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MIWA

美輪明宏をモチーフにしたNODA・MAP公演『MIWA』の感想です。ツイッターで感想書こうと思ったんですけど、何を書いてもネタバレになりそうな気がしてこちらに書いてます。
続き
野田自身がパンフで言っているのですが、宮沢りえがMIWAを演じることによって、MIWAが男に愛される姿が何の抵抗もなく観客に受け入れられて行くのが良かったなと思いました。MIWAは女装した同性愛者であり、セクシュアルマイノリティなのですが、MIWAや彼を愛する人にとっては女装は気持ち悪いものではないし、当然のように男を愛し、男に愛される存在な訳で、つまり宮沢りえと言う美しく愛らしい存在は、観客に「MIWAと彼を愛する男」をまったく自然なものに見せるフィルターの役割をしていたと思います。
同性愛や女装を作品の中で表現するには、男優を使い、何の嘘もなくリアルにゲイの本当の姿を見せる方法もあると思いますが、女優を使い、美しく見せるのも一つの方法だと思いました。もっとも若い頃の美輪さんは宮沢りえに全く劣らない美しさであったのですが。

瑛太くん魅力的だったなあ。マリアを演じた井上真央ちゃんも、特に肝っ玉母さんの姿が素敵でした。

MIWAが愛する人を次々と失って行くのも辛いんだけど、何故か自分には安藤牛乳がいなくなるところが一番切なかったです。安藤牛乳いいやつだった…。
後になってからMIWAにとっての安藤牛乳とは「若さ」だったのではないかと思いました。安藤牛乳がいた頃はMIWAは「醜さ」、自分の中にある「化け物」の要素を全て安藤牛乳に押しつけていられた。若く美しいMIWAにとっては「醜さ」や自分が「化け物」であることは他人事だったのです。それが「若さ」が自分から去ってしまい、MIWAは自らがあの「化け物」の姿にならなくてはならなくなった。
ラストシーンのMIWA、宮沢りえの演技がものすごく印象的だったのですが、自らが化粧して安藤牛乳の姿になり、壮絶に愛する人を失って来た過去を持ちながら、笑顔で「悩みなんかないわよ」と言う姿は泣けました。これからしばらく心に残りそうな作品です。