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『066:666』@ ………………………………

 どこからともなく笛の音が聞こえる。辺りはすっかり夕暮れ時で薄ぼんやりとしていたが、篝火の赤い光も仄かに遠く見えた。今日は、町の社の祭りで昼過ぎからずっと境内は開放され、露店が参道を埋め尽くしている。
 そもそも社など忌むべきものを閉じこめている場所であるのに、このように煽るなど愚かな事この上ないと、北斗(ほくと)は階段から鳥居へと続く参道を見上げた。
 学校からの帰途、浴衣を着て楽しそうにはしゃぐ人々を何人も見かけた。たった今も、常ならぬ沢山の人が参道を上っていくのが見える。その華やいだ喧噪とは裏腹に、北斗は根拠のない不安に駆られて、じっと鳥居の辺りを睨み付ける。けれど、何も変調を感じ取ることは出来なかった。
 何とは無しに嫌な予感がしたが、ふと夕闇に浮かぶ月を見上げて北斗は自嘲気味に小さく笑うと僅かに首を横に振り、何事もなかったかのように再び帰宅の途についた。
 空にはぽっかりと光の穴でもあいたかのように満月が煌々と光っている。満月の前後はいつも情緒が不安定になり、コントロールが鈍くなるから、恐らくそのせいなのだろうと自分に言い聞かせ、歩みを早める。
 カランコロンと下駄の音を楽しそうに弾ませて、親子連れが北斗の横を通り過ぎるのを目を細めながら眺めた。それは何事もない穏やかな田舎の風景のように見え、北斗に安堵感と寂寥感を同時に与える。しばらくその複雑な心境に浸りながらその親子の後ろ姿を見送り、今一度振り返って帰宅の途につこうとした時だった。
 向こう側から歩いてくる人の姿に北斗は、はっと息を飲み、瞬間呼吸が止まった。
 急に動悸が早くなり、冷や汗がどっと吹き出てきたが、その人が自分に近づき、その瞳の色が濃褐色であることを確認できた途端にほっと胸を撫で下ろした。
 どうにも、最近は過敏になりすぎると、自分で自分を窘める。
 今、まさに自分の横を通り過ぎようとしている人物は、最近の若者らしく、髪を真っ赤に染めていたのだ。
 先日のおぞましい一件を思い出し、反射的に警戒してしまったが、外見で判断することが如何に愚かしいことであるかを北斗は十分理解していたので自嘲の笑みを漏らした。
 こんな片田舎だとは言え、髪を派手に染めた若者がいてもおかしくはないだろう。そう思ったら、安堵感が押し寄せ、ふと、客観的にその若者を見やる。
 歳は北斗と同じ頃合いであろうか。
 男ではあるが酷く整った顔をしていると思った。彫りが深く、色も白い。日本人離れしている容貌で、どこの国とは特定できないが外国人のように思えた。それで、ようやく北斗は気がつく。もしかしたら、その髪は染めているのではなく、もともとの天然の色かもしれないと。
 こんな片田舎では外国人が珍しいのであろう。見られることにすっかり慣れてしまっているのか、その少年は、北斗の視線など一向に意に介さず、そのままスタスタと通り過ぎるかと思われた。けれども、北斗がその少年から視線を外し、歩き始めようとしたその時だった。
「すみません」
 と後ろから声がした。
 振り返れば、たった今自分が見つめていたその赤い髪の少年が、自分をじっと見つめて薄く微笑んでいる。北斗は辺りを見回し誰もいないことを確認し、少年が話しかけたのは自分なのだろうと歩みをとめた。
「何ですか?」
「今日はお祭りがあるんですか?」
 その外見には似つかわしくない流暢な日本語がその口からするすると滑り出す。北斗はそのことに半ば感心しながら頷いた。
「そうです。今日は神社の夏期大祭があるんです」
