※注】このSSは、バレーボールの大会やオリンピックに関して、すんごくズレてる点や事実と
異なる点が多々(殆ど!笑)あります。これはすべて管理人の作り話です。
つまり・・・妄想です。ですからその辺はさらっとスルーの方向で読んで頂きたい。
Vリーグは実在しますが、チーム名は実在しません。
その辺をよ〜く踏まえてお読みくださいませ。











『 Heroes  』






■ 全日本男子バレーレギュラー選手 一覧表 ■
監督  菊池(37)
マネージャー  金子(26)
トレーナー  佐和(35)
セッター(司令塔) キャプテン  吉澄(30)178cm
レフト(エース)  岩城(28)188cm
ライト(Sエース)  香藤(23)190cm
センター  小野塚(23)193cm
レフト(エース)  宮坂(23)195cm
レフト (エース)  漆崎(22)198cm
リベロ(守備)  浅野(26)175cm
控え選手
レフト (エース)  佐久間(21)195cm





第 一 部




空を舞う美しくしなやかな身体がボールを追いかけるのか
ボールが空を舞う美しくしなやかな身体に吸い込まれるのか
撃ち放たれ勢いをつけたボールは、誰にも止めることは出来ない
そして、美しくしなやかな身体は、華麗な蝶に姿を変え氷の微笑湛えて舞い降りる。
「美しき氷の微笑、スーパーエース岩城京介」

1999年8月ー

オリンピック予選で悔しくも1勝8敗という成績で終わった全日本男子バレーチームは、1996年のアトランタオリンピックでは3位の成績を残したものの、2000年シドニーオリンピックの出場権を獲得する事が出来なかった。
監督は責任を取り辞任し、新しい監督としてVリーグ(サッカーのJリーグのようなものだがプロのプレヤーでは無い)のコーチを経た後、アメリカチームのマネジャーを勤めていた、元オリンピック全日本男子バレーチームの1人、菊池が就任した。
就任記者会見で菊池は、これからの全日本男子バレーチームは変化とスピードをスローガンに若手選手でのチーム作りをすると発表した。それに伴い、今までベテランと呼ばれていた選手達は入れ替わりを余儀なくされ、司令塔であるセッターの吉澄(キャプテン)、リベロ浅野、そしてライト(Sエース=スーパーエース)であった岩城をレフト(エース)に置き換え、それ以外は新たに若い選手を起用する事になった。
その中でも注目されるのは誰が岩城の後のSエースのポジションを得るかだが、それはすでに誰もが知っていた。
香藤洋二、彼以外にあり得なかったからである。
中学の頃から天才的な資質をもち春の高校バレーでは勿論のこと、インカレ、大学でも常にSエースとして最多得点を取る実力ナンバーワンの選手である。
彼の最大の特徴は空中での滞空時間にある、驚異的跳躍力は自分より20cmも高い選手より高く飛び空中で止まっているのかと思わせるような高さから叩き出すパワフルなアタックは、信じられないほどの威力と破壊力で相手チームを打ちのめす。
その攻撃は元Sエースの岩城とは全く正反対のタイプと言っていいだろう。
香藤以外にもセンターの小野塚は、若手の中でもスバ抜けた判断力でのブロックと、技のデパートと呼ばれるほどの多彩な技の数々を使いこなす特に1人時間差やクイックの速さは世界でもトップクラスである。
そして、レフトの宮坂はバレーの名門高校大学と小野塚と同じチームで過ごし、息の合った2人のブロックは鉄壁とも呼ばれている。
攻撃面では宮坂の俊足を生かし、絶妙のタイミングで撃つブロードアタックはスピードとパワーはともに最高レベルだと言える。
3人はVリーグ、ワールドリーグなどで全日本入りする前からベテランの全日本選手たちと交流があり常に注目される存在だった。
その天才と呼ばれる3人を初めバレーボールプレイヤーの憧れ、そして目標にしているプレイヤ ーが岩城京介である。
『美しき氷の微笑、スーパーエース』バレーボールワールドという専門誌にいつも書かれている彼に対する表現、キャッチフレーズである。
美しき・・・男性に対して相応しいとは思えない表現かもしれない。
しかし、岩城京介は美しい、透き通るような白い肌、黒い瞳に切れ長の目、すっと通った鼻筋、 薄く引き締まった唇、どれをとっても端麗な顔立ちで綺麗としか言いようがない容姿をしている。
元々は走り高跳びの選手で中学生の時、国体まで出場経験のある選手だったが、その後全く成績が伸びなかった。
しかし高校に入ってバレーボールに転向してからの彼は、自分の中に埋もれていた新たな能力を開花させた。
岩城の柔軟でしなやかな身体が放つアタックは、身体の向きからコート内の何処に落ちるのか判断できない。
打つ瞬間に相手のブロックの穴を見つけ、瞬時に腕と身体の向きを変え、その上バランスを保ちながら撃つ、見事な跳躍力と反射神経で今までの決定率は95パーセント以上とも言われ、全日本チーム始まって以来の最多得点を稼ぎ出している。
全日本のスーパーエースとして、岩城は188cmの身長で200cmの身長を超える世界の高い壁を崩してきた、それは正に神業である。
どんなに不可能と思われるトスでも身体を捻らせバランスを保ちながらボールを打ち着地するその姿はまるで華麗な蝶が空を舞うように映る。
しかし、どんなに素晴らしい決め方をしても、そして勝利を収めても、岩城は決して笑顔を見せない、ただ冷たい微笑を微かに浮かべるだけだった。


