はえた



 舐めたり、噛んだり、吸ったりして、俺の毛にアニキはいたずらをする。抜けちゃったら、俺はまた子どもに逆戻りだ。やめてほしいとお願いしたら、アニキは、案外、あっさり、わかったとうなずいてくれた。
「抜いたりしねえよ」
 そういうアニキの口元は、まだ楽しそうにゆるんでいる。何か、考えてるみたいな、その笑い方を、俺は知ってる。アニキが、俺に触る前に、いっつもこんな楽しそうな、きらきらした目をするから。
 心臓がどきんと跳ね上がった。また、アニキに触られちゃうのかな。
「シモン」
 名前を呼ばれて、それだけで、顔が赤くなる。触られるのはいやじゃなくて、でも恥ずかしくて、ほんとうに恥ずかしくて、それなのに気持ちがいい。
「精通は、あったか」
 アニキが俺の腿に手のひらを置いた。ゆっくり手を動かしているから、腿を撫でられているみたいで、くすぐったい。
「せいつう?」
「こっから」
 アニキが、俺のおちんちんの先を指で挟んで、くりくり揉んだ。痛くない触り方なのに、体が大きく震えた。
「やっ、あっ」
 そんな風にされたら、アニキの質問に返事が返せないよ。
「アニキ……だめ」
 アニキはまだ、先を指で擦っている。時々、アニキはこうして、俺の声が聞こえないふりをする。いぢわるだ。
「小便じゃねえもんが出てきたことあるかって、ことだよ」
 おしっこじゃないのが出るって、なんだろう。アニキに触られて、おちんちんが固くなって、痛いくらいに、じんじんするのは、もう知ってるけど、他にも何かあるなんて知らなかった。
 アニキはまだ、いぢわるして、指を離してくれないから、俺は首だけを左右に振った。
「そうだな、まだだよな」
 アニキが指の動きを止める。ほっとしたけど、ちょっと、さびしい。
「それも、オトナになった証拠?」
「まあな」
 オトナって、色々、あるんだなあ。もじゃもじゃになるだけじゃなくて、おちんちんからも何かが出るなんて。
 あれ? じゃあ。
「……アニキも、出るの?」
 アニキは一瞬、ぎょっとしたような顔をしたみたいだった。
「お、おう」
「ふうん……」
 アニキが俺をじっと見ている。どうしたの、と聞いたら、アニキが喉の奥で唸るみたいな声を上げたあと、口を開いて、それから――。
「ひゃあっ!」
 驚いて声が出た。
「アニ、アニキっ!」
 さっきみたいにアニキの頭に手を置いて、押しやろうとするけど、アニキは俺のお尻を両方とも掴んで、ぎゅっと握って、離してくれない。痛くはないんだけれど、でも。
「あにき、だめ、やめて」
 やだ、だめだよ、汚いよ。触られるときだって、そんな風に思うのに。
 ――アニキは、今、俺のおちんちんを口の中に入れて、舐めている。
「やだ、おねがい、あにき、やめて」
 アニキの舌が熱い。はずかしくて、はずかしくて、今すぐどこかに隠れてしまいたいくらいなのに、たしかに、そう思っているはずなのに。
 アニキの口が先の方を吸っている。それだけじゃなくて、舌で先の方をぐりぐり擦ってきた。
「あっ、ん」
 目の前がぴかぴか光る。おちんちんが引っ張られたみたいに痛くなって、腰から下がぐにゃぐにゃになって、じゅうじゅう焼いたブタモグラのステーキの脂の部分みたいに溶けてしまいそうだ。涙が出てくる。怖いわけでもいやなわけでもなく、恥ずかしさの方が強くて、でも、それなのに、気持ちがいい。
「やだ、あにき、あっ」
 膝ががくがくして、立っていられない。アニキの頭にしがみついたら、自分の腰を押しつけるようになってしまった。
 アニキが口の中で、ちゅぱちゅぱ音を立てて、俺のを吸って、舐め回している。
