二つ紅 〜弐ノ一






 部屋の明かりを消して、河に面した障子を開け夜空に咲く花火を見ている。
しかし、瞳に映る華は虚ろに流れて行く。


 後から抱きかかえられる様に座って、花火を見始めた。
旅館にあつらえられた生地の薄い浴衣は、イタチの鼓動を直接伝える。

「ねぇ、これじゃ、イタチが見づらいよ ・・・・・」
「大丈夫だ、俺はお前より背が高い ・・・・・・ それに ・・・・・」

 答えを耳元で囁くと、そのまま耳朶へと舌を這わせて甘噛みし始める。

「やぁ ・・・・ ちゃんと見なきゃ ・・・・」
「俺は ・・・・・ お前でいい ・・・・・。 お前こそ、ちゃんと見ていろ」

 親指と中指で顎を取ると、俯きそうになるの顔を空へと向ける。
すると、伸びた白い首筋にチリっと小さな花火を咲かし、そのまま耳へと舐めあげる。
 髪があげられてめったに見せない白いうなじが、小さな花火をいっそう際立たせる。

「ぁぁっ ・・・・ ゃ ・・・・」

 零れた唇の隙間に人差し指を乗せると、歯茎と唇の間を何度もなぞり、その先を求めるから。
少しだけ開くと中指も一緒に滑り込んで来て、戸惑う舌を見つけ出し弄びはじめる。

「うぅ ・・・・ ぁぁ ・・・・・ 」

 乱れ始めた吐息を夜空へと漏らしながら、蹂躙により飲み込みきれない糸が零れ始めて、ようやく解放された。

 口元に伝うソレを指で拭っていると、こくりと白い喉が揺れた。

「いや ・・・・・ イタ ・・・ チ ・・・ 」
「『嫌』 ・・・・・ か ・・・・」

 今度は反対側の耳を舐めながら、淵へと誘う。



「いやではないと知っている俺に、偽る言葉が通用すると ・・・・ ?
 ふっ・・・・・ お前の強がりが、どれだけ煽るか教えてやろう ・・・・・・」

「?! ・・・・・ あっ ・・・・」


 浴衣の脇から手を差し込むと、弾力を確かめるように数回形を変える。


「柔らかいな ・・・・ こことは対照的だ ・・・・・」


 痛くない程度に鷲掴むと先端の突起をコロコロと指の腹で擦る。

「ぁぁん ・・・・・ ?!」

 濡れて少し冷たい指先はいつも以上に刺激が強いから、思わずねだる様な声が漏れた。
 嬌声に答えるように、親指と人差指で挟むとコリコリと摘む。

「?! ・・・・・ ぁぁ だめっ ・・・・・・」
「だめ? ・・・・ 何がいけない? ・・・・ こうした方が良かったか?」

 もう片手を同じように差し込むと、今度は人差し指の腹で先端を転がす。

「ぁっ ・・・・・ ゃっ ・・・・・ イタチィ ・・・・・」
「『嫌』 ・・・ ではないのだろう? ・・・・」

 媚薬のような声が耳からも侵食してくる。
薄っすらと浮かべた涙を、一筋頬に伝わせながら、快楽と理性をせめぎ合う
 その表情に媚薬を塗られたように雄が高度を増す。
華芯へと動かそうと緩めた手を、同じように膨らみを掴むように押さえられた。



「・・・ ねっ ・・・ お願い ・・・・・ 花 ・・・ 火 ・・・・ みよ ・・・・・・・ 」
「・・・・ 花火の方が いい ・・・・ か ・・・・・」

 がっかりしたような口調で囁き、下からすくい上げるように掴み直すと、先ほどと同じように先端に違う刺激を与える。


「ぁぁん ・・・・ ちがっ ・・・・・・!」

 乱れ始めた息に必死で言葉を繋ぐ
その姿がさらに劣情を煽る。


「イ ・・・ タチが ・・・・ せっか く用意 ・・・ して ・・・ くれたんだもん ・・・・・
 ちゃんと 覚えてん・・・・・ おきたいの ・・・・ これじゃ ・・・・ 見れない ・・・」