高く高く舞い上がる、まるで空中で身体が止まるように
どこまでも舞い上がる、まるで空中でボールを止めてしまうように
熱い力で叩きだされたボールは、すべてを弾き返し真っ直ぐに突き進んでいく
そして、すべての任務を終えた勇敢な戦士のように、あふれる笑顔と共に着地する。

「笑顔の戦士、熱きスーパーエース香藤洋二」


2000年3月ー
 
5月から始まるワールドリーグに向けて、全日本男子バレーチーム合宿の顔合わせが行われようとしていた。
「なぁ香藤、ワールドの今月号見た?」
「まだ、今日だよな発売日。」
「俺達の事載ってるぜ、バッチシ。」
「何がバッチシだよ、いいよ小野塚はいい写真でさ、俺はもちっといい写真を載せて欲しかったよなぁ〜。ファンレターの数がこれで決まるってのによ。」
「宮、お前はそんなもんだっつーの。」
「うるせーよ。香藤の事なんて『笑顔の戦士、熱きスーパーエース』だぜ。まるっきり岩城さんと逆じゃん、書きゃいいつーもんじゃねーよなぁ。」
「へへへ、どーだ、宮。羨ましーだろー。」
「そういや、トップの見開きのページに岩城さんの事載ってるぜ、イタリアのセリエAに移籍の話があるらしいじゃん、決まったら日本人初のプロのバレーボールプレーヤーだってよ。凄げーなー、岩城さん。」
「えっ、岩城さんが移籍!ウソだろ!見せろよ!」
香藤は驚きのあまり宮坂から雑誌をむしり取るようにして記事に目を走らせた。
「おい、破くなよ。香藤も知らなかったのか・・・となると誰が入るんだレフト?」
小野塚は答えを求めるように宮坂を見た。
「漆崎か佐久間・・・って事か?」
宮坂は半信半疑で答えながら同意を求めるかのように香藤を見た。
しかし香藤には二人の話など耳に入らず、一通り岩城の記事を読み終わると、いつの間にかギューっと音を立てて雑誌を握り締めていた。
「・・・なんで・・・だよ・・・やっと、やっと・・・くそっ!」
香藤はジッとしていられず、監督の菊池の元へと走り出していた。
「おい、香藤。雑・・・誌って、行っちゃったよ、どうしょ小野塚。」
「あいつ・・・やっぱショックでかかったつーことか。」
「岩城さんと同じコートに立ちたいって、香藤のやつ、中坊の頃からそればっかだったもんな。」


