記事一覧

5度目の持ち込み体験記

1年前漫画を1作仕上げ、5誌の編集部に持ち込みに行きました。どこでも審査は通らずお持ち帰りになったのですが、1誌だけ「次の作品を描いたらまた持って来て下さい。」と名刺を頂きました。
続き
持ち込みは審査に通らなくても編集さんがアドバイスを下さるのでとてもためになります。今回の作品はまだネームが終わった段階なのですが、(1年も経ってるのに…。)もしネームの段階で見て頂けて、そこでアドバイスを貰えたら、より完成度の高い作品が描けると思いました。もちろん持ち込みは完成原稿を持って行くものなのですが、以前名刺を頂いた編集さんなら見て下さるかも…!と駄目もとで電話をしてみました。

電話に出て下さった編集のI様に、「1年前春秋戦国時代の漫画を持ち込みした者なのですが…。」と言ったら「ああ、なんとなく覚えていますよ。」とのこと。ありがとうございます(笑)。ネームを見て頂きたい旨を伝えると、「その作品のキャラクターをペン入れしたものを添えて下されば大丈夫です。」と言われました。なので最初の2ページだけ完成させ、また見本として4コマ漫画や1ページ漫画を持って行きました。

今回のネームは架空のスポーツについての話です。ネームを見て頂き、最初に言われたのが「前回と同じくあなたの最優先事項は画力。今のままでは雑誌に載るレベルではありません。」と言われました。そしてネームについては、「やろうとしていることは面白い。前回と同じくネタを見つけるのはうまいですね。話の骨組はきちんと出来ていて、キャラクターも出来ています。」と言われました。そして「話をするに当たって、あなたはこの作品を雑誌に載せたいと思って作られたのですか?」と言われ、「いや載ったらもちろん嬉しいですが何だかそれは無理ぽいので同人誌のシリーズにしようかとか考えていたり…。」と本音を漏らすと、「同人誌ならこのままでいいでしょう。ただ、雑誌に載せるにはということならお話があります。」と言われたので「ありがとうございます是非聞かせて下さい。」ということに。

「雑誌に載せるのに必要なのは構成力です。このままではプロットを読んでいるみたい。これにどう肉付けして見せるかが必要になります。」と言われました。
「例えば、冒頭に主人公がこのスポーツをやりたいんだと言うことを示す説明台詞が入りますが、これでは興ざめ。そこは出さずに、主人公がいろんな人にペアの相手になってくれと付き纏ったり女の子の服着たり、読者に『何なのコイツ?』と興味を持たせます。このネームでは回想が最初の方に入っていますが、それは後ろの方に持って行くべきです。暗い回想が最初だと読者が面白くありません。いろいろなエピソードを入れて『こんな競技ありえねー!』と思わせ、だけどそれを主人公が実現してしまう。コメディから入って後から背景を見せると、読者が主人公を応援したくなります。」と言われました。

「このネームでは台詞や回想で状況を説明していますが、『言葉にしない』『行動させる』のが漫画としての面白さです。主人公が『ショックだ。』とか『本気です!』などと言っているけど、言葉にせずにエピソードで作る、それが漫画です。漫画の登場人物が『愛してます!』とか『夢を掴みます!』とか言っても『フーン。』ってかんじですよね。具体的なことこそ面白いのです。」と言われました。

「主人公の逆境を示すにはアンチを象徴しているキャラが居るといいかもしれません。このネームでははっきりした敵が見えません。」また、「この架空の競技のネタを生かすには2つの方法が考えられ、一つは既成の競技に無理やり参加して誰よりも美しく競技してしまうというストーリー、もう一つはこんなありえない競技が普通に存在しているおかしさを生かし、どんどんキャラクターを登場させるというやり方もあります。」と言われました。

「後者のやり方は同人誌のシリーズでやろうと思っていたことなのですが、取り敢えず今回の1本の話を構成するにはどう工夫したらいいでしょう?」と質問すると、「主人公にハンディがあると面白いですね。それを乗り越えるというスポーツ漫画としてベタな展開に、この架空の競技という設定を加えて興味を持たせます。30ページくらいで出来ますよ。まあ、そのくらいにしようとして描いていると40ページになっちゃうんですが…。」とのこと。ちなみに今回持って行ったネームは38ページでした。

「この架空の競技について具体的にルールとか考えていますか?」と訊かれ、「取り敢えず既成の競技のルールを基に考えていますが、まだあまりそこから逸脱してはいません。」と答えました。「主人公は運動能力は高いけど表現力が足りないという設定なんですが地味ですか?」ということで、同人誌でシリーズにする際に考えていた他国の選手について具体例を説明すると、「そっちの方が面白いので主人公でもいいですね。」と言われました。考えてみます(笑)。

「とにかくあなたにとっては画力が問題で、ネタは出そうです。絵を一杯描いて、人の体を描けるようにし、魅力的な顔を表現できるようになって下さい。そして構成力を身につけ、伝えたいことをエピソードにして、エピソードを見るだけで分かるようにして下さい。」と言われました。

「伺ったことを参考にして、ネームを再構成します。もし新しいネームが完成したら、また持って来ていいですか…?」と思い切って図々しいお願いをすると、「自信が持てるものが出来たら持って来て下さい。」と言って頂けました。こんな全然掲載レベルに足りていない人間相手に時間を使って下さり、次回も見てくれるなんて本当に有難いことです…。なので頑張ってネームを描き直そうと思いました。また、画力についても指摘されたので、ネームとは言え練習のためにも絵も頑張ったネームを作ろうと思いました。

ちなみに今回持ち込んだ雑誌は青年誌と少年誌の中間のような雑誌なのですが、実は今回のネタは女性向けなんじゃないか、見て頂けないんじゃないかと心配していたんですが、そこは全然問題じゃなかったようで、「あんまりホモネタに傾いてもねー…。」とおっしゃりつつ、自分では一番問題だと思っていた主人公(男)が姉ちゃんのベビードールを着るところなどのエピソードはむしろ推奨されました。自分では分からないものですね…。