チャットから派生したネタ。
完全パラレルで現代設定のリーマン翡幸(笑)
人は私をワンマン社長などと呼ぶ。
別に仕事をしたくて続けているわけでもなし、金なら暮らすのに足りるほどあればいい。富も名声もいらない。
それでも尚、この会社を保ち続けているのは‥‥。
「社長、書類は片づきましたか?」
ノックも無しに入り込んで不適に笑っている、この私相手にそんなことを平気でやってのける男は、社内に‥‥いや世界に一人しかいない。
「息を付いていたところだよ。午後からは会議もあるのだろう? 大事な私が過労死したら、どうするつもりだい?」
「ご冗談を。私ならともかく、貴方が過労死? はん、片腹痛いというものですよ」
これだ、これ。
この非礼で傲慢な態度が、ここを一歩出た途端に『非の打ち所のない秘書』と改められる瞬間が、タマラナイ。
この男と共にある以上、退屈とは無縁なのだろうね。
「だいたい貴方は『どうすれば楽をできるか』ということ以外、何も考えていない。とばっちりを喰らう社員の身にもなっていただきたいものだ」
ブツブツと文句を言い続ける幸鷹を、後ろから少々乱暴に抱き寄せて柔らかい髪に口づけると、白けたように身を投げる。
「おや?抵抗しないのかい。このまま奪ってしまうよ?」
幸鷹は皮肉気な瞳で振り返って、甘く唇を重ねた。
「それで仕事が回るなら、くれてやりますよ」
罪深く鮮やかな笑顔。‥‥本当に君は退屈しない。
「安売りをするものではないよ」
思わず苦い笑みがこぼれる。
馬鹿なことを言っているのは私の方だ。それを強要する流れの中で、綺麗事など意味もないというのに。
「安売り?‥‥そうですね、貴方より使える男がいたら、さっさと乗り換えましょう」
またそんな、私を甘やかすような事を言う。
「それでは頑張らないといけないねぇ」
「そうですよ、少しは真面目に‥‥‥んっ」
「頑張って、君をその気にさせておかないと」