中学生の時、香藤は当時高校生だった岩城のプレイを初めて見て驚き、感動した。
それ以来、岩城は憧れの選手であり目標の選手になった。
Vリーグで香藤の所属するチームは東京を本拠地とする西レ・アムーズ、岩城の所属するチームは岡山を本拠地とするJ・Kテンダース。
お互い毎回のようにベスト4に残り優勝争いをする強いチームなので、年に何度も試合し顔を会わせている。
その度に香藤は岩城をもっと知りたいという欲望に駆られるのだ。
いつか、いつかは必ず同じコートに立ちたい、一緒にプレイし喜びを悔しさを分かち合いたい、そして知りたいあの人の事をもっと・・・。
21歳で全日本入りを果たしてからこの2年間、練習試合や大きな大会で1,2度控え選手として一緒にプレイした事はあっても、レギュラーとして同じコートに立てることは今まで1度も無かった。
今回のレギュラー入りでスーパーエースのポジションに選ばれた事よりも香藤にとって、岩城と一緒に同じコートでプレイ出来ることが何よりも嬉しかった。
『やっとなのに・・なのに・・何だよあの記事っ!』


形振り構わず雑誌を握り締めたまま菊池監督の部屋の前まで走ってくると、整わない息のままドアをノックした。
「はい。」
「監督、香藤です。」
「なんだ、入れ。」
「はい、失礼します。」
部屋に入るとそこには監督の菊池以外に、マネージャーの金子とキャプテンの吉澄、そして岩城がいた。
「・・あ・・れ・・本当だったんですか・・・」
香藤は岩城の美しい横顔を睨むように見つめながら、やっとの思いで声を出した。
「お前のその様子じゃ、選手全員もう知ってるようだな。仕方無い、俺から選手に話すが、それでいいな岩城。」
「はい。お願いします、監督。」
「分かった、みんなご苦労だった。香藤、岩城の事で来たのなら心配するな。皆と一緒の時に話すから、ミーティングに行け。」
「あっ・・はい、失礼しました。」
部屋を出ると香藤はすぐに岩城に追いつき呼び止めた。
「岩城さん、移籍しないんですよね。監督が心配するなって。」
「香藤、監督から話す事になったはずだ。」
「吉澄さん、でも・・」
「後は岩城個人の問題だ、お前には関係ない。」
「いいんです、吉澄さん。香藤には俺も話したい事がある、後で話そう。」
「岩城さん・・・はい。」
その後3人は何も言わず、選手が集まっているミーティングルームへと急いだ。

ミーティングでは監督の菊池、マネージャー金子、トレーナーの佐和の紹介から始まり、選手各自の自己紹介、これからの日程、練習内容、そして部屋割りなどが発表された。
第一合宿は1週間の予定で開始される。
1日から2日の休暇を間に入れ第二合宿、第三合宿と約2ヶ月間続く。
部屋割りは、吉澄/岩城、浅野/香藤、小野塚/宮坂、漆崎/佐久間、だった。
次々と合宿について説明されていく中、香藤の頭は岩城の移籍の事でいっぱいだった。
『俺に話したい事って、何だろう?』
やはり岩城は移籍するつもりなのだろうか。会えなくなる、今までのように顔を見ることも出来なくなる・・・香藤は胸が締め付けられるほど辛かった。
マネージャーの金子からの説明が終わると、菊池監督から岩城の移籍の話になった。 「さてと、皆もう知っている事と思うが、岩城の移籍のことで雑誌には既に決まった事のように書かれているが、あれは全くのデタラメだ。確かに俺も岩城もセリエAから話は聞いた。しかし、オファーと言う形ではなく、向こうの入団テストを受けてみないかと言うことだ。受けるかどうかまだ岩城も決めていなし、受けるにしてもまだ先の話だと言っているので、今回のワールドリーグへの合宿は予定どうりに参加する。お前達も岩城のように、世界のチームから話が来るような選手になるようがんばってくれ。以上だ。」
「では、皆さんご苦労様でした。合宿内の見取り図はこちらにありますので必要な選手は取りに来てください。夕食は食堂で6時がらです。」
金子の声をきっかけに選手達がそれぞれ席を立ち移動し始めた。
香藤はすぐに岩城の元へ行き声を掛けた。
「岩城さん。」
「ああ、香藤。体育館にでも行くか。」
「はい。」


