えーっと時期的には、国主の任をはたして、京に戻ることが決定した辺り(笑)ひー様に迫られて絆されかかった幸鷹の、半壊した自尊心ってとこかな。ゲラゲラ。
万人に向けて艶を見せる、この男は許せない。
だけどそれが自分のみに向いたとして……耐えられる理性が自分にあるものだろうか。そう思えば憎むべきは己の情欲となる。
私の、情欲…?
翡翠に向かう、欲…?
認めてはならない。それは自分という存在全てを否定しても、決して認めてはならない熱。
忘れてしまおう。全て忘れてしまおう。
どのみち私は、この地から切り離される身。
無理に進むことで、想いも心も…浜辺の砂のように、指からサラサラと零れ落ちたとしても。
私の身体は大地に縛られている。
あの男のように全てを捨てて生きる道など……私には。
それともこの身を投げれば受け止めてくれるのだろうか。
その腕の中に縛り付けて、私を縛する楔を引きちぎって、空疎な現実から攫って……。
いけない。
お前を視界に入れるだけで、私は私という器を信じられなくなる自分を感じてしまう。
憎むべき存在。忌むべき存在。
そうでないのなら、私の存在は許されないものとなるのだから。
……翡翠。お前など、この心から切り捨ててやる。