の定、爪にはうっすらと縦の線が入ってた。
前にみやがしてあげたのはカウントダウンの時だったから、大体2ヶ月前。
全く、忙しいと言っては手入れをサボるんだから。
心配させないように絶対に言ってはくれないけど、だいぶ無理してるんだろう。
今更そんなとこでお姉さんぶらなくて良いってのに。


「決めた。今日はももをチューニングします」
「は?ちょっと、みや!?」

この間写真集の為です!と渋る事務所に半ば無理矢理経費扱いにさせて、
MoalaniWaxさんに連れて行った時はほぼスタッフさん任せだったし。
いや、みやだって本当は他人に任せたくなかったんだよ!?
でも一生残る写真集だし、どうせならプロに託して綺麗なももを見たい訳で。
折角だからどこに出しても恥ずかしくないももを撮らせてあげたかったんだもん。
嫌だけど、ももの仕事に対するプライドを否定するのはもっと嫌!って。
自分自身を納得させるのには協力すれば良いって思ってたけど相当時間が掛かった。

みやが全部やってあげようかー?って言ったら
「みやになんて無理無理絶対に無理」と全力で拒否されましたが、
脱毛の説明書を熊井ちゃん並みに熟読した後、
試しにとやった背中だけで真っ赤になったももが見れたので良しとしました。


「……あの日のももの事も一生忘れないと思います」
「何の話だよ!っちょっ、ほんと、待って、みや、ギブギブ!苦しい、苦しいっ!」

おっと、無意識に全力で抱きしめてしまった。
これでは舞美の事は言ってられない。

「ゴメンもも。いやー、昔は可愛かったなーって思って。つい」

抱擁という名の束縛をふわりと解いて、ポンポンと頭を撫でる。

「ちょっと!過去形にしないの!常に可愛いのにー」
「分かった分かった」

「いーや、みやは絶対分かってない!」
「分かってないのはももの方」
「どういう事よ」

こっちも数日間イベントでタイに行くし、帰って来たらレコーディングだって控えてる。
もも達もLIVEに新曲と写真集のプロモーションできっと想像以上に暫くは逢えなくなる。
お互い何にも言わないけど、こうしてる時間が幸せだから大切にしたいってのに。

「ねぇ、もーも。ももの今のお仕事はなぁーに?」

ももの顎を指で上に向かせてとびっきりの笑顔で質問する。
近いよみやという可愛い抗議は残念ですが聞こえませんでした。

「ぅー……ももちこと皆のアイドル、嗣永桃子です」
「そう。分かってるならよろしい」
「わっ」

テンプレ回答と、半分条件反射になってるももの高速まばたきとアイドルスマイルを無視して
後ろから羽交い絞めにした。ももにはちょっと位強引な方が丁度良いでしょ?
ももの鎖骨に後ろから両手を回すと必然と腕に柔らかい感触が当たる。
‥‥‥‥悔しくなんかないよ、これはみやのものにするんだし。

「もー、みやってばどこ触ってんのー」
「えっ?どこの事?てかそっちの方こそ体重かけないでくれる?」

ニヤニヤすんな、あと重いーって笑いながら、ももの髪を右手で梳かす。
そっと重ねられた左手同士がどっちの体温なのか分からない位温かかった。

一度も染めてないこの髪、ももち結びばっかりで2年前迄ちょっと傷んでたこの髪。
いつかで良いから長く伸ばしてみて欲しいなって思ってたのはかなり前。
伸ばしてみたら量は多いし寝癖はつくしで、思い通りにいかないって言うけど。
吸い込まれそうな程黒くて綺麗。本当、嫌になる程ももそっくり。

「もも」
「んー?」
「もも」
「どした?」
「髪、伸びたねー」

真っ直ぐな黒髪を指にクルクルと巻き付ける。
もういくらみやが触っても怒るって事は無くなったけど、
あの髪型してる間は何故か変なのがももに寄って来なかったから実は少しだけ未練がある。
今はスプレーじゃなくフワッてももの香りがするし、まあ許してやるか。

「もぉの髪、結構綺麗になったでしょ?」
「まあね。筋肉結びしてないから傷んでないわ」
「ももち結びだってーの、もうっ!」
「そうだったっけ?ふふっ。ごめんごめん」
「もー!心がこもってなーい」
「バレたか」
「バカヤロー」