合宿所と逆方向にある体育館へ続く屋根だけの渡り廊下に人影はなかった。
前を歩く岩城の後姿を見つめながら、同じSエースなのに逞しく背筋がついている自分と違い、この人の身体はなんてしなやかに筋肉がついているのだろうと香藤は思った。
「この辺に座るか、いい天気だな。」
岩城は廊下の長椅子に腰かけると、雲ひとつない空を見上げて言った。
「あっ、はい。そうですね。」
香藤は岩城の隣に並んで腰かけ俯いたまま答えた。
「香藤、俺はこのワールドリーグが終わったら、セリエAの入団テストを受けるつもりだ。受かるかどうかは分からんがな。」
「そう・・ですか・・・」
「なんだ、喜んでくれないんだな。」
「いえ・・・その・・・岩城さんなら受かりますよ。」
「菊池さんや金子さんには、すぐにでも受けろと言われたよ。二度とないチャンスかも知れないってな。ただ、俺にはその前にやりたい事があるんだ。」
「その前にやりたい事って、ワールドリーグの事ですか?」
「ああ、まあそういう事になるかな。お前とどうしても同じコートに立ちたかったんだ。スターティングメンバーとして。」
思いも依らない岩城の言葉に香藤は驚き、目を見開らいて岩城の横顔を見つめた。
「い・・岩城・・さん・・。」
「そんなに、驚くことだったか?」
「だって・・・そんな、俺とコートに立つためだなんて言うから・・・」
「事実だ、俺はお前が好きだ。」
「ええっ!!」
「いや!すまん!そういう意味じゃなくて、お前のプレイやバレーに対する姿勢のことだ。どうも俺は話すのが苦手でいつも誤解を招くようなことを言ってしまう。今回の移籍の記事もそうなんだが、ダメだな全く。本当にすまん、香藤。」
岩城は綺麗な黒髪を掻きあげながら目元を薄っすらと紅く染め苦笑した。
その何気ない岩城の仕草に香藤の胸はときめき、目が離せなかった。
『この人はなんて純粋で可愛い人なんだろう。あれっ、俺本当に岩城さんのこと・・』
「お、俺は嫌じゃない・・・と言うか、むしろ、嬉し・・・」
「香藤。」
「はっ、はい。」
「お前のバレーのセンス、アタッカーとしての才能は素晴らしい。これからまだまだ伸びる未知数の可能性を持っている。試合するたびに技術的にも精神的にも強くなってる、怖い位だよ。」
「そんな、俺なんか岩城さんに比べたら。」
「まあ確かに、俺の方が経験が豊富な分いろんな意味でお前より一枚も二枚も上だろうな、Vリーグでの試合がいい証拠だ。ここぞという時にお前は熱くなりすぎてミスをする。それに俺が漬け込む、って感じでな。」
「はぁ・・。」
「香藤、お前は全日本のSエースとして最高のプレイが出来る選手だ。今回の合宿で俺から盗めるものは全部盗め、そして吸収しろ、いいな。」
「はい。分かりました。」
「よし。」
岩城は椅子から立ち上がると両腕を伸ばし大きく伸びをした。
香藤がすわったまま見上げると、優しく目を閉じて夕陽を浴びる岩城の端麗な横顔があった。
通った鼻筋、柔らかそうな唇、春風が優しく岩城の癖のない黒髪を揺らした。
『・・・綺麗だ、俺・・・岩城さんが好きなんだ・・・』
「香藤、行くか。そろそろ飯の時間だ。」
「岩城さん、盗んで、自分のものにしていいんですよね。」
「ああ、俺もお前から盗む、お互いいい刺激になるな。」
「・・・プレイ以外にも、俺のものにしたいものがある・・・」
「んっ、何だ?」
振り返ると、岩城の目を真っ直ぐに見つめる香藤の双眸は今まで見たことがないほど真剣だった。
「香藤・・・?」
「岩城さんを俺のものしたい、岩城さんが好きです。」
「香藤・・・お前・・・あっ、さっき言った事なら、あれは・・・」
「いえ、前から好きでした。ずっと憧れだと思い込んでた。でも違う、岩城さんの事がいつも気になって、岩城さんの移籍の話を知った時は胸が痛くて、会えなくなると思うと辛いんだ・・・今は・・・岩城さんを抱きたい。」
香藤は上気した顔で一気に話し終わるといきなり岩城を抱きしめた。
不意を就かれた岩城はすっぽりと香藤の逞しい腕の中に包まれる形になった。
「か、香藤待て、落ち着け。俺が誤解されるようなこと言ったから・・・」
もがく岩城を香藤はさらに強く抱きしめた。
『温かい・・・』岩城は男の腕に抱かれているのに不快感は全く無かった、それどころか布越しに伝わってくる香藤の体温を心地よく感じていた。
「キス・・・したい・・・」
「ば、馬鹿!何を言ってる!」
岩城は力いっぱい香藤を押しのけた、その拍子にバランスを崩した岩城は尻餅をついてしまった。
「うわっ。」
「岩城さん大丈夫ですか?
「お前が変なこと言うから。」
「変な事じゃないですよ。俺、本気ですから。」
香藤が差し出した手の先には自分を見つめる真っ直ぐな熱いまなざしがあった、岩城は身体が熱くなっていくのが分かった。
その差し出された香藤の手を無視して岩城は一人で立ち上がり背中を向けると、すかさず香藤は後ろから抱きしめ、耳元で囁いた。
「好きだ・・・」
「香藤、頭を冷や・・んっ・・・」
腕を振りほどこうと振り向いたと同時に香藤の唇が岩城のそれを捉えた。
柔らかい香藤の舌が岩城の唇の隙間から優しく口腔に侵入して来る。
『熱い・・・』岩城はその熱さに引き込まれ、それに応じてしまいそうになる自分が怖くなり思わず右の肘を後ろに引いた。
「うっ・・痛てっ。」
香藤はみぞおちを両腕で押さえ腰を折り曲げて椅子に座り込んだ。
「お前が悪いんだ!もう、知らん!」
恥じらいに顔を紅く染め居たたまれなくなった岩城は、香藤を置いて合宿所へと足早に戻っていった。
「岩城さんってホント可愛いなぁ・・、なーんか胸のつかえが取れたって感じ、俺本当に岩城さんが好きだ、大好きだ。」
合宿所に向かう岩城の後姿を目で追いながら香藤は幸せそうな笑顔を浮かべていた。



