「頼久‥‥‥オマエ、なにやってんだよ、こんなとこで!!」
深々と降り積もる雪の中、窓の下に立ち尽くす影。
まさか。
まさか‥‥そんな。
「‥‥‥すまなかった、イノリ‥‥」
「なんでオマエが謝んだよっ」
仕事だなんて解ってた。だけど寒くて。オマエが来ないんじゃないかと思っただけで、もう凍えそうで。‥‥オレのこと、好きじゃないのかと思ったら‥‥もう、泣きそうで。
やっと会えたと思った瞬間、突き飛ばして逃げてきた。
自分がどんだけ子供だったかなんて、痛いほどわかってるっ。
「こんなに冷えて‥‥バカ‥‥」
グイグイ引っ張って、部屋に入れて。
ボーッと突っ立ってる頼久を風呂に追い立てる。
「オレはもう入ったから。その冷たい手足が溶けたら出てこい。その後で話そう?」
「イノリ‥‥?」
「言うこときいたら、なんでも許すから」
頼むから‥‥。
涙が出そうになって慌てて背を向けたら、いきなりキツク抱きしめられた。
バカ。
そんなことされたら、もう‥‥堪えられないだろっ。
「んっ」
振り向きざまにキスをして、赤く狼狽える頼久を剥き身にする。
「んんんっっ」
慌てたって無駄だ。本気で抵抗する気もないくせに。
そのまま雪崩れ込んで、湯船に沈めちまう。
「とにかく温まれ。そんな冷たい身体を抱いてたら、オレが寒いだろ」
精一杯強がって説教したら、やけに柔らかい顔で微笑んだ。
「待っていてくれるか」
本当はここでもう食っちまいたいけど。
「ん。‥‥和室にいるから」
布団の中で、ゆっくり待ってるから‥‥逃げんなよ?
遅い。
「わあぁ〜っ」
さすがにちょっと心配になって風呂を覗くと、頼久が赤い顔でのびてた。
「イ‥‥ノリ‥‥、‥‥その‥‥‥‥」
「いいからっ、無理に抱いたりしないからぁっ」
なにやってんだよ、も〜〜〜〜っ。
さっきから意味不明な頼久が、可愛くて可笑しくて愛しくて、どうにかなりそうだ。
「これで許してやるよ」
グッタリと眠るおでこに、派手な音を立ててキスをしてやった。