 やだ、こんなの。ぼたぼた涙がこぼれてしまう。はずかしいのに、汚いのに、指で触れられるよりも、もっともっと気持ちよくて、もっともっと舐めてもらいたくなってしまう。
 こんな汚いところを、アニキに舐めてもらって、悦んでるなんて、俺は、いやらしい、悪いやつだ。もっとしてほしいなんて、ばれたら、アニキは俺のことをやらしいガキだっていってきっと軽蔑する。
 そんなのイヤなのに、絶対にイヤなのに。
「あっ、やっ、あにきぃ……」
 まるで、おねだりするような声が出てしまって、恥ずかしいのと、さらにアニキが指でも触ってきたせいで、力が抜けてしまった。
 そのままずるずるとしゃがみ込んでしまう。顔を離したアニキは、俺の方を見て、ちょっと笑った。濡れてる唇を、舌でぺろっと舐めたのに、なぜか、どきどきした。アニキの笑い方がいけないんだ。
 俺よりも年上なのに、なんだかもっと子どもみたいな、イタズラを考えてるみたいな、悪そうな、でも明るそうな、そんな笑い方が、俺をどきどきさせるんだ。
「足、広げて、寝っ転がってろ」
 言って、そのまま顔を伏せようとするから、慌てて、膝を閉じようとしたけど、アニキが足を掴んで、だめだ、というように首を振った。
 俺に、触るときのアニキは優しくて、いぢわるだ。嫌だって言うとすぐに止めてくれるときと、いやっていっても止めてくれないときとあるから。
 だけど、俺も、本当に嫌なときといやじゃないのにいやって言っているときがあって、アニキは絶対にそれを間違えない。
「だめ……きたないから、あにき」
「汚くねえって」
 胸にアニキが手を置いて、ゆっくり撫でる。それだけで、粘土になったみたいに、俺はぐにゃぐにゃになって、アニキが言ったみたいに、寝転がって膝を立て、広げている姿勢になってしまった。
 アニキが太ももを持ち上げて、足をさらに開かせる。足の間にアニキの顔と上半身があった。おへその周りをアニキが吸った後、毛が生えたところをちょっと舐めて、引っ張った。それから、おちんちんをまた舐めようとしたんだけど、それだけじゃなかった。
「あっ、やっ、あにき、や」
 玉も一緒に、アニキは口に入れてしまう。おちんちんも玉のところも全部、アニキの口の中だ。
「やだ、アニキ、そんなとこっ……」
 アニキが口をもごもごさせながら、何か声を出した。聞こえねえ、って言ったみたいだけど、うそつき。聞こえてるから、そんな返事するんだ。
 口の中で転がされて、舌でいっぱい舐められて、吸われて、つつかれて、もう、だめになってしまう。恥ずかしいのも、こわいのも、不安なのも気持ちいいのも、全部、混じり合って、ぐしゃぐしゃになって、アニキが大好きなことしか考えられなくなる。
 頭がおかしくなったみたいに、俺は何度も何度も、アニキを呼んで、頭を真っ白にしていた。



 正直、今までで、一番、シモンは感じていたようだ。こんな甘い声で、アニキなんて呼ばれたのは初めてだった。ちんこの横でぷるぷる揺れてる玉も、一緒に舐めてやると、声の響きが、まったく違う。
 ちょっと残念なのは、しゃぶってるときは、シモンの顔が見えねえことだが、たまに顔を上げれば、それをいっそう恥ずかしがるシモンの様子もわかって、なかなか悪くない。
 とはいっても、今日は恥ずかしがらせ過ぎたか。イッちまったあとでも、シモンはまだ、ぐすぐす涙ぐんでいる。少し顔を傾けているから、涙がそちらに流れて、唇にも入り込んでいる。さぞ、しょっぱいだろうそれを舐め取りたくなり、俺はシモンの頬をぺろりと舐める。
 ひっく、とシモンがしゃっくりのような声を上げた。
 ああ、そうだった。こいつは、ちんこやら乳首やら、自分の体を触られるのは、恥ずかしくてたまらないらしいが、顔に触られるのは嫌がらない。
