言えない言葉

気持ちいい。
わたしはさっきまでライアンさんとひとつになっていた、あそこの感覚を想いながら、まるで宙をふわふわと彷徨うような感じで横になって、寝台に腰掛けて情事の後始末をするライアンさんの背中をぼんやりと眺めていた。
『男は出しちゃった後はね、さっきまで抱いていた女に興味がなくなるのよ』
と、いつかマーニャが教えてくれたことが、このときだけ思い浮んでしまう。

やがてライアンさんはわたしの方を振り向くと、髪を撫でてくれて、もう一度寝台に横になった。
わたしはライアンさんの胸に顔を埋めて抱きつくと、ライアンさんは腕枕をしてくれた。それだけで、わたしはさっき思い浮かべたことを忘れてしまう。
ライアンさんは今度はわたしの髪を指で絡ませながらいじり始めた。
「そんなにすると髪の毛くゃくしゃになってしまうわ。ただでさえ嫌いなのに。このくせっ毛」
「デリア殿の髪はふわふわしていて私は好きですよ。こんな風にして貴女の髪をさわるれるだけで、私は嬉しいのですよ」
わたしが、ずっと嫌いだった自分の髪を好きだと言ってくれた。そんな事で嬉しくなってしまう。
二人だけで、こうしていられるときが、いつまでも続いて欲しいと思ってしまう。

いつからかな。ライアンさんとひとつになるときが、こんなにも気持ちよくなったのは。あの瞬間だけは何もかも忘れて、とてもとても幸せな気分になる。
そんなことを考えていると、わたしはまた欲しくなってしまった。本当はさっき、ちょと物足りなかったから。
「ねぇ……」
わたしはライアンさんの足の間の繁みに手を延ばし、まだ軟らかいままのあれを握りながら胸から顔をあげた。
「……ま……まだ、今すぐには無理ですよ」
ライアンさんは少し困ったような顔をして言った。
「じゃあ、わたしが……」
わたしは『男のひとが一番喜ぶ』と聞いたことをしようと、ライアンさんの胸から顔をお腹のほうへと顔をずらしていった。
「なっ……なにをするのです。おやめ下さい。貴女がそんなことをしなくても……」
ライアンさんはびっくりした顔をして、わたしの肩に両手をかけて押しのけると、わたしを仰向けにして、今度はライアンさんが覆いかぶさった。
やがてわたしの目を見つめると、接吻してくれて激しく舌を弄ってきた。
もう一度顔をあげて、わたしを見たライアンさんはとてもいやらしい目つきをしていた。わたしを抱く前にいつも見せる目つきだ。

ライアンさんとこうなる前は、そんな目つきでわたしを見る男のひとがとても嫌だったけど、ライアンさんだったらどうしてこんなに愛しく思うのだろう。
「今度は少し覚悟なされ。先ほどよりはもっと……」
ライアンさんはわたしがさっき少し不満だったのをわかっているように言いながら、身体をずらして、わたしのお腹に接吻すると、あそこに指を入れた。
「これは、私にさせてくださいよ」
そう言うと、あそこに舌をいれきた。わたしはライアンさんの愛撫に身体をよがらせた。舐めまわされると、頭がぼうっとなってきた。

やがてライアンさんは、わたしの横に身体をずらしてきて、またあのいやらしい目つきで、わたしに接吻した。
わたしはライアンさんの足の間の繁みに目をやり、あれがそそり勃っているのが見えると、嬉しくなった。そしてすっかり堅くなったものを握り自分の中へ導き挿れた。
最初はわたしが腰を動かしていたけど、やがてライアンさんは繋がったまま、わたしに覆い被さり、わたしの膝の裏を両手で抱えてから、足を肩に載せると一気に突いてきた。
わたしは思わず大きな声を上げそうになるのを、必死に抑えた。
ゆっくりと深く突いていてくれているうちに、わたしは気持ちよくなてよがっていると、それに合わせるように、ライアンさんが段々と激しく突き上げてきた。わたしは頭の中が真っ白になって、何度も達してしまった。
それでもライアンさんはまだ達していないみたいで、わたしを激しく突き続けていた。
「ねぇ……今度は中で出しても……」
ライアンさんはわたしを息を荒げて突き上げながらも、冷静に言った。
「……あっ…いけません。今宵あたりは……」
ライアンさんはやがてわたしの中からあれを引き抜いた。先から飛び出した白いものが、わたしのお腹のうえに生暖かい感触とともに滴り落ちた。

わたしは、さっきの余韻でぼんやりと天井を眺めていると、ライアンさんはわたしのお腹のうえやあそこを布で拭き自分の後始末を済ませると、下着を穿き、夜着を着てしまった。
「さぁ。デリア殿。今宵はもうお休み下さい。朝稽古の遅刻は許しませんぞ」
そういって、軽く接吻してくれたけど、今度は寝台に横になってくれなかった。

わかっている。こんなことだけ、していてはいけないことは。わたしには、わたし達にはやらなければならないことがあることも。
でも、今はずっと抱いていて欲しい。ひとつになっていたい。ううん。抱かなくてもいいから、貴方の腕の中で眠りたい。朝まで一緒にいて欲しい。
わたしはそれらの言葉を全部飲み込んで、部屋を出るライアンさんの背中を寝台に横たわりながら見送った。

-fin-

あとがき

このお話は、実はあるお話を書いて、その直前に出そうと思っていたお話です。とりあえず蔵出し。
単に二人がいちゃついているだけのお話を書いてしまいたかったのもありますが。
ある程度情事を重ねた男と女。男の想いと生理の違いに、納得をしていない女。
というとこです。


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うら