新監督菊池率いる全日本男子バレーチームは、前監督の急な辞任のためワールドリーグまでの時間があまり無い上に、新レギュラーを3人入れ変えたことでベテラン勢とのコンビネーションをいかにスムーズにするかが大きな課題となっていた。
そのため初日から本格的な6人でのチームプレイ中心の練習が行われた。
そんな中で、香藤はSエースとして素晴らしいプレイを見せた。
司令塔であるセッター吉澄との絶妙なコンビネーション、岩城の変化をつけたオープン攻撃との相性も良く、思った以上の良いプレイに監督の菊池も満足そうに頷いていた。

「香藤、初日からやたら飛ばしてるなー、やりずれーったら。」
「へ〜え、宮でもやりずれーことあんだ。」
「マイペース小野塚君、ホントお前って、気にしねえよなー。」
「香藤、飛ばしてるってか、なんかすっきりしてねーかー。」
「うーん、なんか機嫌いいよな、彼女と上手くいってるんじゃねーの。」
「宮の考えそうなことだ。」
「違うのか?」
「さぁな。」


毎日のチームプレイの練習は勿論のことだが基礎練習も欠かす事は出来ない。
特にジャンプ、跳躍力を特に必要とするバレーボールでは下半身の強化のため特別なプログラムが用意されていた。
菊池が実施しているのはマシーンでの筋肉トレーニングの他に、週に2回午後の練習の最後に子供用の浅いのプールに入り1時間ひたすら歩るかせるというトレーニングだ。
これは練習後のクールダウンの効果もあり、トレーニングの後に泳げるからストレス解消にもなると選手からの評判も悪くなかった。
岩城はこのトレーニングの後、いつも1人プールに残っていた。
仰向けに水に浮かんでいると落ち着き、常に頭の中を支配しているバレーの事を一切考えず、唯一無心になれる時間だった。
それに、毎日の練習が終わると選手達はすぐに汗を流すため風呂へと直行する、合宿所の風呂は狭いわけではないが、体の大きな選手達が10人以上一度に入るとなると話は別だ、岩城は週に2回のこのトレーニングの後はプールのシャワーで済ます事にしていた。