 今まで、シモンのちんこを舐め回していた舌で、舐めるのはどうかと今さら、思ったが、シモンのほっぺたというのが、これまた、囓り取りたくなるくらい、柔らかくて、ふにふにしてるので、俺はあっさり、誘惑に負けた。シモンに関する俺の我慢は、情けなくなる位にゆるい。
 ほっぺたのあちこちに吸いついたり、囓ったり、唇を当てたりしていると、どうやらシモンのごきげんというか、混乱は落ち着いてきたようだ。
「あ、あにき」
「おう」
「なん、で、なめ、るの」
「舐めてえからだよ」
 シモンの顔をじっと見ながら、俺は真顔で言った。うん、そうだ。どこにも嘘はねえ。舐めたいから舐める。それしかない。
 シモンがまばたきすると、涙の名残が小さな滴になって、転げ落ちていった。
「……舐められんの嫌か」
 ううとシモンの目がまた潤み出す。なんで、ここで泣き出すんだ。ってことは、やっぱり、俺がいつも強引になんやかんやとするもんだから、シモンはイヤだなんて、言い出せなかったってことか。だけど、シモンが本気で嫌がってることは、すっぱり諦めてきたはずだ。それとも、全部、俺の勘違いだったったのか。
「……気持ちわりいか?」
 シモンが唇を噛みしめる。赤い唇と白い前歯が、妙に色っぽい。
「いや、じゃ、ないし、気持ち悪くもないよ……そんなの、決まってるのに」
 言葉とともに、だんだんうつむいていくシモンの額に自分のをくっつける。
「シモン」
 鼻の先が触れ合う。動かした唇が、シモンの肌に触れる。
「アニキの、いじわる……」
 とがった唇がささやいた言葉に、俺の頭の裏側が沸騰した。これで、手を出すなって言う方が、無理だろ。シモンのちんこをいじるのは、一度に一回だけって決めたっていうのによ。
「あ、だめ……」
 止めるシモンの力と声が弱く、甘いものが混じっているのに気をよくして、俺の唾ででろでろのそこをやんわり握って擦ってやった。
 射精をしたことはなくても、このちっこいちんこは、ちゃんと感じている。
 触られて、イッてしまうことを教え込んだのは俺で、てめえで、いじることを覚える前に、シモンは人に触られて気持ちよくなることを知ってしまった。
 ほんとは、もっともっと我慢するつもりだった。それこそ、今、俺が聞いたようにシモンに精通が来て、とりあえず体がもう一段階、成長するくらいまでは、手なんて出すつもりはまったくなかった。
 なのに、だ。この狭い穴ぐら村の、さらに小さな穴の中でシモンにひっついて、過ごして、眠って、目が覚めて、それを繰り返すうちに、どうにも、たまらなくなった。
 一回だけだから、と自分に言いながらシモンに触れたのは、いつだったのか。シモンが嫌がらないのをいいことに、二回、三回と回数は増えて、そのうち、それが当たり前のようにシモンの体に触っていた。もう、こうなったら、シモンの全部は俺のもんだ。こいつの初めては全部、俺がもらう。シモン自身にもやらねえ。俺が全部、確かめて、俺のものにしてやる。
 こりこりと固いシモンのちんこの先っぽを指の腹で擦り立ててやる。
「あにきぃ、あにきぃ」
 シモンの身体がびくびくはねる。
「だめ、おれ、へん、また、変なのくる、あっあっ」
 指で挟んだちんこがぴんと張り詰めて、シモンがひときわ大きく、体を震わせた。
「あ、だめ、いっちゃう」
 初めてしゃぶられて敏感になっていたんだろう。シモンはあっというまにイッてしまった。
 目をつぶって、口はちょっと開いて、頬は真っ赤。涙を浮かべながら感じまくるシモンは、見ているこちらの腰が痛くなるほどに、いやらしかった。
