おぼろ月。
あまり明るい月夜よりも、情緒があると言えなくもないが。
鷹通の足取りを、重くしてはいないだろうか。
庭へ抜ける裏戸を、見落としはしないだろうか。
吹き抜ける風が夏の花を散らして、影を映す。
立ち上がって探したい衝動。
しかし、その姿を……待ち侘びていたという醜態を、まざまざと晒す気にはなれず、きつく膝を抱え直して視線だけを飛ばした。
視線だけを、しかしこれ以上ないほど凝らして、君の姿を探した。
深い木々の闇と、ほの暗い灯り。そして舞い散る花びらが。君の影を作り、また元の闇に戻り、焦る心を弄ぶように。
ゆらゆらと……ひらひらと。
きっと来るだなどと、どうして思えたのだろう。
一刻前の自分を不可解に思う。
来るはずがない。
それなのに、どうして………ここから動けずにいるのか。
焦りと悲しみが、絶望を彩る。
この時だけなのだ。今、この時だけなのだ。
君との糸を結ぶことの叶うのは。
拒絶されれば次はない。
結び直せる縁ではない。
鷹通。
ただ待つだけで、私の命は尽きてしまいそうだよ。
立ち上がることもできずに、このまま灰になってしまいそうだ。
一人で過ごすには、この夜は長すぎる。
小説を書いたあとに相棒が描いた、イラスト「恋待ち」を見て、また書いてしまったもの。 |