 相手が余りに愛想良くニコニコと笑いながら尋ねてくるので、反射的に北斗も愛想笑いを浮かべながら答える。すると、少年はニコニコと笑ったまま北斗の顔を見つめ続けた。だからと言って、それ以上何かを言うと言うわけではない。ただ、じっと笑いながら北斗の顔を見つめているだけなのだ。
 外国人だから、日本人よりも気軽で好意的なのだろうかと思いつつも、北斗は居心地の悪さを感じて苦笑した。
「俺の顔、何かついていますか?」
 困ったように笑いながら北斗が尋ねると、少年は少しだけ眉を上げ、からかうような表情を見せた。
「奇麗だなと思ったんです」
「は?」
 言われたことが理解できず、北斗は一瞬、呆気に取られた顔で問い返した。その表情に、少年はますます笑いを深める。なにがおかしいのか声まで立てて笑うと、同じ言葉を繰り返した。
「君の事を、綺麗だなと思ったんですよ」
「俺、男ですけど?」
 男に対して「奇麗」という言葉は決して誉め言葉ではないと思っている北斗は、顔を顰めて少年の言葉を遮る。けれども、そんなことは分かっているとでも言いたげに、少年はクスリと笑った。
「君の顔と体は見事に左右対称だね。心と器が完全に一致している証拠だ。だが、惜しいかな。その瞳は君の瞳ではないね」
 少年の口調は、不意に親しげなものに変わる。だが、そこには先程までの軽やかさは存在しなかった。まるで、獲物をじっと見つめるような剣呑な視線。しかもその言葉の意味も実に訝しいものだった。誰にも話したことのない、見た目にも分かるはずがない自分の秘密を不意に指摘されて北斗は眉を潜める。じり、と一歩後ずさり身を構えて警戒した。
 よもや『敵』なのかと眉を寄せたまま少年を威嚇するように睨み付けたが、相手は全く意に介さず、飄々とした笑いを浮かべてそんな北斗の姿を眺めていた。
「僕は、何か気に障ることを言ったかい?」
 少年は気軽な口調で尋ねると、肩を竦めてそのまま踵を返す。
「え?」
 と北斗が呆気にとられているとそのまま北斗を無視して、神社の参道にある階段を登り始めてしまった。そして、そのままその背中は人波に消えていく。その姿が完全に見えなくなってから北斗はようやくはっとした。幾らか気が抜けて、肩の力を抜くと小さなため息を一つ吐いた。
「過敏になりすぎてるな」
 自嘲の笑みを漏らして、再度、帰途を辿り始める。
「そういえば、少しも痛まなかったのに、馬鹿だな」
 歩きながら一人つぶやき右目に手を当てる。
 僅かに、ちり、と目の奥が痛んだようだったが。
 気のせいだろうと言い聞かせて家路を急いだ。










 アパートの扉の前で、インターホンを鳴らす。返事がないのはいつものことで、北斗は気にした風もなくそのままドアのノブを回した。相変わらず鍵は掛かっておらず、不用心だと何度注意しても部屋の住人は改善する気がないらしい。
 ドアを開けると中は相変わらず散らかっている。
 見た目からはズボラだという印象は受けないが、ありとあらゆるものに執着を持たない性質がこのように無頓着な部屋を作り上げるのだろう。
 狭いキッチンを抜け、部屋の中に入るとぽつんとベッドが一つだけ寂しく置いてある。その上に、ただ、何をするでなくぼんやりと窓の外を眺めている少女が座っていた。
 北斗がベッドに近づくと少女は振り向き、何も言わずに北斗を見上げた。色素の薄い真っ白な肌と真っ赤な左目と包帯が巻かれている右目が不健康さを思わせて、どことなく痛々しい印象を受ける。
「目の調子、どう?」
 北斗が遠慮がちに尋ねると少女はじっと北斗の目を見返し、それから興味がなさそうに、再び窓の外に視線を移す。
「別に。不自由はないわ」