馬鹿みたいにふざけて、ひとしきり笑ったら落ち着いた気がした。

「……本当はさ、やっぱりちょっと嫌」
「ん?」

顔を見られたくなくておでこをももの肩にくっ付ける。
ももの香りが少しだけ変わった気がする。
このままみやの香りが移っちゃえば良いのに。

「写真集。今更ウチが言うのもおかしいけど」
「あー。みやは拒否派だったもんねー」
「ももは結構出してたからさ…、結構ノリノリっていうか。賛成派なの?」
「んー、そう言う訳じゃないけど。ただ、お仕事だからね。
 やるからには全力で取り組まないとファンの皆さんにもスタッフさんにも失礼でしょ」
「それはそう。そう、なんだけどさ」

見せたくないって気持ち分かんないかな、ももは本当に自分が大好きだし。

「みやの写真、すっごく綺麗だし好きだけどなぁー」
「…ありがと」
「ももにはない色気があるなーとか、良い太ももだなーとか、可愛いなーとか、
 やっぱりこの顔が好きだなーとかってさ色々知らないみやが一杯見れて楽しくなる」

確かに内容もだけど収録順番だとか、自分が居ない時のももの表情も気になる。
知らない他人には見せたくないけど、見たい自分が居るのもまた事実で。
やっぱり事務所のやり方にどこか納得いってない身としては、
何でももばっかり脱がされてるんだっていつも思ってて。

「みやにだってももの写真集あげてたからさ、結局まあ、一応でも見るわけじゃん?
 可愛いなーとか、セクシーだなーとか、あ、この景色良いなーとか色々思ったりして結構楽しいでしょ?
 ちょっと……まさか、全然しないとは言わせないからね?」

「そう。景色は良かった。ももは…うん、頑張ってたのは伝わってきた」
「ちょっと!ももの努力が色々台無しだよ!ビックリするわー」

確かに、ももの写真集は可愛い。コンパクトなのに出る所は出てるし。
みやには絶対無理って感じもする時もあるし。
可愛いんだけど、そこまで見せなくてもって普通思うじゃん!?
Berryzの時自分も際どい写真を撮られた身としては気が気ではない訳で。
スタッフさんの注文以上にやりきってしまう人だから、尊敬もしてる。

「ゴメン、冗談だって。忘れて」

つい、深呼吸してしまった。

「そんな顔しなーいの」
「見えてないくせに」
「見なくたって分かるよ、みやの事はいつも見てるんだから」
「……みやだってそうだよ」

ギュッて右手を握られた。知らない間に自分の手が冷たくなってたのか、
ももの手はカイロ以上の暖かさで、いつも通り優しくて、苦しくて泣きたくなる。

「そーだなぁ、こーんな面倒くさいももちなんかにどうしょうもない程に関わって、
 どうしようもない位に好きになってくれる人の事を信じてるし。
 おとももちな皆さんにとっての伝説になる時まで待っててくれるんでしょ?
 ううん、それ以上に、その人がずーっとももの事をももよりも愛しててくれるならそれで良いし。
 ももはまだ今日も可愛らしい皆のアイドルなんだもん、難しく考える事なんて無いの」

なにそれ。そんな事言われたら何にも言えないでしょ。

「はぁ……大人だわ、やっぱり、ムカつく」
「なーに、溜息なんかついちゃて。……ももの事、好きになっちゃった?」
「知りません」

毎日のように「みやはももの事が本当に好きだねー」なんて笑顔で言われ続けて、イライラして、
最初からそうなのにって勢いで伝えるなんて――なんて、マジあり得ない。
まだ駄目だって言うから。最後の最後に言ってあげようとは思ってるけど。
我慢出来るかなんて、15年間も待ってるみやには余裕なんだからね。


「…はー。デレびちゃんを待つだけじゃももちゃん辛いわぁー」
「馬鹿じゃないの、本当。悪い物でも食べたんでしょ?」
「お互い様だよ」
「うっさい。もー!忘れる所だった、ももの爪!」
「うわー。忘れなかったかー」

変に甘くなった空気をいつもの様に無かった事にする。
それでももうちょっとももに触れていたいだけだから、どうか、許して欲しい。

「いい加減観念しなさい。ネイルでもしてあげようか?」
「やぁーだー、塗るのはしたくないでーす」
「……みやの好きな色でも?」
「駄目、まだ駄目だもん。そんなの、みやだって分かってるくせにさぁ」