「 ・・・・ ・・・・」
「・・・ だって ・・・・ イヤ ・・・ じゃない ・・・・・から ・・・・」

 消え入りそうな最後の言葉の後、潤んだ瞳で懇願するから、愛しくて。
 愛撫していた両手をそのまままわして、思い切り抱きしめた。

「 俺だけの花火は、後でゆっくり見るとしよう ・・・・」

 
 自分と同じくらい煽られているのが、腰に当たる異物で解かる。
でも、あっさりと動きを止め、少し腕を緩めると花火が終わるまで、じっと抱きしめていてくれた。

 少しの淋しさに何か不自然な予感が過ぎるが、すぐにイタチの温もりに消え去っていった。
そして、最後までその温もりの中で、夜空を彩る花火を見ていた。







 そして、今、はイタチの望むままに大輪を開く。

「 綺麗だ ・・・・・・ 今夜はやはり、見上げる方が、夜空に映える ・・・・」

 花火を見上げていた窓は、そのままを映す夜空へと続く。

 寝転ぶイタチに跨り楔を埋め込まれた
己の体重による深い繋がりに、今度は羞恥と快感の狭間を彷徨う。

 片手の指をイタチの指へとしっかりと絡め、もう片方の手は、仰け反る体を支えるためにイタチの太腿に。
 ゆっくりと刺激を与えるイタチに、必死で声を押し殺す。

「どうした? ・・・・ 我慢しなくてもいいんだが ・・・・? 」

 気遣うような言葉も羞恥を煽るだけ。
それも乱れた姿を見たいが為の計算された言葉だと気づく由などなくて。

「 足りないのか? ・・・・・・ 俺が ・・・・・」

 空いた手で茂みをまさぐり、熟れた芽を探し出すと弄り始めた。

「?! ぁぁっ ・・・・・・ ゃぁ ・・・・・・ ダメ ・・・・
わたしぃ ・・・・・」

 ぎゅっと雄を咥えた花弁が収縮する。
と同時に、イタチの太腿と絡んだ手の甲に爪痕が残った。

「 恥かしがる事はない どんなお前も、俺にとっては美しく愛しい ・・・・・
 ・・・・ 思うままに動いてみろ ・・・・ そして、俺をもっとお前で満たしてくれ ・・・・」

 涙を浮かべた瞳が見上げるイタチを映す。

「・・・?! ・・・・ う ・・・ そ ・・・ ・・・・・ イタチ ・・イタチ ・・・・ 」

 少し息があがるだけの、いつもと変らぬ落ち着いた甘い声。
でも、瞳に映ったのは、頬を上気してせがむ様な瞳。 
 愛しい人の名を呼びながら、ぎこちなく揺れ始める腰に楔の高度は増していく。


「 そうだ ・・・ 少しづつでいい ・・・・ でないと ・・・ 俺も ・・・・」


 可愛らしい刺激に耐え切れず、時折、強く突き上げて熱を逃がす。

 やがて真っ直ぐに体を支えきれなくなったは、床に手を付いた。



「 大丈夫か? このままイキたいんだろう?
 待ってろ もう一人で支えてやる ・・・・」
「?! ・・・・・」

 芽を弄っていた指を離すと指を立てた。
しかし、白い指がその指を掴んだ。


「複数相手は初めてだな ・・・・ だが、怖がる事はない。
 全て俺なのだから ・・・・」

 イタチの言葉に小さく首を振る

「ううん 怖くないよ イタチになら 何されても ・・・・。
 でも ・・・・ 今日は ほんとのイタチとが ・・・・ いい ・・・・」

「........ お前は、本当に ・・・・ 俺を どれだけ狂わせる ・・・・・」


 愛しいそうに頬を撫でると体を起して、軽く唇に触れた。
そして、そのまま体を起こし、の両手を首へと絡めさせた。


「しっかり縋っていてくれ ・・・・ 今夜は ・・・・ 加減が出来そうにない ・・・」

 そう囁くと片足を持上げると、己の熱を吐き出すまで激しく突き上げ続けた。


 啼き声と粘着質な水音が混ざる中、突き上げて二度、その後、背後からと正面から、数えられぬ程の欲望をへと放った。

 互いの汗と腿を伝う白く濁った愛液、そして、体にも飛び散った己の吐精にまみれた

 意識を飛ばし梳けるように眠るその体を、もう一度抱きしめた。

「このまま、俺の中に 全て梳かしてしまえられたら ・・・・・ 愛している ・・・・・ 愛している ・・・


 愛していると何度も呟きながら、イタチも暫しの休息へと瞳を閉じた。



2007/8/8 

執筆者 風見屋那智那