チャプン・・・チャプン・・・優しい水の音と柔らかい水に包まれて浮かんでいると、母親の体内で羊水に浸かっている時はこんな感じなのだろうか、ふと岩城は思った。
『いや、もっと温かいか。』
温かい・・・香藤の腕の中で感じた温もり・・・。
あの時、あのまま香藤の腕に抱かれていたら、あまりの心地さに身を任せていたかもしれない・・・。
『馬鹿な、俺達は男同士だ。何を考えてるんだ俺は。』
岩城は考えを打ち消すようにザブンッと勢いよく水に潜り、ひと泳ぎしてからシャワールームに向かった。

ザーァァ・・・キュッ・・・
シャワールームに足を踏み入れると誰かがシャワーを止めた音がした。
「あれ、岩城さん。」
「香藤・・・・。」
「まだ、居たんですか。風呂混んでるからここのシャワー使ちゃった。」
シャワー後の滴る水滴が香藤の広い肩幅、逞しい胸を伝って落ちていく、セクシーな男の身体を例えるならば、まさしく香藤のことを言うのだろう。
「そ、そうか。」
岩城は慌てて香藤から視線を逸らすとシャワールームを出て行こうとした。
「岩城さん、シャワー浴びないんですか?」
「いい、風呂に行くから。」
「待って。」
香藤は岩城の腕を後ろから掴んだ。
「俺が居るから?そんなに嫌ですか・・・俺のこと・・・」
「違う・・・そんなんじゃない。」
「ホントに?じゃ嫌じゃないってこと?」
「わか・・らない・・・」
「岩城さん・・・・」
香藤は優しく岩城を後ろから抱きしめた。
「身体冷たいね、こんなに冷えてたら風邪ひいちゃうよ。」
「やめろ香藤、人が・・来・・る・・」
岩城の首筋から肩に唇を押しつけながら香藤は耳元で囁いた。
「誰も来ないよ、今頃みんな食堂に行ってる。」
「やめ・・んっ・・んん・・」
熱い香藤の舌が滑らかに岩城の口腔に差し込まれ、岩城の舌を求めゆっくり動き回る。
その深く甘い口吻けから逃れようと、もがいた岩城の腕の力が抜けた、と同時に香藤に応じるように舌を絡めた。
「・・んっ・・ぅんん・・」
「岩城さん・・好きだ・・」
壁に岩城を押し付けると香藤は岩城の胸の飾りの片方に唇を寄せた。
「・・あっ・・・」
岩城の身体がピクリと反応した、気を良くした香藤はそのまま胸の突起を唇で摘んだ。
「んぅっ・・香藤・・やめろ・・・」
「やめないよ、俺のことが嫌じゃないって分かったから・・・」
唇で摘まれ硬くなった胸の突起を舌先で転がしながら、もう片方の胸飾りに指が触れるか触れないか微妙な指先が這いまわる。
「・・ああ・・・んんっ・・・」
「敏感だね・・・可愛い・・・」
「バカ・・・んあっ・・」
胸の飾りからわき腹へそして腰骨のほうへ濡れた熱い舌が下りていく、そのまま香藤は跪いた。
見上げると岩城は硬く目を瞑り薄く開いた唇から甘い声を漏らしていた。
「綺麗だ・・・肌も凄く綺麗・・・」
岩城は真っ赤になった。
肌がひどく敏感になって、触れられるところがザワザワと粟立つ。
片方の胸飾りに触れていた手がゆっくりと下りて岩城の水着を下ろそうとした。
「香藤っ、待て!」
岩城は香藤の手首を握ってとめた。
「ダメだ・・こんなこと・・・」
「どうして・・こんなに感じてる・・」
水着の上から硬く張り詰めている岩城自身を握った。
「・・ああっ・・っ・・・」
「好きだから・・・我慢できない・・・」
香藤はグイッと岩城の水着を下ろすと硬く勃ち上がっているモノの側面から窪みへ優しく舌を這わせると先端の小さな穴がヒクヒクと疼きはじめた。
「・・んんっ・・あぁ・・」
「濡れてきた・・・」
先端を口に含むと溢れ出だした先走りを音を立てて吸う香藤の頭が上下する。
「・・ああ・・・か、香藤・・口・・離・・せっ・・んっ・・」
「岩城さん・・出して・・いいよ・・ん・・んん・・」
香藤の舌が敏感な部分を捉え口腔が激しく上下する。