そっと左の薬指を握られた。回答は分かってるのに聞いたみやが悪いんだけど。
ごめんね、って伝わってくる程には優しくて。

「まだみやに染まる訳にはいかないよ」
「…なっ」

でもそれ、いつかみやに染め上げて欲しいって言ってるのと同じだよ、もも。
もし目の届かないところで、ももが今までして来なかったことを急にされても面白くないし。
ついにももが色気付いたー!とかなんとかって何故かウチが皆に突っ込まれるのも困るけど。
なにより嬉しすぎてこれは。さっきは堪えたのに。マジで、ヤバい。

気付いたら肩に顔を埋めて抱きしめてた。
今顔見られてなくて良かった。
見られてもチークだって言い張るけど、熱いわほっぺた。本当、ももの馬鹿。

「……ちょっとー、なんか言ってよー。黙られるとももも恥ずかしいじゃんか」
「うっさい」
「ほれほれ、言いなさいよツンデレ雅ー」

「そっちがその気ならまだ言わない」
「ちぇー」

言ったら言ったでまだ駄目だよって拒絶するくせに。
本当、どっちがツンデレなんだか。ん?この場合デレツン?どっちでも良いけど。

「じゃあ、磨く位はみやにさせて?すぐ終わるし。その位なら良いでしょ?」
「……ほぉーい」

顔を傾けてそっと耳元で囁くとビクッて肩が跳ねた。
なんか言えって言ったのはそっちの方でしょうに。
ちょっとだけ拗ねた顔しながら、嬉しそうに両手を広げてくる。
名残惜しいけど預けっぱなしにされてるももの体重を押し返して、
ポーチからハンドクリームとネイルオイル、それと爪磨き用のシャイナーを取り出す。

「ほら、手貸して」

パイプ椅子を持って来て、向かい合わせになったももの手を取る。

「本当ほっとくと女の子らしい事なーんにもしないんだから」
「良いのー、ももちゃんは生まれ持った良さだけで十分可愛いから」

ウィンクしてるつもりらしいけど相変わらず出来てないで、両目が閉じてる。
残念、それ子供っぽくて可愛いから本当やめて。言わないけど。

「はいはい。相変わらずウィンク出来てないし」

くすくすと笑って、丁寧にハンドクリームをその小さい手に揉み込んでいく。
本当はお風呂とかお湯でじっくりふやかしてからのが良いんだけど。

「どうもももはそこまでしなくてもーって思っちゃうんだよね」
「だーめ。手入れを怠ったらいくらももさんでも劣化するんだから。
 大人しくやられてなさい」
「はぁーい」

ちょっとゴツゴツしてるし小さいけど、スベスベしてて気持ち良い。
うん、中々の仕上がりと満足して、シャイナーに持ち替える。

「これでよし、っと。磨くねー」

シュッ…シュッと爪先をゆっくり削って一本一本形を整えていく。

表面は少しずつ撫でるように優しく磨いていく。
暫くすると少し段差が出てきていた爪が滑らかになって輝いていく。
手をかけるほど綺麗になっていく、この感覚が結構好き。


「……ふぁ」

夢中になってた作業を止めて見上げると、
ほんのり体温が上がってるのか眠そうになってるももが視界に広がった。

「もも?眠いの?」
「んー。ちょっとだけ」

言いかけて磨き途中の手でそのまま目を擦りそうになってたから慌てて止めた。

「ストップストップ。目、痛くなっちゃうよ」
「ぅー」

「楽にしてて良いよ?なんならやってる間に少し寝てな」
「でも、本当に寝ちゃいそう」
「その為の休憩時間でしょ」
「みやが居るのに。…勿体ないよ」
「ウチの事は良いから。ほら、手だけ出して、横になりな」

相当眠かったのか言う通りにソファーに寝転がってくれた。
持ってきてたストールを広げて、既に丸くなってるももを包む。
眠くなると途端に素直になるというか、
子供の時から変わらないその仕草にくすぐったくなる。
赤ちゃんみたいにフワフワしてるって表現がピッタリだ。

「よしよし、良い子良い子」
「んぅー。前髪はやめてよぉー」
「良いじゃない、ももの眉毛好きなんだから」
「だめだってば。セットするの、めんどい」
「……その位はやりなさい」