 素っ気のない返事だったが決して北斗を嫌っているからではなく、負い目を感じさせないようにという不器用な、少女なりの気遣いだと言うことが分かっていたので、北斗は僅かに微笑んで頷いた。
「よかった」
「別に、生活に支障はないんだから、桜(さくら)君が毎日来る必要はないわ」
 身も蓋もない言い方をされて、さすがに北斗も苦笑したがそれさえも、北斗に気を使わせまいと言う不器用な優しさだと言うことを北斗は知っていた。
「そうだね。でも、俺が来たいから勝手に来てるんだ。阿久津(あくつ)が迷惑ならやめるよ」
 穏やかな口調で北斗は告げると、ベッドの縁に腰掛ける。少女は窓から視線を戻すことなく
「迷惑だなんて言ってないわ」
 とだけ、ぶっきらぼうに答えた。
 北斗は少女の右目を覆う真っ白な包帯に手を伸ばして、触れるか触れないかのようにそっと手をかざした。
「もう痛くない?」
「もともと、それほど痛くはなかった。もう、明日には義眼が入るから」
「そう」
 北斗は以前未智の右目があったであろう辺りに暫く手を触れて、小さなため息を一つ吐いた。それから、おもむろに立ち上がる。
「邪魔して悪かったね」
「ええ」
「きちんと部屋の鍵はかけるんだよ」
 最後にそう忠告して部屋を後にする。外はすっかり真っ暗になっていて、天上には満月の月が煌々と地上を照らし出していた。あまりにその光が強すぎて、北斗は何となく右目の奥の方がじりじりと痛んだような気がした。










「ただいま」
 と言って靴を脱ぎ、玄関に上がる。
 いつもは無い大きな男物の革靴を発見して北斗は首を傾げた。何か良からぬ事が発生したのだと、予感めいたものを感じてふぅとため息を吐く。「おかえりなさい」という声の中に、いつもは聞こえることのない男の声が混じっていた。良く聞き慣れた声で、その声の主は決して嫌いではないのに、彼の運んでくる幾つもの厄介事にいつもとんでもない目に遭わされているという経験から無用に身構えてしまう。当の本人も自覚があるのか無いのか
「三枝(さえぐさ)さん来てたの? 暇だね」
 という投げやりな北斗の態度にも気を悪くした様子も見せず、苦笑いした。
「随分と遅いお帰りね」
 と、ぶっきらぼうにハナが言うと、北斗は肩を竦めた。
「また、愛しの未智(みち)ちゃんの所に行ってたってワケね」
 もうこれで何度聞いたか分からない嫌みを、いつものように言われる。ハナは北斗が阿久津未智の家に通うのが余程我慢ならないらしく、最近の文句の言いようには北斗も辟易していたが、何もハナが事情を知らないことを考えると言い返す気にはならなかった。
 もともとハナは未智が嫌いであったし、ある意味『敵』にも為りかねない存在であるのに馴れ合うことなど出来ないと、決して距離を縮めようとはしなかった。
 北斗も最初は未智の存在に戸惑っていたが、どことなく自分に似た空気を感じ取り『本家』からも特に咎められることが無いので何となく、関わりを続けていた。
 けれども毎日未智の部屋を訪れるようになったのはほんの一ヶ月くらい前からの事で、北斗が『仕事』をし損ない、それを、おそらく、未智に救われてからだった。




 殲滅し損なって、北斗は右目を抉り取られて失ったはずだった。
 気色の悪い土気色の指が眼球に近づき、まるでそれをおもちゃでも弄ぶかのように刳り抜き、北斗の見ている目の前で口の中に放り込んだのは、決して夢ではなかったはずだった。
 痛みはなかった。痛みなどあるはずはない。
 如何に自分の体が『それ』に好まれ、また馴染むかを北斗は小さな頃から身をもって知っていた。
 体中が心地よく熱を孕み、眠りに落ちる直前のような感覚に、
 (ああ、もう死ぬのだ)