「・・うっ・・ぃ・・くっ・・あっ・・・」
首を左右に振りながら湧き上がる精の開放を抑えられなくなった岩城は、香藤の髪の毛を強く掴みグッと仰け反った。
「・・あっ・・あぁぁ・・ん・・っ・・」
「んっ・・ゴクンッ・・ん・・」
「・・お前・・・飲んだの・・か?」
荒い息をつきながら岩城は驚いたように聞いた。
「うん。痛っかったー、岩城さん思いっきり髪の毛掴むんだもん。」
「すまなかった・・・香藤・・・俺も・・その・・・」
「いいよ、そんな無理しなくて。」
「でも・・お前だって・・・」
シャワーを浴びたばかりで素っ裸の香藤の股間は血管を浮かせ、張り裂けんばかりになっていた。
「手で・・・いいか?」
「うん。」
ゆっくりと握り締めると香藤は熱い息を漏らし抱きついてきた。
「・・あぁ・・・」
唇が重なる、深く舌を絡ませ合うと思いがけない味が広がる。
これがあの味なんだ・・・岩城の精を受け止めた香藤の想いが嬉しかった。
岩城は握り締めていた手を外した。
「香藤・・・待て。」
「ん・・どうしたの?」
「俺も、お前にしたい・・・」
「岩城さん・・・」
香藤は嬉しそうに微笑んだ。
岩城は跪くと香藤の熱い塊の先端を口に含み舌を絡めた。
「ああっ・・岩城・・さん・・」
張り出したエラの部分に舌先を這わすと、香藤は甘い吐息を漏らしながら緩やかに引き締まった腰を揺らす。
「ああ・・い・い・・岩城・・さん・・んっ・・」
口腔の奥まで含み軽く上下させると硬度がいっそう増し膨張した。
「・・んんっ・・・あぁ・・・あっ・・・」
絶頂が近い・・同じ男のメカニズムが分かる。
岩城はそのまま強く吸い上げながら上下に頭を動かした。
「・・はっ・・んっ・・はっ・・あぁ・・」
香藤の激しい息遣いの間隔が短くなり上半身がのけぞる。
「・・あっ・・んっ・・岩城・・さっ・・ん・・ああぁっ・・」
岩城の肩に置いている香藤手に力が入る。次の瞬間、香藤は熱い迸りを放った。
「はぁー、凄くよかった。ありがとう、岩城さん。」
整わない息の中、岩城を抱しめて頬にチュッとキスをすると香藤は嬉しそうに言った。
「ごほっごほっ・・・」
「岩城さん、大丈夫?」
「ああ、でもなんか変な感じだ。」
「シャワー浴びようよ、まだでしょ。俺、洗ってあげる。」
「そんなこと自分でする。お前は食堂に行け。」
「もうー、冷たいなー。いいじゃん、ねっ。」
「・・・・・」
「後悔してる・・の?」
「・・そうじゃない・・ただ・・怖いんだ・・自分の気持ちが分からない・・」
「でも、俺の気持ちは変わらないよ。」
いつも真っ直ぐで嘘のない香藤の気持ちが痛いほど伝わってきた。
「香藤・・・」
香藤は岩城を優しく抱きしめると耳元で囁いた。
「いつまでも待ってる、岩城さんが俺を好きになってくれるまで。」
『ああ、温かい・・・香藤の腕の中にいると落ち着く・・・まるで太陽の日差しに包まれているようだ。』



パタパタパタ・・・・誰かが近づいてくる足音が聞こえ二人は慌てて離れた。
その人物は鼻歌を歌いながらシャワールームにやって来た。
「あら、まだ居たの?もう、みんな居ないと思ってたのに。」
佐和トレーナーは水質調査用の試験管を持ちバインダーを小脇に挟んでいた。
「すみません、もう出ますから。」
「いいのよ岩城君ゆっくり浴びて、まだこっちは時間かかるし。あら香藤君ここにいたの、菊池監督が探してたわよ。」
「えっ、そうなんですか、じゃ、お先に失礼します岩城さん。」
「ああ。」
岩城はシャワーのハンドルを廻して冷えた身体を温めようと、熱めのシャワーを勢いよく頭から浴びる。
しかし、どんなに熱いシャワーを浴びても、岩城の身体に与える温かさは香藤の腕の中の温もりとは程遠いような気がした。





kaz
2005.9.18