深々と降り積もる雪。
それに何を感ずるわけではないが‥‥。
小さく吐いた溜息に振り返る君が、何故だか儚い者のように見えて身震いをする。
「こちらにおいで」
何の意図もなく伸ばした腕に、不自然なほど自然に寄り添う君を、そっと抱きしめる。
底のない不安を誤魔化すように「珍しい」などと茶化せば、気分を害した風もなく、薄く笑った。
「静かだから……」
「そうだね…。嘘みたいに、静かだ…」
現実味のない空気。
寄り添う体温だけが確かなものをくれる。
無意識に私の腕を抱いて、幸せな溜息を紡ぐ君。
こんな時ばかり天使のように微笑む、天の邪鬼な恋人。
ねぇ、幸鷹。
君と共になら、いっそこのまま消えてしまうのも一興、などと言えば君は怒るかい‥‥?