 と何の恐怖も無く落ちていき、だが、ふと意識を取り戻した時には自分はなんら傷一つ負っていない状態で地面に転がっていた。近くには、無惨に破砕された『それ』と右目から鮮血を垂れ流して呆然としている未智が木にもたれ掛かっていた。
 何が起こったのかは気を失っていたのではっきりとは分からなかったし、幾ら尋ねても未智は答えなかったので未だに真相は分からずじまいだが、ただ、自分の右目は『本当の自分の右目』ではないということだけは、北斗には分かった。
 それが証拠に興奮したり『力』を使うときには北斗の右目は赤く変色する。まるで、未智の瞳のように真っ赤に染まるのだ。しかも、以前に増して『力』が強くなった気さえした。そもそもが、それは北斗が望んで得た『力』では無かったのに、更に北斗の能力は『本家』でも突出してしまうだろう。それは、仕事と生命の危険を増加させることを意味する。
 密かに、山奥にでも隠居して、俗世から離れた仙人のような生活を送ることを夢見ている北斗にとって、それは本意では無かった。だがしかし、穏やかな生活を望む反面北斗は押しに弱いので、困ったような表情で三枝や奈津子(なつこ)に相談事をもちかけられると、嫌だとは言えない。結果、必要以上に仕事を抱え込むことになり、しなくてもいい苦労を重ね、挙げ句、ハナには抜け駆けだと責められる。
 いい加減、こんな仕事からは足を洗いたいと思っていながらも、後継者を見つけなければ本家から離脱出来ない規則になっているので、他人に何かを押し付けることなど到底出来ない性格の北斗には、足を洗う日が来るなど予想すら出来なかった。







「実はね、社で火事があってね」
 あえて、北斗が三枝には何も聞かずにいると、悪びれもしない様子で三枝が話を持ち掛ける。内心、聞きたくないと思いつつも、三枝を無視することは北斗には出来なかった。
「社で火事? 社って、夏季大祭の?」
「ああ」
「俺が神社の前を通りがかった時は何とも無かったけど」
「今日、神社の前を通ったのかい?」
「はい。阿久津の家に行く途中だから」
 北斗が答えると、三枝は神妙な顔つきで顎に手を当てると天井を睨み付けて何か考え込んでいたようだった。
「その時は、何も不信なことは無かったかい?」
「…別に…」
 北斗が、三枝の珍しくも神妙な顔つきに、首を傾げながら答えると、三枝は眉を顰めた。
「死人が出てね」
「…火事で焼死したんですか?」
 北斗があからさまに嫌そうな表情を作ると、三枝はちらりと奈津子の方に視線を移し、互いに困ったような表情で目線を合わせていたが、奈津子の方が言いづらそうな表情で北斗に向き直った。
「…4人、死んだらしいの」
「…火元は何なんですか?」
 いまいち要領を得ない二人の態度に、北斗は訝しげな表情を見せながら尋ねる。
「…火元は、分からないわ。誰かが放火したんじゃないかって、もっぱらの噂だけど」
 奈津子が、やはり、奥歯にものの挟まったような言い方で答えるのを北斗は眉を寄せて聞いた。
 そもそも、北斗は警察でも消防でもないのだから、そんな話を自分に振るのはお門違いではないかと、少しばかり苛立ちながら、それ以上は何も言いたがらない奈津子に業を煮やし、今度は三枝に視線を移す。三枝は、それには気が付かない振りで、何度も煙草の煙を吐出したが、煙草を最後まで吸ってしまうと、仕方無さそうに北斗に視線を合せた。
「焼死だったら、まだ、良かったんだがね」
 ぽそりと、良くない口調で三枝が言葉を漏らす。その言葉に、粗方のことを予測して北斗は、迷惑そうな表情を作った。
「…つまり?」
「つまり、仏さんは全部、死因が焼死じゃなかったってことだ」
「…火事なのに焼死じゃなかった?」