 嬲ってもねえ乳首が、ぷっくり浮き出てきて、旨そうだったから口にくわえたら、声もなくシモンがのけぞって、喉を見せる。
 まるで、泣いているような喘ぎを漏らすシモンの体の震えはおさまらない。
 さすがに、もう一回追い詰めるのは、かわいそうに思えて、軽くかじっただけで、乳首は離した。今度は、ここをたっぷり吸って、しゃぶって、いじめてやろう。
 全速力で駆け回ってもこうはならないだろうというくらいに息を乱したシモンは、しばらく俺にしがみついたままだったが、伏せていた顔をあげたかと思うと、口を開いた。
「おれ、おれ」
 シモンの言葉がもつれている。イッたばかりで、あちこち汗ばんで、上気している熱い体を抱いて、落ち着け、という意味も込めて、背中を撫でてやる。
 まるで、今すぐ言わないと、言葉がどこかに消えてしまう、とでもいうように、シモンは勢い込んで言った。
「おれも、する」
「は」
「俺も、アニキの口に入れる」
 言うなり、シモンは起きあがろうとした。それを押さえたというよりも、力が入らず、ずっこけそうになったシモンを支えて、俺は、今のシモンの言葉の意味を頭で繰り返す。
 入れる? 入れるって、あれをか。俺のちんこを、お前の口に入れるってことか。つまり、しゃぶったり、舐めたりしてくれるってことか。
「あにき、ばっかり、ずるい、俺もする」
 腕の中でシモンがじたばたもがく。痛くはねえ。痛くはねえが、これは、きつい。
「わ、わかった。今度、頼む」
 今度はシモンの乳首を徹底的にいじくってやろうって決めていたはずなのに、なんだ、この展開は。
「うん、する」
 えへへ、とシモンは笑った。
 やべえって。これは、一体、どういう種類の拷問なんだ。
 シモンは安心したのか、俺の胸に顔をくっつけ、笑ったまま、目を閉じた。よし、そのまま寝ろ。気づくんじゃねえぞ。まだ、お前にゃ、早えからな。
 と、シモンがくすんと鼻を鳴らして、瞼を開いた。眠りかけていたのか、とろんとした目のまま、あのね、と舌足らずな口調で俺に話しかけてきた。
「アニキ……なんか、足のとこ……」
「なんでもねえから、寝ろ」
 頭をぎゅっと抱いて、胸に顔を押し当ててやると、うん、といつもよりもかなり子供っぽい声でシモンは返事して、素直にまた目を閉じた。
 ああ、やべえ。まじで、やべえ。シモンの寝顔は見ず、上を向いて、地上に行くにはどこの岩盤が柔らかく掘りやすいか考え、いっそ、シャクの野郎の顔を思い浮かべても見るが、シモンはたまに、身動きするわ、むにゃむにゃした、声のような寝息のような寝ぼけ声を出すわで、俺を刺激し続ける。
 どうにか、シモンが眠った頃合いを見て、そうっと手を離し、毛布を体の上に被せてやる。
 もうちょい離れてやろうと思っていたが、限界だった。俺はシモンに背中を向けて、あぐらをかいて座ると、腰紐をゆるめた。
 ズボンをずり下げれば、ちんこが褌をずらし、臍にまで届きそうな勢いで、勃ちあがっている。がちがちに固い逸物の先っぽは、真っ赤に充血して、だらだら出てくる我慢汁が、褌を汚してやがる。我ながら、その元気ぶりに呆れるやら、感心するやらだ。
 まあ、しょうがねえ。シモンに触ってるときも、半勃ち状態ってあたりで、何とかこらえてるが、今日みたいな予想外なことが起きると、とたんに、我慢が効かなくなる。
 前を大きくくつろげて、右手のひらで握った。上下に擦りながら、さっきのシモンの声やら表情やらを思い浮かべる。
 自分で、ポンチョをめくりあげて、もじもじしているところも結構、くるものがあるし、初めてしゃぶられて、いつもの倍くらいは恥ずかしがってるくせに、甘えた声で、いい、とだめを繰り返したときの声と表情もよかった。手コキされて、俺にしがみつきながら、いっちゃう、と口走ったとこなんて、思い出しても、やばいくらいだ。