駄々っ子の様なももに苦笑いして4本目の磨きに戻る。
右手が全部終わった所で目が合った。

「みやー」
「なに?」
「なんか、歌って」
「えぇ?ここで?磨きながら歌えっての?」
「練習代わりで良いからさー。……みやの歌、聞いたら寝れるから」
「ったく。しょーがないな」

ウチも寝付くの早い方だけど、ももは最近特に早い。
仕事が無ければいつも早めに寝る人が今日は深夜まで頑張らなきゃなんだから、
休ませたいこっちとしてもすぐ寝てくれた方が助かる。
ももの前で歌うの、久しぶりだなーとか思いながら
口にしたのは今年一番歌ってる曲――


『光り指すカーテンの隙間 鳥が歌う朝に

 アラームを消して隣で眠る頬に Kissing now』

「……」

ん?なんかももの口動いたのかな?って思ったけど
アカペラと爪磨きで頭が一杯で途中で止める事は出来なかった。

『あなたと出会うまで愛なんて信じてなかった

 でも不思議だね ナチュラルにありのままでいれる人

 疑いようのないくらい I fall in love with you

これが最後の恋にしたいよ』


「………うん。みやの、声、優しくて、す…き」

「ぇ?」

聞き返したかったけど、あっという間にすぅすぅと規則正しくて小さい寝息が耳に届く。
まだサビまで行ってないんですけど。

「ももー?……寝ちゃったか」

いつ見ても本当に騒いでいたさっきまでと同じ人なのかって疑いたくなる位整った寝顔。
どうしようか迷ったけど聞こえてなくても、夢で続きを聞いててくれれば良いか。
そう思ってさっきみたいに子守歌の様にリズムを遅くしてもう一度歌う。


歌い終わるのと同時に磨き終わった。
ネイルオイルを塗り込んで今日のメンテナンスは終わり。
これで暫くは大丈夫でしょ、と背伸びをする。
寝てるせいか随分と顔色が良くなってきた事にホッとした。


「こっちもあと20分かぁ」
道具を片付けて時間を確認する。
にへまるもひかるんもそろそろ来る頃だ。
名残惜しいけど行かないと。

遅れたら遅れたで何してたんですかー?まさか、みやちゃん、ついに床ドン!?
って確実にニヤニヤされる。しないっつーの。
二瓶ちゃんの謎の床ドン推しは一体何回目なんだか。
ついには想像にまで出てきてしまった。あんなに下ネタ好きだとは思わなかったわ。
ももには絶対2人っきりでなんて会わせられない。

ももはこの後山木ちゃんが来てから矢口さん達と打ち合わせするのって言ってたけど。
あの忠犬ちゃんの事だから、お待たせしてはいけない!って何を置いてもきっと早めに来る。
あんな可愛い後輩ちゃん達が居るんだから。
起きてみやが居なくなってたからって寂しくならないでね、もも。
カントリーのももは完全にママな感じだから取られる気は全然しないけど。


「ねえ、みやは……ももが思っているよりずっとももの事、好きだからね」

心配しないで、って、綺麗になった手を握って、
まだ眠っているのに当たり前のように握り返されたことに安心した。
そうやっていつもどこかへ持て余しそうになる気持ちを、
乱暴にぶつけてしまいそうになるこの気持ちを抑えないと、と自分にも言い聞かせてたら、

「ももち先輩、お待たせしました~」

優しく開かれたドアの音と共にもものもう一人の相棒が来てくれた。

「おはよー」

「あっ、夏焼さん。おはようございまー」す。
そこまで言ったのに最後の音は口パクになった山木ちゃんに苦笑いしてしまった。

「…ももち先輩、寝ちゃったんですか?」
「そう。ごめんね山木ちゃん。
 ももも年だから。はしゃぎ過ぎてだいぶ疲れちゃったみたい。
 いつも世話かけるけど時間が来たら起こしてあげて?」
「はい、勿論です。お任せ下さい」


「本当は起きるまでずっと居たいけどこっちもこれからリハだから行くね。ごめんね、もも」

バイバイって頭を撫でたらももの口角がキュッて上がった気がする。気のせいかな。
同じようにって訳にはいかないけど山木ちゃんの頭も生放送頑張ってって撫でてバイバイした。

