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[イノ頼]こんな雪の日は 3

 どこか、嫌がられてるようで怖かったんだ。
 だって男だぜ?
 オレは頼久が好きで好きでタマンナイけど、頼久がオレをどこまで欲しがってるのかなんてワカンネェ。
 ただ初めてそーゆーことになった時、アイツは‥‥凄く凹んでて、死にそうで、オレはもう無我夢中でアイツを抱きしめてた。
 痛いだろうなって思うのに、そんなことしてる時だけ余裕が戻ってきたみたいに笑うし。なんかオレ、アイツの自虐に付き合ってるみたいで胸クソ悪かったもんな。
 だけど‥‥失いたくなかった。
 そんな簡単に壊れちまうもんなら、せめてオレの腕の中で壊れりゃいいって思ったんだ。
 どんな姿になっても抱きしめてるから‥‥大好きだから。
 欲情して熱い息を吐いてる頼久は、キレイだった。
 口じゃ「はしたない」だとか「幻滅しただろう」とか色々言うから、否定するのに必死でろくなこと云えなかったけど。

 正直、まだオレがアイツを抱いていいのか、自信がない。
 身体だってアイツの方が全然デカイし。
 なんかたまに、大木に引っ付いてるセミみたいな気分になるし。
 頼久が本気になったら、オレなんか泣いてるしかできないんじゃないかって気分にもなるけど。
「頼久、誘ってる?」
「ああ」
「そっか」
 釣り合わなくても。笑い話みたいでも。
「嬉しい。なんか俺、お前のこと、今までよりもっと好きになったぜ!」
 お前のことを一番幸せにできるのはオレだって、それだけは自信をもって云えるから。
 ‥‥‥いいよな?

 風邪なんて引かねぇように足元の水滴まで全部取ってたら、長い髪をワシワシ拭いてる頼久の股間が気になった。
 これってやっぱり欲情してんのかな‥‥。
 普通さ。
 こんな張りつめてパンパンになってたら、それなりの顔をするもんだろ?
 呑気に髪なんか拭いて、アタリマエみたいに我慢してる頼久が、ちょっと憎たらしい。
「なあ頼久。‥‥‥今日は雪の中立ってて寒かったなぁ」
「イノリ‥‥‥すまん‥‥」
「別にそんなに怒ってるワケじゃねぇけど、罰ゲームしてもいいか?」
「罰、ゲーム?」
「そう!だってほら‥‥頼久、お仕置きされたがってるみたいだし?」
「そんな」
 図星指されて真っ赤な顔。
 だいたいコイツ、責められてる方が安心するよーなトコあんだよな?
 チラッと目線を飛ばすと、ブツはさっきより元気になっちまって。
 辛いだろ。
「いいじゃん。お前はそこに立ってるだけでいいからさ」
「は?」
「そこに立ってるだけでいいの。壁に寄りかかってもいいぜ?だけど、鏡から目を逸らすのは反則な」
 解ってんだか解ってねーんだか、生返事で立ち尽くした頼久の身体を、好きなように嬲り始める。
「‥‥ハッ‥‥んー‥っ」
「膝がガクガクいってるぜ。まだ胸しか触ってねぇのに」
 言ってからキツク吸い上げると、泣きそうになって全身を硬直させてる。
「これ以上、なにを」
「ほら、ちゃんと立ってる約束だろ?」
 膝が笑って今にも座り込みそうな頼久を攻め立てるように、舌を固くして突起を弄ぶ。
「んあぁっ」
 無意識に手が行っちゃうのかな。
「触ってほしい?」
 股間を隠した頼久の指を一本ずつ外しながら、意地悪く囁く。
 困り果てて首を振るよーな素直じゃない恋人には、ちゃんと教えてやらなくちゃダメか、やっぱり。
「そっか。じゃ触んないで、舐めてやるよ」
 ちゃんと言わなくちゃ誤解されちまうんだぜ〜ってコト。
「ひあぁっ、イノリ!」
 根が生えたように一歩も後ずさらない頼久は、身体を支えるために洗面台に手を付く。バカの一つ覚えみたいに鏡を見つめたまま。
「そんなに近くで見たかったのか」
「違‥‥っ」
 弁解したくてオレの顔なんか見ちゃって。
 ほら、ダメだってば。
「そのままでいーけど、目は逸らすなよ」
 怯えるように視線を戻した頼久には見えてるよな。オレがいつも、どんだけヤバイ顔を見せられてるのか。
 そんな色っぽい顔してストイックなこと言われたら、ただの拷問だぜ?
「あ‥‥やっ、‥‥くぅ」
 小さく小さく鳴きながら、だけど頼久のモノはドンドン大きくなってくる。
 あと筋一本擦ったら、爆発しそう。
 その状態でちょっと放置して、すっかり背の低くなった頼久の後ろに回る。
「ア、ア、‥‥イノリ!」
 触れるだけで全身がビクビクしてる。
 助けてほしいって一言すら云えない不器用な恋人が、可愛くてしゃーないぜ、まったく。
「出したい?」
 意地悪く聞いてやったら、ウッと言葉に詰まる。
 まだシラフ。ダメな奴だな〜。
 クスクス笑って、壊れそうなソレをパックリくわえると。
「ダメ、だっ、今は‥‥それはっ」
 うるせーぞ?
 反論するようにキツク吸い上げて、唇で扱き上げる。
「うあ‥‥っ、イノリッッ」
 逃げる腰をギュッと引き寄せて、そのまま飲み込む。
 コクン。
 コクン。
 コクン。
 放心する頼久を苛めるみたいに、舌で扱き上げて。
「飲むな‥‥っ」
 屈辱なのか羞恥なのか、いやたぶん罪悪感かなんかで涙を零してる頼久に、イライラして。だけど可愛くて。
「罰ゲームだって言ったじゃん?」
 赤い目で睨み付ける頼久は、だけど怒ってるワケじゃない。
 困ってるんだろーな。
 やっぱり足は根が生えたように動かなくて。
 目が合った途端、また馬鹿正直に鏡を見つめて。
「そんな切ない顔で怒っても、迫力ねーし」
 用意してあった油を指に落としてから、一本一気に中まで入れる。
「つあっ、‥‥ダメ、だ、イノリ、そ‥‥ひあっ」
 いつもより素直に鳴くのは、自分の顔見てるせいだろ?
「駄目、汚いか‥‥っああ、やあぁ、やめ‥‥っ」
「心配しなくても、やめないから」
「ふ、あっ」
「啼いてな?」
 引き締まった尻を両手で開いて、躊躇いもせず顔を埋める。
 舌先を尖らせて中を探ると、段々と頼久の抵抗が薄れていく。
「あ、ああ‥‥‥イノリ‥‥」
 壊れたかな。
 諦めたかな。
 優しくてストイックな頼久は、格好良くて好き。
「ん‥‥‥んフ‥‥ッ」
 だけどさ?
 こんな時だけ素直で弱いお前って、スゲー可愛くて。
「‥あ‥‥‥」
 横目で鏡を確認すると、崩れ落ちそうな頼久が視界に飛び込んできた。
 その弛みきった口元が僅かに動いて。
「‥‥‥‥もっと‥‥」
 ほら。
 こんな可愛くなっちまうくせに、隠すなよ。

 洗面台に縋るように姿勢を保ってるせいで、腰の位置が低い。
 ちょっと無理すりゃ届いちまうかなー。
 早くでっかくなりたいな、なんて一人で笑いながら。

 潤みきったお前の中に、ゆっくりと沈みこんだ。