 どの顔も、たまらねえんだが、せっぱつまったシモンが、自分から膝を開いて、あにきぃと普段はお目にかかれないくらい、全開で甘えてくる顔を思いだし、まだ指でこっそり触るだけで我慢しているそこに、自分の逸物を押し込むことを想像する。ちっこいシモンのそこらしい、小さな穴を、たっぷり舐めて、ほぐして、広げて、ゆっくり挿れてやる。
 最初は恥ずかしがるシモンは、そのうち、あんあん喘いで、自分から腰を振り出すのだ。俺はその細い腰をつかんで、思い切り、がんがん突きまくって――やばいくらいに、息が荒くなる。
「……うっ」
 たいして擦ってもないのに、あっという間に、イッてしまった。いつもより早いのはしょうがねえ。量が多いのも、今日初めてのせんずりだから、当たり前だが、勢いよく飛んだ精液が、壁の岩を汚しているのを見ると、なぜかため息が出る。
 すっきりして、妙に晴れ晴れしたような、寂しいような、ほっとしたような気持ちだがよこしまな気持ちの欠片もない、無邪気な子どもの心で、俺を慕ってくるシモンをオカズにしたことに罪悪感を覚えもする。
 ぼろ布で手を拭いて、壁に飛んだ精液を拭こうとしたところで、もぞもぞ動く固まりに気づいた。
「こら、ブータ見てんじゃねえよ!」
 言葉は喋れないブタモグラだが、こいつは、シモンと意思が通じ合っているのではと思われる節があるから、なんというか、俺のこういう姿を見られるのは、非常に気まずい。
「ぶいっ」
 ブータは、明らかに、俺を馬鹿にしたような雰囲気で鳴いて、ちっこい足をちょこまか動かして、毛布の中に潜り込んだ。
「ん……」
 シモンのどこにくっついたものか、シモンがふと眉をひそめたが、すぐに規則正しい寝息に戻った。
 眉尻が下がったぐっすり眠っているのが明らかなその寝顔は、見ているだけで、もやもやもちょっとした苛々も罪悪感も吹っ飛んで、それどころか、こっちまでほのぼのしてくる。
 気持ちよさそうに寝てるシモンに俺は顔を近づけた。
 シモンをどうこうする、ってつもりは、たぶん、なかった。今さっき、射精したばっかりで、そちら方面のムラムラはだいぶ、すっきりしていたから、まあ、ちょこっと唇くっつけようか、ぐらいの考えだった。
 なのに、なのにだ。
「ぶっ、ぶっ、ぶいっ」
 おい、ブータ。今更、その態度はねえだろうが。
 毛布から顔を出したブータは俺とシモンの間で身構えている。お前な、来るのが遅いんだよ。邪魔するなら、もうちょい早く来いっての。ブータをちょいとつつくと、不満そうに鳴きやがる。
「ぶーっ、ぶいっ」
「静かにしろ。シモン、起きるだろ」
「ぶ……」
 途端にブータは静かになった。その隙をついて、俺はシモンの隣に寝転がり、毛布を持ち上げて、自分の体を毛布に入れる。シモンの体臭とぬくもりでいっぱいのそこは、これが幸せか、ってほどにあたたかく、気持ちがいい。
「ほら、お前も一緒だ」
 低い声でぶいぶい鳴いているブータも、すうすう眠っているシモンも一緒に抱き寄せた。
 俺の大事な可愛い弟分のシモンとそいつの相棒ブータ。いっぺんに抱き込んでしまえるほどにちっこい一人と一匹で、抱く感情も気持ちも、多少、違うが、俺にとっては抱えきれないほど大きくて、大切なやつらには変わりねえ。
 腕の中のシモンも、ブータもこれ以上ないくらいに、あったかくて、俺は無意識のうちに笑うと、目を閉じた。


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