それじゃ、ってドアを開ける時に思い出して振り返る。

「あ。矢口さんにもあんま無茶振りとかしないようにーって
 ウチもよろしく言っておくし、矢口さんもハローの先輩なんだから安心してお話しておいで。
 ももも居るんだしさ、カントリーガールズ、楽しんできてね梨沙ちゃんも」
「あっ!…はい!お気遣い、ありがとうございます夏焼さん」
「ん。じゃあまたねー」


ウィンクした後にパタンって閉めたドアの向こうで、

「ほわぁ…。もー、愛され過ぎじゃないですかぁ……ももち先輩」

って溜息交じりに聞こえたという事は。
一体いつから山木ちゃんに聞かれてたんだろうって思ったけど、
あまりにも恥ずかしすぎるのでそれ以上考えない事にした。

後は2人が大先輩な矢口さんと岡野さんの前でボロを出さないことを祈るばかりだ。
miya的には別に良いけど、むしろウェルカム。でも、ももち的には、ね。


そして。集合には遅刻しなかったのに。
何故か先に来ていた二瓶ちゃんに思いっきりニヤニヤされたのは黙殺しといた。
最後に来たひかるんに「二人とも楽しそうだけど、何かあった?」って聞いてきたのが可愛くて。
癒された結果、そのままのひかるでいてねって二人で抱きしめた。

リハも明日がラストだけど、今日はしっかり確認出来たので予定より早く解散出来た。
……のはずだったんだけど。

「あれ?みやちゃん、帰らないんですか?」
「うん、事務所に忘れ物。先帰ってていーよ」
「えぇー?明日じゃダメなんですか?」
「うん、駄目だわ。あれお気に入りのストールだし、返して貰わないと」
「今日持ってきてましたっけ?」
「あ、リハの前に他の部屋行ってたからさ」

「途中までみやちゃんと一緒に帰りたいし、待ってますよ?」

ヤバい。にへまるがニヤニヤしてきた。これは良くないパターンだぞ。

「あー、それは、明日にしよ?結構待ってなきゃないし」
「ほらゆーか、みやちゃんを困らせないの。私も日付変わる前に帰らないと」
「うんうん。2人は門限守るべきだよ、にへまるは特に」
「ああっ、それを言われると辛いっ!私のお弁当が!」
「あはは、また明日ね。ほら、ひかるも。寒いんだから、ちゃんとマフラーしな」

バイバーイって笑って、2人を見送る。
何か言い忘れたのか引き返して近づいてきた二瓶ちゃんに耳打ちされた。

「みやちゃん」
「え、何?」
「……床ドン、私はそろそろしてみても良いと思いますよ」
「っ…しません!もー、真面目な顔して馬鹿じゃないの本当、もう帰れ、帰れぇーーー」

笑ってるけど絶対真っ赤になってしまった。バシバシと腕を叩く。
駄目なんだよ。ウチもこういうの、絶対無理。
マジで、あり得ない、なんなんだ。恥ずかしすぎる。ばか!

「キャー!みやちゃんが怒ったー!へへ、じゃあまた明日!」
「はいはい、また明日ー」

「全く、逃げ足だけは速いんだから…」

あっという間にひかるの横へと消えていった。
みやが気付いてないとでも思ってんのか。不器用なのはどっちもか。

それもこれもぜーんぶ……もものせいだ。
帰りに肉まんでも付き合えって要求してやる。


お料理ロケってみやが相手だったのー!?ってももが驚くまではちゃんと内緒にしておこう。
大事な事をつい言いそうになるのを我慢するってのは意外と得意だし。…多分。


今日のももの事も明日のももの事もその先も、絶対一生忘れてなんかやらないんだから。

「ごーめん、お待たせ」
「もー、何言ったのゆーかってば」
「そうねー、ちょっと勇気を出せるようになるおまじない?」
「何それ」
「んふふ。…いつかひかるにもやったげる」
「えー?今じゃダメなの??」
「駄目でーす」
「ははっ、そっかー。じゃあ待ってるね」
「おう!」

まずは大好きなみやちゃんがどうか幸せになりますように、そう祈りながら。
2人並んで歌いながら家路についたのはまた別のお話。


END

ノノl∂_∂'ル<お粗末様でした・・・

ル*’‐’リ<結局キスもなしで許してにゃん!


川*^∇^)||<これはひどい

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