「そうだ。死体は全部、死んでから燃やされたんだ」
「…検死は?」
「現在進行中だ。…ただ、明らかにおかしい点があってね」
「おかしい点?」
「そうだ。…死体には血液が一滴も残っていなかったらしい」
 予想通りの答えが返ってきた事によって、北斗が巻き込まれることが明らかになり、北斗は目を閉じて、深々とため息を吐いた。
「で? 俺の出番だと?」
 忌々しげに北斗が答えると、三枝と奈津子は顔を見合わせそれから奈津子の方が小さなため息を一つ吐いた。
 そもそも、北斗は『仕事』を請け負うのが嫌だったから遠い親戚の奈津子の家に転がり込んだはずだった。それなのに、仕事の量が減らないばかりか、その質が次第に悪化するとはどういうことか。
 4人もの死体が出たと言うことは、敵は複数か、もし単体だとしても相当な力を有するというのは想像に難くない。つまり、それは即ち、北斗がより危険にさらされる可能性が高くなることを意味する。
「この間、二人の変死体が出たでしょう? その件も解決していないし、もしかしたら同じ奴の仕業じゃないかって」
 らしくもなく、控えめな口調で告げる奈津子に今度は、北斗がため息を吐いた。
「だから、アタシが出るって言ってるじゃないの! どうして北斗に依頼するのよ!」
 苛々とした口調でハナが横から割って入り、残りの人間がうんざりとした顔でハナを見やる。ハナは決して出来が悪いわけではなく、それどころか相当に優秀な術師ではあったが、いかんせん元々持つ素質が北斗は飛び抜けていたため、厄介な相手になると自然と北斗にお鉢が回ってきてしまうのだった。だが、矜持の高いハナにはそれが我慢ならないらしく、ことあるごとに北斗や奈津子に食ってかかる。
「ハナじゃ手に負えない」
 三枝がもう一本タバコを取り出し、火をつけながらそう告げると、ハナは一瞬顔を歪め、それから勢い良く立ち上がると自室に戻って、バタン! と乱暴にドアを閉めた。
「あんな風に言って、三日は拗ねてますよ? 機嫌を取るのは三枝さんじゃないんだから…」
 北斗がうんざりしたような口調で言ったが、別段、三枝は気にした風もなくタバコの煙を吐き出した。
「君だって、ハナにやらせるのは危険だと思ってるんだろう? 先の変死体の件だって、無理にハナに引かせたばかりじゃないか」
「…それとこれとは…」
「ま、いずれにしても、このまま放っておくと犠牲者が増えるばかりだからね。報酬は、いつもの倍、出すそうだよ」
 未だに、グズグズと乗り気でない様子の北斗を無視して、三枝は用件だけを伝えるとタバコを灰皿にグリグリと押しつけて立ち上がった。それから、邪魔したね、と短く挨拶するとさっさと帰ってしまう。いつものことながら、強引に仕事を押しつけられて北斗は深々とため息を吐いた。
 何の因果かと自分の能力を恨んだが、だからと言って放置しておけるはずもなく、重い腰を上げる。
「奈津子さん。とりあえず、神社の方を見てきます」
「これから? 夜は危険じゃないの? 明日にした方が…」
「時間が経つと、手がかりが減ってしまうんです」
「でも…」
 心配そうな顔で北斗を見上げる奈津子に、北斗は軽く笑って見せた。
「大丈夫。敵はもうすでに『食事』が済んでいるんですから、そう、気が立っているとも思えない。むやみに襲われることは無いですよ」
「…でも、今日は『満月』よ?」
 奈津子が言い辛そうに口を開く。北斗は、微かに苦笑して肩をすくめた。
「まあ、なんとかなりますよ」
 北斗は、なるべく深刻にならないように努めて明るい口調で答えると、上着を羽織って部屋を後にした。






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